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14:地獄しかないようだ。

 なぜ、力が弱まっている?

 追いかけてくる三体の『デカブー』から逃走しながら、考えた。

 ブタ小屋から城の方向へ走って、途中で階段を登った。


「つまり、こういうことじゃないかな?」


 階段を上りきったところで、デカブーをまいたのを確認し、ホッとしたとき、ヨッくんが言った。

「あの強力な技は、いつでも使えるわけではなくて、普段は力の消費を自動的に抑えているんじゃ?」

 ああ、それはオレも薄々気付いていた。

 使うとき、力を出し過ぎないように強制的に抑えこまれる感じだった。

 でもま、やたらと疲れるから乱用するつもりはなかったが。

「いいじゃん? 大群相手じゃなければ、これでも十分戦えるし、連発もできる」

 エンドーがおれたちを―― というより、自分を励ますように言った。

 こいつの言うとおりでもあるな。ま、今は進むしかない。

「しかし、デンテールがまた、あのときのような軍勢を用意しているかもしれません」

「…………」

 ……進むしかない!



 階段を上ったここは、コンクリートの床。

 そして、これまた罠の臭いでいっぱいの―― 下へ降りるための孔が用意されている。ハシゴまでも……。

「…………」

 心なしか、ヨッくんとエンドーの視線を感じる。

 はいはい……。先に行きますよ。行けばいいんでしょ。

 すでにあきらめモードのおれは、二人―― と、案内人の応援を聞き流しながら、ハシゴを降りていった。


 十メートルくらい降りると、床に足がついた。

 そこは、暗い空洞のようなところ。闇に覆われて見える範囲は狭い。上の入り口からそそぐ光の助けもあるが、やはりそれだけでは、ここがどのようなところなのかは確認できない。声が響いて聞こえることから、かなりの広さだということはわかる。

 おれはすぐに上の二人へ叫んだ。

「大丈夫だ! 問題ない!」

 すると、二人はすぐに降りてきた。


「……なぁ〜にが、『問題ない』だ?」

 おれと同じように闇を見回したエンドーがおれをにらむ。

「だって、そう言わないと、お前ら降りてこないもん」

「あのねぇ。ぼくたちだって悪魔じゃないんだよ。キミ一人を危険な目に遭わせて逃げるなんて、神に誓ってしないさ」

 神様、この嘘つきを呪い葬ってください。


「ふふふ……。まんまと罠にかかったな?」


 闇に声が響いた。

「かかってやったんだ。ありがたく思え!」

 反射的に叫んだが…… だれ?

 いや、聞き覚えがある。

 そう思ったとき、声の主が闇の中からぬらりと姿を現した。

「お前らか、侵入者は」

 やはりあのゾンビ―― デンテールだ。

「生きていたとは、おどろきだ。もはや動けぬ状態だと思ったのだがな」

「期待を裏切ってごめんなさいねぇ」

 エンドーの挑戦的な態度に、デンテールは口元を歪めて笑った。

「おれが手を下すこともないだろう。幸運は二度も続かない」

 それを聞いて、ヨッくんが口を開いた。

「……なるほど、そういうことか。なぜ入り口が上にあったのか……」

「ふふふ……。そう、入り口を上につくったのは、お前たちを閉じ込めるため」

 デンテールがカッと目を見開くと、おれたちが降りてきたハシゴが燃えて灰になった。同時に、天井のいくつかの電球が点灯し、暗闇を淡い明かりで照らした。


 げっ……。

 おれはとっさに武器を構えた。

 デンテールの後ろに、ガイコツの軍隊が控えていた。

 ざっと数えて二十体。

「ついでに――」

 デンテールがスイッチのようなものを掲げた。

「ここに爆弾を仕掛けておいた」

「てめぇ……!」

 声は出るが、動けなかった。

 ヨッくんもエンドーも、歯ぎしりをしてスイッチを見つめている。


 カチッ……。


 スイッチが押されると、ところどころで、ピッ、ピッ、という電子音が鳴り始めた。

 おれたちを地獄へいざなうかのように。


「せいぜいゆっくりと、苦しんで死ぬがいい」

 ゾンビは笑いながら姿を消した。


「おい……。どうすんだよ?」

 歩み寄ってくるガイコツ軍隊をにらみながら、二人に訊く。

 当然答えられるはずがないのはわかっているが。

「脱出口は?」

 ヨッくんのほうを向くと、

「今探している」

 すでにヨッくんは魔力を使っていた。

 どこまで見えているのか、おれにはわからないが、こいつになら何かわかるかもしれない。


「――トロッコだ。後ろにトロッコがある。それと、レールが地面を這って、どこかへ。……だめだ。それ以上は見えない」


 トロッコか。この建物はもともと何のためにつくられたのだろうか?

「みなさん! 急いでください!」

 案内人の焦りの声。

 そのトロッコにかけるしかない!

 電子音はさっきよりもテンポを上げて鳴っている。爆発が近いのだろうか?

 おれたちは一斉に後方へ走った。それと同時に、ガイコツ軍隊も走っておれたちを追う。


 くっそ! ピラミッドかここは!?



 トロッコ――

 たしかにそこにはギリギリ三人乗れそうなトロッコがあった。

 そのレールの先に何があるかなんて問題はそのときでいい。とにかく、このトロッコを動かすことが先決だ。

 ガイコツが剣を構えておれたちに襲い掛かるが、その攻撃を防ぎ、けりや拳を食らわす。

 見た目どおりもろい体で、後ろに倒れると簡単に関節部分から崩れた。しかし、ここで考えられるゲーム的可能性は、そいつは再び体を組み立て、復活する、だ。

 そうならないうちにトロッコを――


 一人で骨どもと戦うおれの後ろでは、すでにヨッくんとエンドーがトロッコに乗り込んでいた。


「マハエ! むこうのレバーでトロッコを作動させてくれ! 大丈夫、トロッコのブレーキはかかっている!」

 ヨッくんがガイコツの剣を叩き落しながら、おれに叫ぶ。

 見ると、トロッコから10メートルほど離れた場所に、それらしいレバーがある。

 たとえトロッコを作動させても、トロッコのブレーキを解除させなければ動かない仕組みだろう。

「よし! 任せろ!」

 その代わりあとで殴ってやる!


 ナギナタで目の前のガイコツを撃破し、レバーへ向かう。

 ついでに復活しようとカタカタと動き始めたガイコツの頭を蹴り飛ばす。


 ふと振り返ると、トロッコにも敵が集まっていた。ヨッくんもエンドーも必死で対応している。

 次々と倒されるガイコツ。あの二人もなかなか強い。


 デンテールは、おれたちをじわじわと追い込むために、わざと敵のレベルを下げたのかもしれない。


 おれはレバーの前にいるガイコツの攻撃をかわし、逆に足の関節を攻撃。足を破損したガイコツはバランスを崩して倒れた。


 大丈夫。トロッコ周りの敵はすぐに片づくはずだ。

 おれは思い切ってレバーを動かした。


 グオォン……。と、たしかに機械が作動する音が響いた。


 おれはすぐに踵を返し、トロッコへ走った。

 トロッコにまとわりつくガイコツを後ろから崩していく。


 と、そのとき、ガイコツが倒れ際にトロッコの何かを操作した。

「あー、マハエ、急いでー」

 ヨッくんが苦笑しながら言う。


 まて、まさか……。


 ブレーキが解除されたトロッコは、勢いよくガイコツを振り払い、あっという間に遠くの闇へ消えていった。


 文字通り「あっ」と言う間に。


 ……嗚呼、吹き抜ける風が冷たい。



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