表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
16/26

12:絶叫!警戒!疑問?

 『イカダ』の広さは、三人乗っても少しスペースが残るくらい。

 しかし、それはやはりイカダ。丸太をヒモで組んで、真ん中に、ぼろぼろの布でできた帆が立てられている。

 沈みそうだなぁー。

 おれは縮こまって、マストにしがみつく。(持っているナギナタが邪魔だ)

「出発ー」

 元気がいいのはエンドーだけ。

 さっきまで、めんどくさそうな顔をしていたのに……。


 ヨッくんが短剣で、イカダを岸につなぎ止めているロープを切断した。

 ゆっくりと流されるイカダ。

 その速度はしだいに速くなり……。


「おおぉおおおぉぉあああぁあぁぁぁ……!!!」


 絶叫するおれ。


「うほほほほほほほほほほほほ!!!」


 喜ぶエンドー。


「守りたまえ救いたまえ導きたまえ……」


 神に祈るヨッくん。




 死ぬ……。




 イカダは、しばらく暴走したように流されたあと、徐々に速度を落としていった。

 流れの遅い場所に到達したようだ。


 おれはしがみついていたマストから手を離して、おそるおそる立ち上がった。

「助かった……」

 脱力するおれ。

「もう終わりか?」

 残念そうなエンドー。

「神よ……。感謝します」

 神に礼を言うヨッくん。


 おれはエンドーに訊く。

「なんで、そんなに楽しめるんだよ?」

 エンドーは首をひねって答えた。

「なんでって、安全に進めるようにプログラムされてんだろ? このイカダ」

 それを聞いたおれは、さらに脱力。

 本気でそう思っているこいつは幸せ者だ……。このゲームをつくった制作者だぞ? そこまでおれたちのことを考えているわけないだろ。

 エンドーに説明するのもめんどうなので、とりあえずため息をついておいた。


 おれたちの乗ったイカダは、流れの穏やかな川を、ロープで引っ張られるように、まっすぐ下流へ進む。

 両側は森らしく、木が生い茂っている。(森の中を流れる川だ)


 テレビのアマゾン川を思い出して、とっさに警戒モード。

 もしも、巨大なヘビが出てきたら……。

 いかなる危機にもすばやく対処できるよう、つねに神経をとぎすませておく――


「いやー、気持ちいいし、空気がおいしー!」

「なにを言っているんだい、エンドーくん。実際に森の中にいるわけじゃないんだよ」

「ふ……。現実主義だな、ヨッくんは。いい大人になれねーよ?」


 ――のは、おれだけのようだ……。



 十五分ほど経過したとき、案内人が告げた。

「もうすぐ魔城に着きますよ」

 おれたちはイカダが進んでいく、下流へ目をやる。

 先のほうに島のようなものが小さく見える。そこに魔城がある、と、案内人は言う。

 よく見ると、この川は先で二股に分かれるようだ。そして、その中心にそびえる崖。


 あそこに魔城の入り口が?


「あそこはもう、乗っ取られているでしょう……。もしかしたら、見張りがいるかもしれません」

「見張りに見つかったら厄介だな。デンテールに知られてしまう」

 エンドーが『デンテール』の部分を強調して言った。

 学習したな。


 さて、見張りがいたらどうする? ここからじゃ遠すぎて見えるわけがない。確認できるまで近づいたら、こちらの存在も気付かれてしまう。


「……よし、ここはぼくが」


 ヨッくんがイカダの先端に立った。


 キィーーーン……。


 あのときの、空気が振動する鋭い音。

 『魔力』を使っているようだ。

 でも、なにを? ヨッくんの力の、別の使い方ってやつか?


 しばらく魔城のほうへ眼を光らせた後、疲れたと言うように、目を押さえておれたちに向いた。

「どこにも見張りはいない。このまま進むと、洞窟があるから、そこから入るんだろう」

 自信を持って言うヨッくんに、案内人の驚いた声。

「見えるんですか!? 吉野さん!」

「うん。これがこの力の別の使い道。いろんなものが見えるよ」

 いろいろなもの……?

 おれやエンドーの力にも、別の使い道があるのだろうか?



