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その点トッ○ってすげぇよな。最後までチョコたっぷりだもんな。


 ドラゴンがバチィッという甲高い音と共に雨避け用結界内に侵入する。

 侵入する際に雷属性の魔法が身体を巡ったはずだが、どうやら威嚇にすらならないようだ。

 体長20〜30Gグラフト。その巨体を悠々と翼を羽ばたかすことでゆっくりとその場に静止する。

 しかしそれもつかの間、ドラゴンは挙動不審にくびをもたげると上空300Mメートルから急降下し、上空100Mメートル辺りで旋回する。


 それを見てウォルターは確信した。


 どうやら第一段階の策は功を成したようだ、と。

 ウォルターの考えた策の第一段階、それは上空の酸素を電気分解させることである。

 ドラゴンと戦う際に、魔法や攻撃がドラゴンに当たらなければ意味がない。

 そのため、上空の酸素を電気分解することにより、ドラゴンを魔法の射程範囲内である上空100Mメートル以内の位置に追い込もうと試みた。


 雨避け用結界内の酸素を分解したため、範囲が少なく、そのため少人数でも無駄なく作業が行える。


 ドラゴンとはまだ距離があるが、生徒たちは先ほどの惚けた姿とは打って変わり常時臨戦体制で待ち構える。


 そのはるか上空、100Mメートル付近の場所で、ドラゴンは地上にいる生物に憤りを感じていた。

 なぜ、人間などという取るに足らない存在がこちらに剣を向けている?

 餌でしかない存在が、刃向かい敵意を向けてくる?

 不愉快だ。不愉快でたまらない。

 すべて消し飛ばしてしまいたくなるほどに。


 ドラゴンは翼を力強く開き、構えをとる。

 いや、構えなんてそんな崇高なものじゃない。

 ひどく原始的で、太古の果てより培われた暴力的な動き。


 ドラゴンの口腔内が紅く点滅を繰り返しながら莫大なエネルギーを溜め込む。


 ドラゴンの最強の技にして、中距離及び遠距離を焦土と化す絶対的な力。


 ───咆哮ブレスだ。


 そしてそれを見たウォルターはすぐさま第二段階の作戦へと移行する。


咆哮ブレスには多少なりとも時間がかかる。ましてや幼体のドラゴン、成体の倍はかかるはずだ。ならば制限時間リミットは1分ってところか。


「予め説明しておいた咆哮ブレス用魔法展開!

 それと引き続き雷属性の諸君はもうしばらく展開しておいてくれ」


 ウォルターがドラゴンに向い右手を振り下ろす。

 すると、水属性の生徒たちがドラゴンと蒼穹の狩人フェイルノートを結ぶ直線上の中間に大量の水を集める。

 水属性の特性は『増幅』。無から有を生み出すことは出来ないが、わずかの有から大量の有を生み出すことが可能である。

 その特性と相成って、電気分解により大量に生じた空気中の水をも利用し、掻き集める。

 それにより巨大な水球の壁が3つ連なることとなった。

 水球はなおも大きさと厚さを増していく。


 それと同時に三列の後方に位置する土属性の生徒たちが蒼穹の狩人フェイルノートを覆うように魔法を展開する。


 初級魔法『アース・ウォール』


 土で出来た壁を展開する魔法。弓や魔法銃などの遠距離攻撃、剣や槍などの近距離攻撃をある程度防ぐことが出来る。

 欠点は初級魔法ゆえ、あまりに強い攻撃は防ぐことは出来ない。

 しかし、それは“個人で行う場合”に限る。

 多人数で行えば壁は厚く頑強になり、魔法の構成も精密になる。

 土属性の特性は『凝縮』。

 地中の成分を扱う土魔法は、その地に含まれるものを糧に発動される。

 凝縮された物質を固め、硬化させることの出来る土魔法は武器の錬成なども手掛ける。

 そしてここは訓練施設。

 刃引きされた剣や槍などが打ち合い、その際に折れた破片やらが地中に埋まっている。

 鉄片や銅片を含むこの地では、土魔法は通常よりもはるかに効果を上げる。

 目の前に広がる『アース・ウォール』がウォルターの視界を覆う。

 ウォルターは眼前の見えない光景に一抹の不安を抱えるが、事の顛末を待つ他なかった。


 空中にいるドラゴンは地上で展開される魔法など気にも留めない。

 程なく、咆哮ブレスに必要なエネルギーが口腔内に蓄積された。

 翼を瞬時に自身を抱くように丸め、鎌頸を後方へともたげる。

 そして再度翼を開き、勢いをつけるかのようにしてそれは放出された。


 摂氏2000度にも達する咆哮ブレスは、まるで空を焦がすかのように空気を熱する。

 赤から青、後に白へと色彩を変えた炎は、まるで生き物のように多彩な変化を見せながら目標物を焼き尽くさんと迫る。

 力の奔流ともいうべきその災厄の権化は、ウォルターたちを守るように展開された巨大な水球にぶつかり、───爆散する。

 瞬間、大量の水蒸気を巻き上げながら辺りを轟音が襲う。

 水蒸気がまるで濃霧のようにドラゴンの視界を覆うが、それはもう関係ない。

 なぜなら、咆哮ブレスに耐えれるものなど存在しないのだから。

 だからドラゴンは自身の目を信じれなかった。

 水蒸気の濃霧を晴らすかのように現れた魔法の弾幕を。

 咆哮ブレスを受けても、ボロボロになりながらもなお立ちはだかる、あの人間たちを。



 信じることなど、出来なかった。


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