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第88話・バレエ留学へのオーディション見学

 

 第79話ですでにオーディション見学のエッセイを書きましたが、あれはプロ対象でした。今回は十代メインの某国バレエスクールの短期留学のオーディションです。サマースクール希望者の選抜なので、こういうのは春休みの間にするのですね。私は留学をしたことがないので初耳でした。もちろん見学許可をいただいています。レッスンのうしろ入り口の近くに折り畳みイスがあり、そこで一時間ほどのレッスン兼オーディションを見てきました。


 今回の参加者は通っているバレエの先生の許可を得るなどの規定を満たしたうえでの参加です。生徒自身の努力もあるし、かつ留学となれば親の援助、協力も不可欠です。ですのでこのオーディションの参加者さんは、バレエ環境に特に恵まれている生徒さんです。(バレエが大好きでも経済的なことでコンクールや海外留学ができない子供も多いです)

オーディションの先生には、これらの恵まれた生徒の中で


「更に先鋭を選ぶ権利」 


があるのです。バレエの道は本当に厳しい。

 夏休みだけの短期留学でもさらに選抜される。参加者たちは、皆若く今後もこういうオーディションとは縁があるはずです。選抜される身分……これらで培えた努力と根性、プライドは、将来バレエ以外の道に行くことがあっても必ず役立つと思います。


 今回見学したものは、某国のバレエスクールの偉い人がやるオーディションです。レッスンを兼ねて同時にオーディションをするという形。参加者はレオタードの上にゼッケン、つまり番号を書いた布をつけています。明らかに小学生もいました。ということはもしオーディションに合格したら親もついていくのかな? いや、一人で海外に行く子供もいるでしょうし、バレエをやる子は結構しっかりしているので大丈夫かな。バレエスクールなので寮もあるし、留学生の生活全般も管理してくれるマネジメントさんがいると思いますし、案外単身での海外留学もなんとかなるのでしょう。

 私は単なる見学者です。参加者でもないしその付き添いの親でもない。そんな私でも、笑顔で「おはようございます」 と頭を下げる生徒たち。レッスン場の入場者には誰でもやっていました。バレエのお教室によっては体育系というか、軍隊顔負けにきちんとあいさつをするように言われているところがありますね。でも明らかに不審者の私にまで……なんていい子たちなのだろう! 恐縮のあまり、目頭が熱くなってしまいます。

 みんな、このオーディションに合格したらバレエ留学に行くのだ。初の海外でもあるだろうし、人生変わる経験をするのかも。そういう貴重な時間を垣間見せていただけるのは本当にありがたく思う。

 しかし今時の子、背が高いし足も長い。純和風昭和体系の短足胴長(←死語) の私はため息をつくしかありません。見ているとオーディションを受けるだけあって最低限コンクールは経験しているだろう子が多い。気持ちにも余裕が感じられます。今回ポワントレッスンはないのですが、はくことを想定した足のマッサージを念入りにしている子もいます。柔軟も手馴れていてもう毎日欠かさずやってます感強いです。バレエに関しては皆超真面目です。いい加減なことをしていたらケガに直結して踊れなくなるからね。

 さて、レッスン前から先生はレッスン場のすみにいて、さりげなく生徒の様子をみています。バーレッスン前からオーディションはもう始まっています!

 レッスン自体は未成年メインのせいか、バーもセンターも難しくはなく、本当に基礎重視です。私はスクールの偉い人がどこをどう見ているか、どうやって選抜するのか、ということに興味がありました。

 最初はバーです。レッスン場中央にいた子を見本にして、腕の使い方を説明していました。

 男子はどこにいても目立つので一曲終わるごとに近寄って注意をしていました。特に腕と指。これからが大事な子供たちばかりですので、先生の責任は重大かと思います。また足を高くあげたり、ピルエットの回転の多さを重視するようなことは一切ありませんでした。

 確かにこれはコンクールではないのです。先生の目線は、基礎ができているかどうか。スクール生徒の選抜オーディションはそういうものなのでしょう。

 ピルエットは一回、フェッテも一回、複雑な足の動きはなし。しかし、方向転換の向きには厳しかった。回るときの目線、首の角度、軸の保ち方。即戦力よりも基礎ができていて、これから応用が利くだろう子ども、つまり伸びしろのある子どもを選抜しているという感じです。ある子どもの首を両手で包んで、まっすぐにというジェスチャーを強調したりしていました。数人これをやられていて、軸が曲がっているといいたいのだろうと思います。それと頭をまっすぐに、ということ。ピルエットで微妙な癖のある子がいて、注意されていました。回れてはいたので本人は気づいてなかったようだが、あれはちょっと直すの大変かも。でも大丈夫。若ければ指導者次第でやり直しがきくし、いくらでも伸びる。

 センターでの方向転換ではバーよりもなお厳しい目線がいきます。オーディションの参加者なだけあって、先生の振付を間違うような人はいませんでしたが、半回転だけのフェッテ、その直後にまわりこんで方向転換するときにぐらついた子がいまして注意を受けていました。といってもプロの即戦力を求めるのではないので、先生も優しく笑顔を交えながらという感じです。プロオーディションは欠点を見つけたら不合格で、即相手にされないから。そのあたりのギスギス感はなかったです。

 ラスト近く、先生に気に入られたな、という子はすぐにわかりました。目線が違うからです。短い振付の中でも緊張してはいてもなんとなく余裕が感じられる子、楽しんでのびのび踊っている子がいいみたい。複雑な振付をわざと入れず、本当に基礎だけやらせて、その分どこまで踊り込めるかをみているのだろうと思います。

 レッスン終了後、一人一人の面談がありました。個室ではなくレッスン場なので会話が丸わかりです。通訳はいますが、生徒は名前を呼ばれてから先生の前に行き、立ったまま、先生と話す。親は私と一緒でイス席にいますが息をつめて耳をダンボにされています。親も大変だなあ……合格したら某国へ行っちゃうよ。無料招待じゃないので、お金もたくさんかかるよ。でも、かわいい子供のためにエンヤコラ。

 発表は後日みたい。

 私が選抜者ならば、全員合格にします。そして、一緒に踊ろう~と招待してあげるのだけどね……受け入れ側としては希望者が多すぎて選抜せざるをえないのだろうなあ。

 プロと違って応用ができるかではなく、基礎重視だとわかっただけでも勉強になりました。合格された方、おめでとう。不合格の人も別のチャンスはある。これからも運命の出会いもあるだろうので落ち込むことはない。まだまだ若いもの。あの先生に注意された人は不合格であっても本当にラッキーだったよ。


 このオーディションの参加者は全員バレエ界の次世代を担う新芽です。とんがったところもまだ何もない。踊りも人格も素直な子供たちを見れて日本のバレエ界は明るいと思えた一日でした。

 しかし成人後のバレエ人材の海外流出は当たり前になっているが、コレはもったない……日本ではプロの活躍の場が数が少なすぎるからね。

 日本の国立バレエ学校設立があればバレエ界も盛り上がると思います。バレエ公演もたくさん作るべき。また日本旅行のついでに日本に行かないとみることができない「日本発のバレエ」 も作るべき。  だっれっかっ! 政治家でバレエ好きな人、いませんかーと叫びたい私です。










 










私自身にはオーディションやコンクールの経験がありませんので、考察が違うとのご指摘があるかもしれません。本作は個人的な忘備録も兼ねていますのでどうかお許しください。


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