 四階建ての建物ほどの高さの崖。

 ヨッくんが言ったとおり、その崖の下に洞窟があった。それに見張りも確認できない。


 洞窟―― 魔城の入り口は、すんなりとおれたちの侵入を許してくれた。


 暗い洞窟に入ったイカダは、奥の岸まで流れると、コトン……、と音をたてて停止した。


 おれはイカダから降りると、こわばった腰をひねった。

「うー……。やっと着いたなぁ」

 エンドーとヨッくんも、降りて伸びをしている。


 どこへ行くのかと、闇に目を凝らすと、石の階段を見つけた。

 おれたちは足元に気をつけながら、慎重に一段一段のぼっていった。



 らせん状になった狭い階段を、誰も声を出さず、できるだけ音を消して上へ進む。

 耳を澄ませながら―― 上から岩が転がってきても、すぐに下へ逃げれるように。

 アドベンチャー映画の影響か、ついつい危険な想像をしてしまう。

 だが、この世界ではその可能性は高い。

 今転がってくる。あと一段踏んだら転がってくる……。


「…………」

「…………」

「…………」


 思い過ごしか。


 外の光が見えた。

 おれたちの顔に、自然と笑みが浮かぶ。


 緑の広場――


「はあっ……」

 息苦しい階段をやっと抜け、外の空気を胸一杯に吸い込む。

 いちいち寿命が縮む!

 しっかし、魔城だから、もっとトラップがあるものかと思ったが……。


 そこは草原のように、緑の草がぎっしり生えた広場。

 眺めのいい高台だ。森と、その中を、まっすぐに伸びる川。イカダで下ってきた川だ。ここはあの崖の上なのだろう。

「この土地、買いだね」

 ヨッくんがおっさんみたいな発言をする。

 住みたいのか? この世界に?

 おれは鼻を鳴らし、反対側を見た。

 白いレンガの壁が、横にまっすぐ広がっている。

 すでにエンドーが、鉄の扉がある門の付近を探索している。(この絶景に見向きもしないとは……)


 おれはヨッくんの腕を引いて門の前へ。


 立て看板に【魔城 正門】と書いてある。

 なんとご親切な……。


「何かあったか?」

 訊くと、エンドーは門の鉄扉を見ながら腕を組んだ。

「ここ以外に侵入口はないようだ」

 ……いや、ここ以外、どこから入ろうと思ったんだ?

 そう言うと、

「あのなぁ。正門から中に入っていいのは、住人か、客か、引越し屋だけだ」

 常識だろ! と言わんばかりの態度。

 おれたちは、住人でも客でも引越し屋でもないってわけね。侵入者だから。


 でも、ここからしか入れないのは事実。

 市販のゲームでは、主人公が敵の住処に、正門から堂々と侵入するっけ?

 とか考えていると、エンドーが鉄扉に手をかけていた。


「ちょっ―― エンド――」

 手を伸ばして、エンドーを止めようとしたが遅かった……、が……。


 ガチャン……。


[カギがかかっている。]


 カクッ、と勢いでコケかけるおれとヨッくん。

「なんだー。カギかかってんのなー」

 エンドーが腰に手を当てて、舌打ちをする。

 いきなり開けようとするな! もうちょっと警戒心を持て!

 こいつを独りで行動させるのは危険だな。一緒に行動するのも危険だが……。

 その様子を見た案内人は。

「おかしいですね……。簡単に開くようになっているはずですが……」

 それはそれで制作者に文句を言いたくなるよ。

「まあいい。こういうときはだな」

 エンドーが拳をコキコキッっと鳴らす。

 お、あの技を使う気か?

 鳴らした拳を持ち上げ……、開き……、口のところでメガホンのように構える。


「ちわ〜! 宅配屋でっす〜! 開けてくださ〜い!」


「開くかアホ!!!」

 おれとヨッくんのダブルツッコミがさく裂!

 客でも引越し屋でもなく、宅配屋さん!?

 そんなことで開くわけが――


 ギギギギギギ…… ゴトン……。


 ……開いた。


「ほら見ろ。ちゃんと開けてくれた」

 あっけにとられるおれたちの横で、エンドーが得意げに言う。


 でも、エンドーの言葉で開いたと言うよりは、おれたちを招き入れるために開いたような……。出迎えもいないし……。

 それに、なんか変だぞ。

 扉の向こうの空間が波打ったように見えたのは、おれだけか?



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