第一話「トモダチ」
初めて投稿させていただきます「せいか」という者です。あまりよく分からない部分もあるかと思いますが、楽しんでくだされば幸いです。
誰しも一度は思ったことがあるだろう…
一人っきりになった時の寂しさ…
自分が消えてしまう時の悲しさ…
第一部
朝日が昇り、今日が始まる。嫌だと言っても絶対に始まる。抗えない真実。私素林涼夏は、もともとはもっと輝いていた。毎日が幸せだと感じていた。でも、違っていたんだ。幸せは…突然崩れた。両親の離婚、友達の転校、新しいお父さんとの慣れない生活。全てに嫌気がさした。幸せなんて。ごく一部の人が手に入れられるもの。ひよこの選別のように。要らないとあっさり見限られる。そう、私は…捨てられたんだ。要らないから。この世から出て行けと毎日、毎日、毎日、毎日…耳元で囁かれる。うるさいと一喝し、自分の部屋のドアを開けた…
ドアを開け、階段を下りると母と父が眠っていた。起こさないように支度を済ませる。前に一度起こしてしまって…殴られた。謝っても許してくれなかった。台所には五百円。お弁当なんて高校に入って…いや、だいぶ前から作ってくれなかったから。私の唯一の友達を抱えて学校に向かう…
私の通う高校は女子校だ。一年通ったけど、全然馴染めない…周りはおしゃれに着飾った女の子達。ここに通うのはいわゆる、お嬢様といったところだろうか。「今日も暑くなりそうだね。みーちゃん。」腕に抱き抱えるクタクタになったぬいぐるみ。私の唯一の友達が誕生日にくれた大切なもの。「この子はね!みーちゃんって言うの!猫だし、私の名前から取ってみーちゃん。」かつての友達の声が記憶に残っている。うん、みーちゃんを大切にするから…ぎゅっと強く握り締める。「ねぇ、みーちゃん…私はいつまで生き続けるの?」
教室に入って窓際の一番後ろが私の席。私が決めたんじゃなくて…このクラスの委員長が決めたこと。ぬいぐるみと喋っている女は気持ち悪いから、皆の見えないところにいてって…みーちゃんは、ぬいぐるみなんかじゃない…私の大切な大切なお友達。誰にも分かってもらえない。その辛さがより一層みーちゃんに染み込んでいく。「みーちゃん…」その時、教室で笑い声が聞こえた。「まーたみーちゃんだってー!この女頭大丈夫なのかな?私の病院一回来てみる?もちろん、高額請求だけど!」また笑い声が教室に溢れかえる。「止めなよーこんな子が来たら、きっと絵理の病院潰れちゃうよ?」「確かにー!」こんなこと言われるのも、慣れっこだ。それに…私のこの机の上だけが私が居てもいいっていう証拠。家なんて帰っても二人共居ないし、夕食も一人で作って食べる。そんな毎日だからここが私の居場所。みーちゃんと二人っきりの理想郷。「そもそも、こんなぬいぐるみ持ち歩くの日本中であんただけだよ?」「そんな薄汚れたぬいぐるみ早く捨てたらー?」捨てる?みーちゃんを…っ?「…どういうつもりか知りませんが。私はいくらでも罵倒しても構いません。でも、みーちゃんを捨てるなんて言葉絶対に使わないでください…!」急に怒った私に周りは一瞬止まったが…やがてまた言うのであった…「こいつ生意気だよねーいつも白けた顔して…ことある事に『みーちゃん、みーちゃん』って言って…意味分かんない!」「委員長、もう向こう行こ?こんな馬鹿と話しても時間の無駄だよ。」「…そうだね。もう行こ行こ。」彼女達が離れて行くと急に静けさが戻ってくる。みーちゃん。みーちゃんは私の側から離れないでね?何があっても守ってみせるから。
