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第62話・ある著名な先生のバレエレッスン……へたれバレエ忘備録その2

 少し前の話。某バレエ団の団員も参加するレッスンに縁があって潜入? できました。ある主宰者先生がある先生を招聘され、そこで特別レッスンをするということで告知があったのです。やりたがりの私はさっそく申し込みました。HPに掲載されたってことはですね、私でも大丈夫ですよね? と匿名で受付に電話をして念を入れるヘタレぶり。その後、とりあえず申し込みました。

 そこも上手な人が集うレッスンなので、それも楽しみの一つです。

 どういうエライ先生でも教えることはバレエ一つ。全世界共通事項があるのは知っている。しかしその中でも何か先生独特のエッセンスというものがあって、私はそれが見たいのです。先生の独特の癖というか、先生の習得する極意とかいうのが、先生それぞれなので、それを見るのが楽しいということもあります。

 頭の方は納得できても、身体が動かず肝心の踊りが上手にはなれないけれど……バレエに関する鑑識眼がより確実に養えると思ってもいます。

 

 早めに来て着替え、さりげなく上手そうな人の横に頭を下げつつ腰を下ろして自己ストレッチをします。

 さあ、先生が来ました。なんと通訳付きです。先生のおっしゃることをより深く理解できるようにという配慮でしょう。本格的です!

 通常、日本語を話さない外国人の先生のレッスンは、先生の身振りで指示や注意を推測するしかないのです。だがここは日本だし、招聘された先生だから通訳付き、すごい贅沢だわ、と最初から感動します。

 先生はニコニコ顔です。皆さんもニコニコ。

 HPに掲載されていたお顔よりもずいぶん老けていらしたけど、それ故か自ら身体を翻して踊ったりはされなかった。しかし、一通り踊ると恐れ多くも? 団員様に向かってちゃんと足五番にしたまま回るようにと、基礎の基礎、当然のご注意。

 私なんか足五番どころか、二番と三番のあいのこ、ナナメ上から回って三番と四番のあいのこの足で着地ですよ。プロからご覧になったら、私はもう論外です。だから逆に注意をされない。バレエレッスンの場合は一般的な常識とは逆で、すぐ直せそうな人、今度の伸びしろがある人にだけ注意が行く、ということがよくあるのです。

 そういうところに紛れ込んだ私でも楽しめるのは、プロ集団ともなると私ごときの踊りなんか誰も注視しないから。

 難しいなあと思いつつも、前や後ろにいらっしゃる人をお手本にしてよたよたと踊ります。


 上手は下手の手本なり、

 下手は上手の手本なり。


 世阿弥の言葉だったか……レッスンの合間に言葉がふっと浮かびあがり、なるほどと深く頷く私。私は、そんなことばかり考えるので一向に上達しないのかも。

 バーなら「バレエもどき」でいけますが、センターになるともう傍観者です。アレグロ早すぎる……ターンも最速。


 センターレッスンにこそ、団員の優劣と力関係が明確にわかる。皆さん素晴らしいです。なんなくついていっていますが、ここでも気になるダンサーさんが出てきます。どうしてあの人ばかり、目が行ってしまうのか? これが相性ってやつでしょうか。

 淡々とこなせる人もいますが、同じ踊りでもクセというか個性があって、グランジャンプの着地に難ありのダンサーでも、妙に人目をひいたりもする。逆に上手だけど、どうも華がないというダンサーもアリですね。観客とプロの温度差というか、まさに人の気配というか。人気……不思議としかいいようがないのですが。途中で傍観者となり果てたヘタレババアリーナの私は、これまた余計なことを考えつつダンサーたちを見ておりました。


 レディーファーストなので女性陣が踊った後は男性陣です。皆プロもしくはプロハダシなので、陣形もこなれたもの。男性が三名ずつパートを組みます。この時は鏡前面から見て逆三角形の陣形。

 曲や踊りの内容によっては、前陣三名、後陣二名で。

 適度に空間を利用して、時には、ばらけて、レッスン場を目いっぱい使って踊ります。上手な男性が団体の陣形を崩さずセンターで踊ると迫力がありますね。皆背筋まっすぐ、最低五回はピルエット。すごーい。見惚れてしまいました。

 しかし着地がイマイチ決まってないと、何度もやり直しさせる先生。指摘を受けたその男性は、真剣な顔でやり直す。通訳の先生も真剣です。どうやら最初の腕の力加減が悪いみたい……四回ぐらいやり直しさせて、まあ及第点でしょう。というような顔で、次をすすめる先生。

 思うような動きができず、照れ笑いをする人、悔しそうな人、皆真剣な顔でポーズをチェックします。どういうプロの人でも、これでいいやと言えぬのがバレエの道。

 参加させていただいて本当によかったと思います。ありがとうございます。

 難しいセンターの振りつけはもう全部きれいさっぱり忘れてしまっています。が、あのわくわく感が忘れられない。今度は舞台を見に行きますですよ!






 

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