第九話「ケッコウ」
第9部
驚きを隠せない徳永さんを見つつ、私は全ての部屋のドアを閉め、ガムテープで閉じた。皆は驚いている様だけど…仕方ないよ。先生はまだ朝のホームルームには来ない。今だけなんだから。「…徳永さん、あの類李と類柯って双子帰って来ましたか?」「い、今はそんなこと言ってる場合じゃ…」横槍を入れて来たクラスメイトに、即座にみーちゃんが斧を頭に振り下ろす。頭蓋骨の割れる嫌な音と、血や脳みそが混じったものが溢れ出す。「…ねぇ?あの二人、帰って、来た?」「か、帰って来てないわ…そもそもあなたどういうつもり…」「帰って来てないんだぁ…ふぅん。」不気味な笑みを浮かべつつ、お弁当の蓋を取る。「な、何?」「嫌だなぁ…あの二人だよ?コンパクトにしてあげたんだよ。良かったね、会えて。」「嫌…」「あなたにも…覚悟あるよね?それからお前らにも!全員動いたらみーちゃんが殺す!」さすがお嬢様育ち。少し脅すだけでびびって隅に固まっちゃって。「…あなたはみーちゃんを殺した!私の唯一のお友達…ううん、家族だったのにっ!お前もみーちゃんと同じ道を辿ればいいっ!それに美衣ちゃんだって…いじめたっ!転校して…もう会えなくなった…っ!」そこで…徳永さんが話を急に変えた。「…宮田なら、そこにいるじゃない…?」「はあ?美衣ちゃんが?どこに?ぬいぐるみが実体化したみーちゃんはいるけど、美衣ちゃんはいないよっ!」「素林…あんた…まさか…」徳永さんが後ずさる。「い、いないよ…美衣ちゃんは…転校して…」「戻って来てるじゃない…!あなたのすぐ側に!」
徳永さんがまさか、私のネタばらしに時間を取るとは思わなかった。涼夏ちゃんは焦っていたけど、ついに…元に戻ってくれた。「み、美衣ちゃんなの…?」「久しぶりだね、涼夏ちゃん。本当に…長かったね…っ!」ぬいぐるみのみーちゃんの呪縛から解けた涼夏ちゃんは…私に抱きつき、ただ泣いた。何年間分の涙だろう?私には彼女に教える資格などない。「…ごめんね、ごめんなさい…っ!あなたを…殺人者にしようとして…私は…親友失格だね…」「美衣ちゃん…会いたかったっ!ずっと…ぬいぐるみの約束だけが私の心の支えだったの…何もない私を助けてくれた…」「うん、うん…」殺気はいつしかどこかへ行き…代わりに涙だけが教室を満たした。「それから…絵理ちゃん、あなたにも謝らないといけない…私、知らないうちにあなたのこと傷付けてたんだね…ごめんね、ごめんなさい…っ!あなたともう一度友達になりたい!純粋なあなたと!」「…美衣ちゃん…私も…もう一度言いたかったよ。友達になろうって…でもね、私弱いから…言えなかったな…」昔の…絵理ちゃんだ。弱くて、守ってあげたくなるそんな…存在。「私、何もかも間違ってしまった…自分の思い込みで…こんなことまで…謝っても許されない。こんなことに巻き込んで本当に…ごめんなさい…」