授業が始まると、いつものようにみーちゃんを注意されるが最近はもうしない。私も授業中はみーちゃんに話しかけない。最も、私が学年一位ということもあり教師も特に咎めなくなった。それが一番皆の気にくわない理由なのかも知れないけれど…
午前の授業が終わると、皆好きな人同士で固まって昼食を食べる。私はみーちゃんがいるから寂しくない。思う存分話しかける。「みーちゃん、今日は幕の内弁当だよ。お魚とか煮物とか入ってて健康そうだよね。それからね、今日も帰りにゲーセンに行こう?みーちゃん好きだよね。クレーンゲームとか、コインゲームとか…」「いい加減にしてっ!」突然の声に皆が驚く。「さっきから…みーちゃん、みーちゃんって…っ!そんなに喋りたいなら外に行けば?手伝ってあげるよ!」急に私の机の上のみーちゃんを掴み、窓から放り投げた。「…っ!みーちゃんっ!」私はみーちゃんの飛んで行った方に走り出す。みーちゃんっ!待ってて…助けに行くよっ!「徳永さん…やり過ぎじゃ…」「絵理少しやり過ぎたんじゃない?」「うるさいわねっ!ちょっとぬいぐるみを投げただけでしょ?!何か文句あるの?委員長の私が聞くわ…!」しんと静かになる教室。この町の一番大きな病院の令嬢には誰も逆らえなかった…
「…はぁ…はぁ…みーちゃん?どこ?」教室を飛び出してから、もう一時間以上経っている。午後の授業だって始まっている。だけどっ!みーちゃんを一人にはさせない!必死に草木の中を探す。ない、ない、ない…みーちゃん、みーちゃん、みーちゃん…それを繰り返しながら探し続ける。あっ!みーちゃん…!少し離れた校庭の側に落ちていた。「みーちゃん…探したよっ!ごめんね…みーちゃん…」土埃を払い、教室に戻る。先生に色々と聞かれたが、みーちゃんを無くしたから探していた…とだけ伝えておいた。
放課後に帰ろうとする私を、邪魔する徳永さんの取り巻き達。皆怖いから従っている…逆らうとどんな目に遭うか…私を通して知っているから。「素林さーん。お帰りの前にちょっといいー?」「…私、これから夕飯の支度…きゃっ!」取り巻き達が私を羽交い締めにする。そして、抱き抱えていたみーちゃんが両腕から落ちた。それを徳永さんが拾う。意味深げな笑顔で。「…っ!みーちゃんを返して!みーちゃんは何もしてない!みーちゃんじゃなくて、私を…」「クラスの皆で話し合った結果ー…みーちゃんはここで消えてもらいまーす!」え…?嘘…消える?みーちゃんが…っ?「やっぱりークラスの秩序を乱す悪い子は、根本的なものから排除しないと…ね?」そう言った徳永さんの手には…ハサミ…っ!「や、止めてっ!みーちゃんを巻き込まないでーっ!もう明日からみーちゃんとお話しませんから…!みーちゃん持って来ませんからっ!」「ふぅん…?でもね…今更謝っても無駄だよっ!」その手に握られたハサミは…みーちゃんの首を…切断して…「止めてーっ!止めて、止めて!みーちゃんっ!みーちゃんっ!」みーちゃんは…私の声も虚しく…無残にも引き裂かれていった…綿も全部出されて…布は修正が効かないくらいにバラバラにされた…それは全てゴミ箱に捨てられ…焼却場に持って行かれた…「はい!これにてみーちゃん解体ショーはおしまいでーす!観客の皆様ありがとうございましたー!」そう言って…スカートの裾をつまみ、一回転してから教室から出て行った。取り巻き達も後を追うように出て行った…
この物語は寂しい一人の少女が頑張って幸せを掴んだのに、壊されていく物語です。「みーちゃん」を引き裂かれて主人公はどんな思いだったのか…私が書ききれないところも推測いただけると嬉しいです。




