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第61話・初めてのソロ・ヴァリエーション……へたれバレエ忘備録その1

 今公募メインで動いているため、こちらへの更新は久しぶりです。でもアクセスを見ると、どなたかが閲覧してくださっています。ありがとうございます。バレエは細々とながら続けています。(もし私が将来何かのベストセラーを出せたらバレエ劇場や映画を作るのが夢です……)


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 少し前の話。

 某バレエ教室に行った時の話をしましょう。それは、本当にたまたま、だったのです。

 その日は◎◎(台風、人身事故、スト、地震などの理由)のため、◎◎線が運休中でした。私はその◎◎線は利用しないので行くことができたのです。

 レッスン場に入ると各々ストレッチをしながら、誰それさんは◎◎線沿いの人だから今日はレッスンに来れない、などという話をされていました。それでいつもより、生徒数が少なかったのです。

 少ない生徒数なので、レッスン場が広々と使えました。いつもよりよく見ていただけたと思います。

 さて、レッスンのラスト。

 先生の思い付きで、締めくくりに一人一曲ずつヴァリエーションを踊りましょうということになりました。私以外の常連さんは「うわー」「一人でぇ?」「緊張するわねえ」と言いながらも、なぜかうれしそうです。

 私は真っ青。

 私はヴァリエーションレッスンには参加したことはありますが、舞台のみならず、レッスン場でも一人だけで踊りきったことはない。ヴァリエーションを踊ろうと思ったら、もっと踊りこまないといけないでしょう。 

 ヴァリエーションっていってもたった一分です。いや、一分あるかないかでしょう。コンクールでもそうですが、舞台から出てきてあいさつ、一曲とおして踊ってからまたあいさつ。そして退場なので出番というと二分もないでしょう。いつも笑顔の先生は、たま~にしか来ない私の顔を見て「そっちもダイジョブよね、踊れますよね」とダメ出し。

 先生の気遣い? か一番最後の方にしてもらいました。(曲を書くと身バレするため書きません)


 私はどうにでもなれと覚悟を決めました。この経験は、ソロですら声をかけられたことのない私へのレクイエムかもしれません。バレエの神様のご配慮か、それとも悪魔の意地悪か、笑い神様のたくらみか……いや、バレエの神様のご配慮でしょう、何事も経験! と覚悟を決めました。

 短くて優しいゆっくりめの曲で複雑なピルエットなしのにしました。元気に飛び跳ねるには私はもう若くないですし……へたれと言われようが、なるべくリスクは避けたいし、レッスン場だけのソロで少人数の生徒同士とはいえやっぱり上手に踊れるなら踊りたい。

 短い時間で悶々と過ごす私。最初は常連の上手さんから。一人終わるごとに皆で健闘を称えて拍手します。私も笑顔で拍手しながらも、心の中は振付の確認です。あれはこうで、それはこうで、どれがあれだっけ、左だったっけ、と考えておりました。

 バッセ一つでも前だっけ、後ろだっけとか。もう顔のつけ方はどうでもよい。まずは足です。足さえいけるならば、手も動かします。しかし足が怪しいなら足優先。手と顔、首はこの際もうどうでもよい。そこまで覚悟を決めるのです。私は急に主役をもらったバレリーナ気分です。しかし ババアと言われる年齢ではドラマにも何もなりやしません。自分だけの、ちょっとしたプチ修羅場です。


 一人一分ならすぐに出番がきます。私の出番です。踊り始めるとすぐ、もう、すぐ、なんですよ。

 先生は私が棒立ちになりかけるといち早く状況を察して、さっと手振り足振りをされたのでなんとか。大きな鏡の前にいるが、自分の姿なんか見るヒマなんかありません。先生の一秒先の振りを注視して脳内で振り移して、これは三往復だったよな、よし、という感じでした。

 最後舞台奥から斜めラインでピケピケしていくのですが、音がずれてしまい、しかし曲は止められないし、私の体もそれ以上に止められない。ズレズレのままでラストへGO、ジャーン。音が終わってからその余韻を利用してズレズレのハイポーズ。最後はどうでもいいや、と、やけくそでした。

 私のその日のハイライトでした。その一分が。確かに。

 そしてそんな私にも、後ろで見ていた生徒さんから暖かい拍手が!

 えー、私にも拍手をくれたー、

 なんということはない。お互いさまなんですけどね。

 その瞬間、私は不覚にも泣きそうになりました。目頭が自動的に熱くなっているのです! 自分の意志でもないのに! たかがレッスン後の内輪なミニ発表会なのに! 私は愕然としてそんな自分を恥じました。結果的には私は無事? 涙を流さずにすんだのですが……己のバレエに関する「承認欲求」が強いのではないかと少々悩むことに……。


 このエッセイは、誰も知らない。だからこそ書きたい放題です。ソロもパドドゥも踊りたいわね、いずれはねえ、と私を知る人からはあきれたり、怒られるだろうと思いつつも、確かに書きました、ハイ。

 けど、いざソロを踊るとなれば、非公式の内々のソロであってもこんな体たらくです。自分が納得いく踊りはできてないのは先生はわかっておられるし、生徒も全員大人なので、お互いさま。なのでわかっている。

 だけどお互い同士の拍手とはいえ、皆の暖かい拍手と笑顔が私の心に沁みたのです。本当に感動しました。


 それで、どうなったか。

 ……バレエ熱がまたあがることになりましたよ、ええ。

 あのヴァリエーション、また生徒数が少ないとかで、やることになったら前回よりも進歩したと自分でも思いたいのでがんばります。

 先生の目論見がそれならば、見事にはまりました。

 これも目先が変わった楽しいレッスンでした。






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