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第78話・プロムナードの話

2つだけ用語説明。


ルルベ(Releve) → つま先立ち

アテール(A_terre) → カカトをべったりつける

 プロムナードとは、フランス語で「散歩」を意味しています。しかしここで書くのはバレエレッスンの中でのプロムナード。バレエを知らない人はレッスン場で散歩するのかと思うかもしれませんが、違います。限られた小さな距離で方向転換もしくは移動することをプロムナードといいます。確かにこれも散歩ですね、一応。

 言葉だけで振付をされる先生の場合、パとパの間に短くプロムナード、と言われます。どういうプロムナードをするかなどは上級クラスになると生徒ダンサーはもうわかっているのですっと動きますね。一緒に。お見事。

(「パ」 というのは踊りや動きの種類を言います。また普通にバレエ歩きをするだけでもプロムナードという場合もありますが、今回はレッスン中で多用される回転系プロムナードの話ね)


 バレエレッスンではどこでも二部構成になっていて、最初はストレッチを兼ねたバーレッスン。次にバーなしで踊るセンターレッスンです。

 そのセンターレッスンで最初はゆっくりめの音楽で踊ります。その中でプロムナード入りの振付が入ってくることが多い。代表的なプロムナードは、たいていはアラベスクをしたまま、方向転換することをいいます。もしくはアチチュードをしたまま。転換しながらも足の形を変えることもあります。アラベスクから少しずつアチチュードにポーズ変換するなどね。レッスン毎の振付によって違いますが、同じなのは「片足一本立ちという状態を維持しながら、身体の向きを変える」 ことです。

 基礎クラスならば半周、左側から右側に向きを変えるなど。初級ならばまるごと一周。中級ならばプロムナード前後にパンシェを入れるなどヴァリエーションをつけます。どのクラスでも言われるのは、

① 軸足を動かすな。

② 移動中に足の高さを変えるな。 

③ 顔をつけろ。 

④ 方向転換ごとに頭を上下に、がたつかせるな。 

⑤ 軸足の膝を中に入れろ

以上。

 本当は注意点はもっといっぱいあるけど、共通しているのは、プロムナード中は、どこの方向から見られても「美しいポージングを維持させる」ことが必須。

 アラベスクならアラベスクのままで。足揺らすな、垂らすな、下げるな、曲げるな、です。肩をすくめたり上がると一瞬で崇高なアラベスクが壊れます。繊細で美しい芸術的なクラシックバレエにはこういう厳格なルールがあります。

 いうのも恥ずかしいぐらい年数でバレエをしているのに、私はいまだにポージングが下手です。その上にプロムナードをするのは難しい。なのでここで再確認しつつ書くのも自身の勉強にしよう。


プロムナードは移動はバレエシューズではアテールで。つまり方向転換だけ、かかとをあげてつま先でゆっくり回転します。三拍子なら転換の角度も大きめに、四拍子ならもう少しゆっくりめなど。曲によって変わります。が、一度ものすごーくゆっくりめの音楽でやらされた時は、基礎ができてないのがバレバレでがたつきました。こういう時こそ誰が上手か丸わかりです。

 先日なんか、あるレッスンで生徒の半数がプロムナードで陥落? したのをご覧になった先生は首を振り、別の指示をなさいました。曲を変えてグランプリエを足一番二番四番五番をそれぞれスロー八カウントで下におりる。またスロー八カウントで上にあげるという振付です。あれもまたプリエ時に張り出した膝を意図的に内側に入れるとなんとかなるのですが、先生の方もお察しで「曲げた膝は最大限外側に出しておやりなさい」 とおっしゃられて……できるだけミスしないよう考えて動いていることがもろにばれていました。この場合のミスというのは、グランプリエで床に手をつくことです。センターレッスンでは踊り損ねて床に手をつくのは、一番みっともないことです。

 その八カウントのグランプリエで基礎ができてない人は総崩れでした。床にグランプリエをしたあと、ゆっくり身体を引き上げるときにまっすぐ軸ができていないとバランスが崩れやすいのです。

 私は一番二番はなんとかなり、四番はギリ、五番で左手を床につくという失態をさらしました。

 別の先生でコレをやった時は、バレコン受賞者やプロがいまして彼女たちは最初から最後までルルベの状態で完璧にやりました。軸がきちんとできていたら、アテールもルルベも関係ないのです。

 私はここでバレエエッセイを書いていて、バレエをしない人からさぞやお上手でしょうと思われているふしもありますが、全然ですよ……本当に全然ダメ。バレエがただ好きなだけ。


」」」」」」」」」」」」」」」」」」」


 男性とのパ・ド・ドゥレッスンではプロムナードはもう必須です。パ・ド・ドゥって私はしたことはないですが、あれは男性によっかかって踊らせてもらうのではなく、自力でまわっているのですよ。男性は手を添えているだけ。持ち上げてもらうことをリフトされるといいますが、あれも二人で呼吸をあわせないとケガします。タイミングがあわなくて胸骨や鎖骨を折った人もいます。下手な女性がパートナーになり、頼られると男性側が迷惑します。

 ポワントを履いていますので、手を軽くおいて自分はこの場合動かず、男性が女性のまわりをまわってぐるりと半周もしくは一周してくれます。もしくは男性の肩と腕に手を軽く添えて回ってもらうと。

 一般的に有名なプロムナード、といえば、眠りの森の美女のローズアダージョでしょう。そう四人の求婚者がオーロラ姫の手をとって、順番に一回転ずつくるりと回らせるアレのことです。

 練習シーンを見たことがありますが、四人も王子様がいない時はオーロラ姫さんはバーのたての部分を王子様の手に見たててまわっていましたね。まわったあとは手をアンオー(頭上)にあげてポーズ。片足はずっとあげたままです。観る分には優雅に見えてますが結構キツイ、大変ですよ。

 四人の王子を相手にできるオーロラ姫をやりたかったら、まずプロムナードで自力でどれだけ方向転換してもポーズを崩さず足をあげたままにしないと。

 アラベスクの角度が低いオーロラ姫なんかオーロラ姫じゃない。しっかりあげて、顔もつける。それが王女の気品です。芸術だからね。

 私は観客としては美しいとため息をついて感心しますが、いざ自分で踊るとなると難しいと別の意味でのため息をつくばかりです。

 あこがれのパ・ド・ドゥ……しかしプロムナード一つとっても、観るだけなのと実際にやるのとはまったくもって違うものです。







以下はローズアダージョのおすすめ動画です。you tube より。

ウクライナ出身のスヴェトラーナ・ザハロワさんが踊ります。いわゆる四人の王子とのプロムナードは六分以降に出てきます。そこがローズアダージョのクライマックスになります。興味を持たれた方はぜひ。

↓ ↓ ↓


https://www.youtube.com/watch?v=JTkIyYMP27c

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