第75話・お尻をもっと締めて、膝をもっと中に入れなさい → ワケワカラン
先日、私は厳しめの先生に本気の厳しいチェックを入れてもらいました。厳しいチェックを、というのは自分からお願いしたのです。予想通り、一度も褒めてもらえませんでした。
まず、基本の姿勢から。お尻をもっと締めてくださいのダメ出し。
私はこれで締めているつもりです……が、まだダメ、もっと締まるはずですと首を振られる。それで思い切りぎゅうううっとしめると今度は足が動かせない。どうも全体でお尻を締めすぎてもいけないらしい。先生のおっしゃる締め加減がまったくわからない。
何度やってもダメ。できたと思えば、「肩と背中のラインが曲がりました。締めると同時にラインも整えるものです」 とまたダメ出し。指摘されれば指摘されるほど、できなくてまた同じダメ出し。くそー……。
お教室を経営され、何人もの生徒をコンクールに送り出す先生にとっては私は全くダメな生徒らしい。最初から最後まで「OK」のサインはもらえずじまいでした。大人バレエの指導もされている先生から、本気でチェックされるとこんな体たらくな私。
帰宅後、もやもやしてお尻をもっと締めるけれど、全体にがちがちはいけなくてお尻の底の方を締めることを意識してストレッチしてみます。くそー……まだわからん……。余計にわからん。
お尻全体を撫でられるよりも下部の方だったので膣を締めろということだなとは思います。肛門じゃないのか、とおっしゃる人もあるでしょうが、その先生からはその表現はなかった。お尻の底の方の言い方ではなく、観念的な言い方でしたので、説明しがたい、感覚でとらえないといけないことなのだろうと思います。
ちなみに日本舞踊で膣部分を締める時には「おそそを締める」 というらしいですが(昔の某家元さんのインタヴュー記事による)それができてないと日本舞踊にならないらしい。もしかしなくてもバレエにも似たようなことがいえるのでしょう。
また海外のバレエ団でボーイズクラスで薄い紙をお尻にはさませて、そのままで踊らせるという話を聞いたことがあります。つまりお尻の割れ目で紙をはさんだまま踊り、紙を落とすとアウト。ど根性モノの小説みたいな話ですが、それも同じようなことかもしれません。
プロダンサーは踊っているときはお尻がぎゅっと締まっていますからね。
男性は女性のようにチュチュなどでお尻を隠すことはないので、見た目が女性以上にすぐにわかって厳しいはずです。お尻が本当に徹頭徹尾締まっていて、腰の外側部分に笑窪がある人も。でも出ている部分は柔らかそうです。口では説明しがたくとも、彼らは先生のおっしゃるお尻を締める感覚を取得しているのです。
私は男性も女性もお尻をさわらせてもらったことはさすがにないのですが、先生に自分のお尻がさわられて目の前で何度も首を振られるとツラいものがありました。全くできてないってことです。
あとは膝。大事な膝。
膝が中に完全にはいっていず、またパとパの間に何かの拍子で膝が緩むのでお尻が抜けてみっともないようです。振付を追いかけるあまりに膝が緩むのは別の先生からも指摘されていますので私の欠点、あわてモノ、怠けモノの現れでしょう。無意識でやっているので余計に難しいです。
ここで膝が緩む話ですが、バレエでは膝はまっすぐではなく、普通に出ている方向とは逆に膝を中に入れるのです。無理やりではなく、何年もかけて。ストレッチもきちんとして外旋して足の可動域を広げるためです。大人バレエと子供からのバレエとの決定的な違いがここからきています。大人からバレエをすると足の可動域が広がりにくい。
私は子供から組ではありますものの、体型もバレエ向きではなかったし、バレエそのものがわかっていないままここまで来てしまいました。楽しく踊れたらもうそれでいいや、トシだしね~、と思うアキラメ自分と、このトシまで来たからにはもうちょっと上手になるべく極めたいものだわと思うイケイケ自分がせめぎ合っています。
バレエは楽しいですが、本気でやると道は相当険しいとつくづく思いました。




