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武龍伝  作者: とみぃG
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103 状況確認

ドワーフの里から諜報部隊長のクリフを獣人族の里に送り出してから7日後、予定通りドワーフの里で合流をすべくリュウは待機していた。


緊急事態が発生すればクラリスを通じて連絡が来ることとなっていたが、特に連絡がなかったところを見ると問題は発生しなかったのだろう。


合流時間は特に指定していなかったが、昼前にクリフが現れた。


現れたのだが、どう見ても一週間前に比べてやつれている。一体何があったのだろうか?


『タイラ伯爵、ただいま戻りました』


『ご苦労。それより向うで何かあったのか?かなりやつれている様だけど?』


『はい、獣人の里。あそこは人が暮らすには全く不向きです。ジメジメと湿気は多いですし、亜熱帯の気候で大雨が突然降ってくるわ、不快指数がマックスでした。おまけに食事が口に合わなくて。携行食料がなければ餓死しているところでした』


『おいおい、サバイバル任務に慣れているクリフでも辛いなんて場所があるのか?まあ、獣人は人間とは感覚が違うからな。食事も調理よりも素材で勝負みたいな感じらしいしな』


『はい、嗅覚が鋭く味覚に鈍感な種族ですので料理に味が無く香りもしないという食事の感動は皆無でした』


どうやらクリフは今回の偵察任務で相当堪えたらしい。普段は任務に対して愚痴をこぼす様なタイプではないのだが、ここはガス抜きで言いたいだけ言わせておこうとリュウは思って聞き役に徹していた。


『まあ、今のでだいたいどんな所なのかわかったが、状況としてはどうだった?何か掴めたか?』


『はい、偵察を行って数日間は人々の暮らしには異常がありませんでしたが、次第におかしなことに気付きました。


里自体は平穏無事な様相なのですが、外部との交流が一切ないのです。普通食料や道具などのやりとりで商人が行き来するはずなのですが、外から一切人が入ってこず、逆に里から出る者もいない状況です。


おかしいと思い調べてみると門番の異変に気付きました。門番は見た目獣人に見えるのですが明らかに魔族が変化した者が数人見張っていたのです』


『なるほど。外部との交流を遮断しているわけか。それで、何故外部との交流を遮断しなくてはならないんだろう?ドワーフの商人も獣人の里に向かって帰ってこない者が多数いるらしい』


『あまり里の様子を外部に漏らしたくないのではないでしょうか。先程のドワーフの商人ですが、里の中を調べたところ一ヵ所に固まって監禁されていました。正しくは幽閉されているというところでしょうか。獣人の商人の家に隔離されている様な感じでした』


『ふむ。殺さず隔離しているのは何故だろう?近いうちに何か動きがあるということか?事態が長期化するなら幽閉なんて面倒な事は普通しないだろう』


『はい、上手い具合に囚われているドワーフに接触することが出来ました。どうやら獣人の里は魔族に支配されているみたいです。

ドワーフが襲撃される数日前に獣人の里にも魔族が押し寄せてきたのですが、最初は抵抗を続けて撃退していたのですが、長期化するにつれて戦力が維持できなくなり魔族の侵入を許してしまったらしいです。その後、獣人の族長の家族が魔族領へと連れていかれて人質となっていて里の住人は仕方なく魔族に従っているそうです』


『どうやらこちらの想像通りの展開になってきたな。はやり魔族は獣人族を従属させる気なんだろうな。確立するまで外部との遮断を行っているということか。情報が洩れて援軍が来ても困るんだろう。


まあ、想像通りなのはいいんだが問題はどうやってこの状況を打開するかだな』


『里の状況としては魔族は表面上いないことになっています。ですが、気配からすると相当数の魔族が獣人に変化していると思われます。想像ですが、多くの里の住人は族長家族の人質については知らないのかも知れません。混乱を避けるために平静を装っていると言ったところでしょうか』


『なるほどな。そんな状況下に俺たちが乗り込んでも余計に騒動になるって事だな。それに誰が魔族の変化かは判りにくい。獣人と魔族は波長が似ているからな。残念ながら俺の索敵でもどちらも赤く映るので区別がつかない。まあ出来るとすれば臭いの違いか。最近その手の勉強してるところだからちょっと詳しくなったぞ』


ちょっとと言っても獣人の香水の調合をした数時間程度なのでカウントにも入らないのでは?とクリフは思ったが決して口にすることはなかった。


『それなんですが、獣人族の協力者を得るというのはどうでしょうか?鼻が利く獣人に協力してもらえればひょっとすれば見分けがつくかも知れません』


『そうだな。それと、ちょっと時間が掛かるが識別装置を作ってみようと思う。その装置を対象に向けて獣人族なら緑、人間なら青、魔族なら赤という風に色のランプで表示させる簡単なものだ。勿論サンプルは臭いだけでなく、波長や体温など種族による微妙な差を捉えて判断させるので確度は高いぞ。その装置を使うにしても協力者は必要だな。里に潜伏して候補者を探すしかないな。

魔族については協力者にあてがあるので問題ない』


『また伯爵は驚く様な装置を考え出すんでしょうね。我々の想像を遙かに超えるものがいつも出てきて驚きですよ。

協力者についても承知いたしました。それで、この後の行動については如何いたしましょうか?』


『俺が装置を作っている間、クリフは潜伏出来る部屋を確保しておいてくれ。宿屋でもいいし、短期間で借りれる部屋があればそれでいい。廃墟とかだと怪しまれる可能性があるからな。


それと、可能であれば族長の家周辺の動きについても探っておいてくれないか。まずかここから攻略する必要がありそうだ。


装置は2日もあれば出来るから2日後の正午に獣人の里から北に2キロメートルのこの地点で合流しよう』


リュウは地図を見せながらポイントをクリフと確認した。

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