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第93話・バレエファンから見た神韻(シェン・ユン)の感想(二千十九年版)

 神韻の読み方は、シェン・ユン、です。最初に書いておきますが、主催する神韻芸術団が主張する思想には私は関与しません。あくまでもそこらへんにいるバレエファンが書いた感想であることを強調しておきます。中国政府は神韻はカルト宗教のプロパガンダ、宣伝だとはっきりいっています。だから神韻は世界中で公演できても、本国の中国では公演はしない。新聞やテレビなどで神韻の大きな広告が出ない。批評家も書かない……しかし私はここでバレエの話を書きたい。時折思想的なご批評、ご感想をいただくこともあるのでこの点、先にお断りさせていただきます。それではいきます。



 神韻、正式には神韻芸術団といいます。私はクラシックバレエが好きなので朝夕必ずバレエに関する動画などを見ているのですが、わりと神韻のコマーシャル、宣伝動画が同時にあがってきます。それも毎年ある時期から突然。別のページに飛んでも広告が追いかけてくる。これはリターゲティング広告といってバレエなど踊りをみていると興味ありとネットが判定して、同じ広告を何度も提示するわけですね。ネットは知らぬ間に私の情報を得ているわけです。根負けして動画を見ていたら確かにきれいだけどバレエじゃない。公式ホームページに飛んで閲覧すると「中国の古典舞踊や民族舞踊を披露する舞台芸術団体」 とある。中国由来であるにも関わらず、アメリカが本拠地。中国では敵視されている。どちらかというとそういうのが苦手です。ただ踊りを見ていると確かに跳躍、軟体を生かした振り付けは中国的ではあってもバレエの要素は確実にある。ならば話のタネに見に行こうかとチケットを取りました。


 神韻芸術団は組織的に動いています。主役しか踊らないプリンシバルダンサーもいます。所属ダンサーは約九十名、大所帯ですね。ダンサーの養成学校まである。そのほか、独自のオーケストラまでもある。大がかりな広告といい、資金が豊富にある団体であるのは間違いない。一介のバレエ団ではなかなかできないことを神韻は軽々としている。創立は二千六年。わりと新しめですが精力的に全世界で公演しています。現在は五つの芸術団に規模を拡大、世界同時ツアーを行っています。公演会場も著名なところばかり。中国以外は。そこまでわかると逆に興味が湧いてきました。

 いざ会場に行くと平日のせいか客層は年配がやや多め。バレエ公演ではないので、お花や楽屋見舞いを持っているような人はいない。この点は地味な感じ。ホームページには正装でお越しくださいと書いてあり、実際和装の人もいたのですが、私は普段着で行きました。座席は前列の方。画像や動画の撮影禁止は公演前から何度も放送されかなり神経をとがらせている感じです。私の斜め前の人が公演直前までスマホでゲームをしていましたが席に係員が来て直接注意されていました。


 さて踊りの話です。まずバレエではないのと、お国柄か女性衣裳の露出は少なめです。チュチュなどはなし。足をむき出しにして踊るのもなし。肩を出すのは盗賊役の男性のみ。そのぐらい徹底している。

 しかしそれぞれの衣裳の色合いがとても鮮やかです。目の保養ですね。広告の画像もきれいだったので期待していたのですが肉眼で見ると期待以上で来てよかったと思いました。本当にきれい! 

 女性はポワント(トウシューズ)は履かない。バレエシューズもしくは、ブーツのようなものを履いている。コールドはそろっていて当たり前だが、頭の角度や手もきっちり。天女役の衣裳の袖やスカート、袴は長いものが多く、捌いて踊るのは大変かと思うがこれまたちゃんとそろっている。扇までもが背丈以上に長いのがあり、これも上手に捌いていました。一歩間違えたら絡まってしまうが、そういうのは一切ない。体の動きで衣類や小道具を同時に風でなびかせ、さらに大きく見せる。舞台効果満点です。何度も練習を積んでいるのだろうなあと感心しました。

 中国舞踊ではアクロバット的な動作や軟体は必ず入りますが、空中で一回転するのは男女ともにありました。そしてフィギュアでいうビールマンスピン(後ろの足を両手でもって背中をそらして回る)をしながら移動し、足四番で着地したかと思うとそのままアラベスクでさらに回る。それから膝を曲げてプリエ。さらに足をあげる。かなり高度なテクニックが随所に見られてバレエファンとしても楽しかったです。

 ピルエットですがバレエ式は曲げた足をアラセゴンドといって真横につけますが、それは一切なかった。ジャズダンスでみるような膝を前につけて回るのもなし。ジャッキーチェンのカンフー映画、酔拳などで見た足首を曲げて観客から見て足底をみせて回る。試しにそれでピルエットをしてみると全然できない。たぶん体の軸の取り方がクラシックバレエとは根本的に違うはずです。中国舞踊、いいですね。ワークショップしてくれないかな~。

 パ・ド・ドゥはなし。神韻は肌の露出も少ないし男女の付き合いなどには厳しいのかな……二人だけで踊るというのはあるが、愛を交わすなどではなく、一緒に踊るの楽しいね~という感じです。演目自体は一つ一つが短いので飽きない。舞踊に疎いひとでも眠くならないでしょう。中国の逸話、昔話が出てくる。特に孫悟空の話などは知っていたので楽しめました。

 出来損ないで皆からバカにされるお坊さんが怪力を得て盗賊を退治する。時には料理人がボスの目を盗んで楽しく踊る……これは何をしているところか、何のシーンを踊っているのかというのが明確です。誰が見てもわかるというのは素晴らしい。ロングランいく基本でしょう。私も楽しんで時には他の観客と一緒に拍手をしました。

 宗教が入っている演目もあり時には信者の少女の拷問シーンまであってぎょっとした。うーん……このあたりは純粋に舞踊を楽しみたい観客としてはやめてほしい。私の後ろの席の人は中国人ぽい人でしたが、どう感じたか聞いてみたいところです。

 オーケストラは中国独特の銅鑼や二胡もあって非常によかったです。作曲はD.F.と名乗る人が全てしていました。すごいな~。この団体で、定番の白鳥の湖やくるみ割り人形などの中国舞踊的に味付けしたクラシックバレエ全幕もぜひ見たいものです。これならば巨大マーケットである神韻の母国、中国でも公演できて、もっと客層が広がると思うのです。特に衣裳の色鮮やかさは世界一で必見に値する。


 今回出演者のバレエシューズをパンフレットから抜粋してみました。こちらでは画像が入らないのでクックパッドでUPしましたので時間のある方はのぞいてみてください。

https://fujitagourako.cookpad-blog.jp/articles/404189?_ga=2.71920022.420151351.1548366773-90595316.1548366773



 









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