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02:超高性能って……?

 おれは案内人のススメにしたがって、ハシゴを下りた。

 家の一階も、二階と広さは変わらない。

 そこにあるのはテーブルとガスコンロ。フルーツや野菜が入った木箱。それから…… 等身大の子供の人形……。

 人形だよな? 動かないから人形だよな?

 なんとなく近寄りがたい。

 これがマジでゲームなら、おれの頭から、たら〜んという汗が表現されるだろう。


 開きっぱなしになったドアから明るい外が見える。いや、開きっぱなしではなく…… ただ単にドアがないだけか……。

 すぐにこの家を去りたくて、早足で出入り口に近づいた。


「あっ! おにいちゃんおはよ!」


 子供の声にビクッとして、横を見ると、小さな男の子が無表情で喋っていた。

 さっきの動かない人形だと思っていたのは弟役のキャラクターだったようだ。

「お…… おはよ……」

 おれは“弟”にぎこちないあいさつをして、家から飛び出た。


 ああ…… 怖い…… ロボットかよ……?

 しかし、家を出たからといって安全ではない。


「あら、どこかへでかけるの?」


 今度は先ほどの母親役。これもやはり無表情で語りかけてくる。

 だから怖いって!!!




「案内人ー」

 キャラがいない場所まで走って、案内人を呼び出した。(常に、どこかからおれを見ているらしい)

「はい、なんでしょう?」

 上のほうから聞こえる声。

 好青年のおれでも、お前が姿を見せたら胸ぐらを掴み上げているところだ。“好青年”のおれでも!

「怖い! なんだよここは!?」

「ですから『ゲームの世界』です」

「わかった! 信じるから! 信じるからなんとかしてくれ! あのキャラたち怖い! せめて表情を入れよう!?」

 おれはすばやく周りを見回した。木の陰からあいつらが覗いていたらそれこそホラーゲームだ。

 やっぱ、少しも楽しくない!

「気にしなければ大丈夫ですよ〜 さあさあ、仲間を探しましょう〜」

 なんか、うまく丸め込まれた……。



 えっと、とりあえず『仲間』の情報を集めればいいのかな? それがゲームの基本だ、うん。

 小さな村の中心あたりに立つと、いろいろなキャラクターがいる。

 畑仕事をしている若者。草刈をしているおばあさん。大工仕事をしているおじさん。


「…………」


 全員がさまざまな仕事を無表情でこなしている。さすがに人間にできることではない……。

 何か働いてるキャラに話しかけるのは怖いなぁ……。ヒマそうなやつに話しかけよう。


 と、一人のおじさん(散歩中であろう)が近づいてくる。

 よし、まずはあの人に……。

「あのー、すいませんー」

「兵器をもって平和はつくれない……。力で平和は……」

 おじさんは独り言を言いながら通り過ぎた。


「…………」


 うん、おれには無理〜。

 とても話しかける勇気なんて出ないよ〜。それになんか殺気を感じたよ〜?

「ほらほら、勇気を出して」

 案内人が励ましてくるが、おれの耳にそれは届いていない。

 しかし、あきらめるのはまだ早い! 当たって砕けろだ!



 次は一軒の小さな家を見つけ、中に入った。

 そこにはやはり住人がいた。

 テーブル横の椅子に座った白ヒゲの老人。よし、これ以上に話しかけやすそうな人物はいない。

 とたんにやる気が出てきたおれは、その老人に近づき――

「あのー、すいま――」

「なんじゃ貴様は! 住居不法侵入じゃぞ!」

「…………」


 えーっと…… 嫌にリアルなゲームですね。


 ――ゲーム的に、ぽいっと追い出された。(ぽいっ、て……)


 当たって砕けたどころか、粉砕されましたが……?


「ふびん……」

 うなだれるおれに案内人が何か言った。

 これ…… ゲームとして成り立ってないよね?

 ていうか、これから仲間になる人物たちがあれらと同類だと考えると気が重くなる……。

「逃げていい?」

「駄目です」

 おれは深い深いため息をついた。




【↑お屋敷】


 村の真ん中に一直線に通る、黄土色の道を進むと、そんな看板が立っていた。

 どうやらここが村の出口のようだ。


 お屋敷に向かう一本道を歩きながら、案内人に疑問をぶつけた。

「誰がこのゲームをつくったんだ?」

「制作者です」

「まんまじゃねーか」

「それだけしか教えることはできません。ていうか、わたしもよくわからないんです」

「どういうことだ? お前はその制作者とつながってるんだろ?」

「まあ、そうですけど…… わたしもつくられて間もないんですよ」

「つくられた―― って?」


「説明不足でしたね。わたしは超高性能人工知能プログラムなんです」


 ……んー…… 反応に困る。人工知能、ということは…… 今おれが話をしているこいつは……。

「人間じゃないのか?」

「はい。プログラムです。」

 日本の技術はついにそこまで……!?

 おれが驚いた顔をしていると、

「しかし、わたしを生み出すことができたのには、理由があるんですよ」

「だ、だよな! 日本の技術がそこまで進歩しているわけないよなー! ハハハハハ……」

「詳しいことは訊かないでくださいね。説明する意味がありません」

 はいはい……。



 そうしている間に『お屋敷』が見えてきた。

 遠くから見てもかなり目立つ。そうとうデカイお屋敷のようだ。

 いや、ていうか行く意味があるのか……? こっちの方向へしか道がなかったし、存在しているということは意味があるということだろうが?(ゲームでは、ね)


 歩いたら少し体温が上がってきた。

 この世界の『太陽』は、どうやら見せかけだけで、熱を出しているふうではない。

 やはりここは異世界なのか……。


「あいつら…… あっちの世界でなにしてるかな〜?」


 早くもどりたい……。


 目の前が暗く見えるのは気のせいなのか、案内人の粋な計らいで特殊効果エフェクトの影がかかっているのか……。



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