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第8話・ふりつけについて・後編

 前回の続きです。


 私はその時から実はふりつけの楽しみに目覚めたようなのです。

 私にふりつけされるのを嫌った子は今でも大嫌い、です。何も私がふりつけしようとしただけであんな顔して私をにらみつけることないじゃないか、と思います。

 しかも私は自分本位でふりつけしようともしてないのに、人から頼まれたからしようとしただけなのに。極悪人を見るみたいな目つきで見られました。○0年以上もたった今でも腹がたちます。

 他にも高校の時に振り付け用の音楽レコード、テープの原本を割られた話をしましたが、私は善人でもなんでもないし、わりと執念深い性格なのでそういう子が今現在不幸になっているといいと、と心底思ってます。


 その子のせいで観客の前でふりつけして作品発表する機会こそのがしてしまったけれど、それもまた運命でしょう。だけど私はこの時ふりつけのためにノートを作りました。人の姿をマルで表し、手足を小さくかきます。

 構図はどんなのにしよう、ポーズは? 身体の向きは?

 みんなバレエを知らなくても楽しめて他の人も楽しんでもらえるようなポーズがいいなってそう思ってコツコツとノートに図面ひきました。

 今思えば拙い出来だし、漫画のコマみたいです。でもそれがとても楽しかったのです。

 結論としてこのノートもわたしのふりつけも日の目をみることはありませんでした。でもラストはみんなで手をつないで踊るというシーンは今でも脳内再現できます。


 そして。

 全くのド素人がふりつけしようと思ってもそんな機会はめったにない。ましてや社会人。

 いつも行く先生に「ふりつけして自分で踊ってみたいです」 とは言ってみたけど、冗談でしょみたいな反応でがっくりしました。

 そう、バレエの先生でないとふりつけしてはいけないのかもね…? しかもヘタだし。

 振付家は優秀なダンサーである必要はないという記事をどっかで見かけて心の支えにしていたのですが…やっぱり素人がふりつけしてはいけないのかも。

 それに生徒への振り付けは先生がしたいよね。振り付けするの、楽しいもの。バレエの先生の役得ですね。だから先生に対しても失礼で傲慢だったと反省しています。もう決して言うまい。


 そう思った私は自分でふりつけして1人で踊っています。狭い家の中で。

 誰かがみたら気がくるっていると思われるかもしれない。だから内緒で踊ります。

 私はソロもパドドゥも踊ったことはない、年ばかりくった熟年です。でも踊ったり夢見るのは自由だし、だれにも迷惑かけてませんし。

 うちのチビコもバレエをはじめました。だから彼女も私のふりつけで踊ってくれそうです。それを映画にも使いたいです。いやあ、映画無理そうだ、だったら家庭ムービーだ。そして老後の楽しみにとっておこう。そう観客は自分自身。

 ね、人畜無害な趣味でしょう…?


 さてバレエの振付家のことはコリオグラファーといいます。私は著名な人の舞台も何度か見ました。ベジャールはまた別格です。尊敬しています。ああ実際にお会いしてみたかったなあ…。

 反対にそこそこ有名でその名前を冠した舞台でも「つ、つまんない、見に来てソンした…」 と思ったことも正直あります。確かにバレエはバレエでしたけど、一生懸命踊っているダンサーさんにも私聞きたかったです、「この作品踊るの好きですか? 」って。

 まあ身体動かしている側はつまんなくないだろう、だけどじっとみているのが苦痛な作品もありました。

 こういうのになると一緒に言った人がいる場合は「退屈したね」「うん、寝てしまった」「お金と時間ちょっともったいなかったね」とか言いあえますがもっと不出来な作品だともう無言。今見たばかりの舞台の話は一言もせず明日の仕事の段取りとかグルメや今度行く旅行の話をします。

 バレエ好きの私でこうなんだもん、他の人はお金を払った手前大人しく我慢してみてたと思いますが。

 それでも日本のバレエ評論家はほめ言葉しかかかない。あとでみたら難解なテーマをよくここまで表現したとかほめていて「ケッ」 と思いました。あなた、わかってて書いてんのか? って。

 それともすごく頭いいんですね。私は頭が悪いので全くわかりませんでしたけど? あれが壮大なテーマの踊りなんですか? すごいですね。

 ここは匿名で言いたい放題なんで書くけど「あの踊りでは観客は理解できませんよ、だめですよお客が入りませんよ? 」と振付家に言える人がまわりにいないのか? とまで思う。

 そう。ダンサーが悪いのじゃなくってわかりにくい踊りを指示する振付家が悪いというスタンスなんです、私は。

 一方振付家さんは私のテーマを理解できないあんたの頭が悪いとおっしゃるでしょうけど。


 実は私のコンテンポラリー嫌いなのはそこからきてます。それでもコンクールでは重要品目ですね、古典も踊れてかつコンテンポラリーも踊れないといいダンサーになれません、ですか?

 コリオグラファーの要求にこたえられないダンサーはいらないというわけですか??? 

 変です、そんなの。


 こういうのが演目でどうしても見ないといけない場合、コリオグラファーさんの舞台企画というかダンサーの動きの意図というか、この作品はこういう風にみてくださいと舞台の最初の挨拶に言いに来てほしいとか切に思います。

 それぐらい意味不明な動きが多い…。

 理屈抜きでわかりやすくて楽しめたのはあの「ボレロ」だけですね。あんなにわかりやすく万人に強く訴えるものがあるからあの作品はベジャールの代表作になりえたと思う。また後世に永久に残る。あれは人類の誇りだと思います。








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