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生徒会長の思惑①

「──召喚系(フェアトラ)召装具(シクザール)?」


「そう、それが『私が見た限り』考えられる笠神くんの召装具の系統・・・と簡単に言っちゃってますけど、実はかなり希少な系統なんだから羨ましい限りよ。」


 そう言うと御母衣(みほろ)に軽く視線を送ったのだった。

 視線に気付いた御母衣は軽く頷くと、高梁(たかはし)を室内から連れ出したのだった。当然、高梁は抵抗していたが耳元で何かを言われた瞬間に青ざめて大人しくなり、御母衣と共に室内を後にしたのだった。その際に御母衣から睨まれていたが、努めて無視をする唯であった。

 室内に二人以外にいなくなり、刀條が吐く溜息がやけに大きく聞こえていた。


「はぁ、ごめんなさいね。彼女、本当に悪気はないと思うから許してあげて欲しいわ──後でしっかり言い聞かせておくから。」


 刀條はそう言うと再び唯へ視線を移した。


「──と余談はこの位として・・・笠神くんは覚えてない様だけれども、先の戦闘は本当に凄かったの・・・進化型(アノルシィ)異獣(ヴァインフルグ)を一瞬で葬ったあの力・・・。『生徒会として』とても魅力的だと感じたの──どうかしら、笠神くんが良ければ一度会長と会って話をしていただきたいのだけれども・・・」


 一歩、二歩と近付きながら問い掛ける彼女に対して唯はずっと疑問に思っていたことがあった。

 それは、彼女の言うところの生徒会とはいったい何なのかと言うこと──。

 何故なら生徒総会等の学園行事の際、壇上に上がる刀條を見たことがないのだ。そもそも『副会長』と呼ばれる人が他生徒と同じ様に聞く側にいることがあり得るだろうか、と──。


「なぁ、華耶。華耶の言う生徒会ってなんなんだ?俺、華耶が壇上に上がってる所なんて見たことないんだけど・・・何か理由でもあるのか?」


 唯の問い掛けに対して口元を軽く隠しながらクスクスと笑う姿は品がありながら、可愛らしさも備わっていた。

 そんな姿を魅入っていた自分に気付き気恥ずかしくなっていた。


「そうね・・・特別な理由と言う訳ではないのだけれども、実のところ風御学園(かざみがくえん)の生徒会には学園行事を運営していく生徒会役員部と異獣討伐を目的とした生徒会執行部があるんです。生徒会役員部は選挙を行うので周知されてますけど、生徒会執行部は完全に覚醒者(ペネトレイター)から選出されているので覚醒していなかった笠神くんが知らされていないのも仕方のないことなの。」


「その・・なんつうか・・・やっぱり未覚醒者には知らせない必要ってあるのか?」


「勿論あるわ。未覚醒者に知らせない理由は、戦いに巻き込まない為──と言えば聞こえは良いですが、本音は違います。戦いになれば未覚醒者は邪魔になるの・・・残酷な言葉だと思われても仕方のないことですが、守りながらの戦いは本当に──」


「華耶──。」


 思い詰めた表情をする刀條に唯は思わず声を掛けたが、すぐにいつもの表情に戻りクスクスと笑いだした。


「あら、ごめんなさい。こんな暗い話じゃなかったわね・・・えっと、そうね・・執行部への選出方法は色々とあるのだけれども、一番シンプルなのは生徒同士の単騎戦(デュエル)ね──とは言っても笠神くんは私の推薦だから関係ないのだけれども・・・。」


 目を閉じながら両肩を少しだけ上に持ち上げた刀條はそう言うと唯に視線を戻した。

 青みがかった綺麗な瞳は、じぃっと唯を見つめていた。


(え?な、なに?突然そんなに見つめ・・・もしかして、なんかついてるのか?)


「ところで・・狐珀(こはく)は・・・いるの?」


「・・・はぃ?こはく?・・なんのことだ?」


 あまりにも唐突な質問に疑問しか浮かばない唯に対して、刀條は真剣な眼差しだった。


「そうね、説明不足だったわね・・・笠神くん、あなたの召装具には自我があるわ。その証拠に私は一度、彼女と会話をしているの。その時に彼女の名前を知ったのよ・・・殆ど一方的に話し掛けられただけですぐに眠ってしまったのだけれども、まだ何か伝えようとしてたの・・それを聞きたくて、その──」


 そう言われると確かに唯に心当たりが無い訳ではなかった。先の事件の時に頭に響いた声の主・・・あれが『こはく』と呼ばれる存在なのではと──。

 そんな事を考えていると突然、背筋に妙な感覚が襲ってきたのだった。

 まるで何かがまとわりつく様な、包まれている様な・・・でも、そんな嫌な感じではなかった。


「うーん・・・この感覚が華耶の言う『こはく』って奴だとしたら多分、今いると思うぞ。」


 頭を軽く掻きながら答えると、刀條は両手を胸の辺りで軽く合わせて嬉しそうにしていた。


「本当に?!笠神くん、彼女とお話がしたいのだけれども・・・難しいかしら?」


「は、話って・・・え?いやいやいやいや、どうやってやるんだよ!」


(うるさいのぉ・・(ぬし)、その娘の手を取れ。それだけでええ。)


「ふぅおッ?!びっくりしたぁ・・・いきなり話し掛けるなよな!」


 あまりにも突然のことで動揺を隠せない唯をよそに刀條はまた一歩近付いて来たのだ。


「もしかして狐珀ですか?狐珀なんですね!彼女はなんて言っているんですか?」


 かなり興奮しているのか顔がくっつきそうな程まで一気に近付いて来たのだ。


「か、華耶・・とりあえず一旦、落ち着こうな、な?」


 彼女の異常な行動に対して冷静に振る舞おうとしても内心は穏やかではいられなかった。

 そんな唯をよそに我に返った刀條は元の位置に戻ると咳払いを一回すると先程の興奮した姿が嘘のように微笑みを投げ掛けてきていた。


「で、狐珀はなんと仰っていたのかしら?」


「・・・。」


「あのぉ、笠神くん?狐珀はなんと仰っていたのかしら?」


「・・・あ、あぁ、えっとだな・・華耶の手を取れだ──そ、そんなに握らなくていいと思うぞ・・・。」


言い終わる前に両手で握られた左手は、このままでは潰されるのではと思う程、それはそれはとても強く握られていたのだった。

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