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第59話・舞台写真を買うとき買わないとき

 私はここ数年発表会には出てないが、先日発表会に出た人達が固まってわあわあ言っている。輪の中心には数冊のファイルがあった。何をしているかすぐにわかった。発表会の舞台写真が出来上がったのだ。

 発表会に出たことのある人はわかると思いますが、楽屋入りするどこからともなく、写真屋さんが現れます。そして頼まなくとも写真を撮ってくれます。

 楽屋でもどこでも撮ってくれる。視線があっただけでぱっと撮られた人もいた。

 舞台に上がると踊っているシーンを撮ってくれる。発表会中、観客はカメラ撮影は禁止だがプロの写真屋さんはOKだ。しかもいい場所から良いシーンを撮ってくれる。プロだから映し方は上手だ。それはもういたれりつくせりだ。

 そして発表会が終わった後、写真屋さんは撮った写真を一覧にして番号を割り振り、私たちはその見本を見て希望枚数と名前を書き入れる。そしてお金を添えて先生か受付の人に渡しておく。

 私の子供の時からだ。それは全然変わってない。

 今はネットでアクセスして○○バレエ教室の皆さんはこちらのパスワードでアクセスしてネットで注文するというやり方もあるらしいが、画像一覧を数冊に分けたファイルにして皆で閲覧できるというのは何というか楽しいのだ。


 緊張しつつも晴れがましい、そしてうれしくもある発表会。化粧で失敗した、あそこのポーズを忘れた、もっと足があがるはずだったのにずっこけたとか悲喜こもごもですが、それはまた次の発表会に生かしましょう。

 その後のお楽しみが舞台写真選び。

 いざ写真を選ぶときにはもちろん、どれが一番自分が美しく撮られているか厳重にチェックして購入する。ソロで出してもらえた人は当たり前に舞台で一人で踊っているシーンがある。キメのポーズが決まっていて気に入ったら大きく引き伸ばしてパネルにできる。すごく良い思い出になる。

 私は若い時から下手だったのでソロ写真は一枚もない。皆誰かと一緒に写っています。その辺がとても羨ましかったりします。


 群舞コールドでも厳選します。プロの写真屋さんが撮ってくれるから写真としての質はもちろんいいです。問題は踊る私たちのポーズにあるのです。コールドなのに見事に手足が揃ってなかったりします。

 出だしで私が一番先に舞台上手から出た奇跡の一枚がありましたが、私は足が四十五の角度でアラベスクをしているが、すぐ後ろの人が九十度、その後ろが二十度ぐらいだ。出だしなので九十度のアラベスクをしてから四番通してポーズだったはず。この瞬間ならば誰かの音取りが早すぎたか遅すぎたか。つまり私のいたパートは私も含めてダメダメコールド。

「うーん、全く揃ってないねえ」

 と皆で絶句したことを覚えています。写真は寸止めでそのシーンを切り取ってくれますのでね、改めてその欠点を客観的に見ることができます。私たちはページを繰っては再度絶句します。

 DVDだとささーと終わるが静止した写真になると、こんなにばらばらだった! とか。

 舞台が終わった後、皆で終わったねえ、よい舞台だったねえ、と手を取り合って喜んだあの感動はいずこに、反省しきりということですね。

 先生がお呼びしたゲストが見事なポーズをとっているところにまるで背後霊のように、もわーんと団体で映っている写真もパスです。写真屋さんには悪いですが買いません。

 楽屋でのお気楽な写真でも厳選します。舞台メークをしているにもかかわらず気に入った写真よりも気に入らない写真がすごく多いので悲しいです。元の素地が悪いので仕方ないです。

「私が買いたい私の美しい写真がないから買わない。写真屋さんの腕が悪いから仕方ないわよね」 と言い放ったつわものもいますし、写真屋さんも大変ですねと言いたいです。私は写真屋さんにインタヴューしたことはないのですが、子どもバレエ発表会よりも大人バレエ発表会は一日張り付いて写真をたくさん撮ったわりには、売り上げが非常に悪いのではないかと思いますがいかがでしょうか……。

 でも発表会の最後に舞台上で皆さんとの集合写真は大事な宝物にしています。皆も買ったのではないかな。思い出になりますよ。

 

 数少ない読者の皆様へ私からのアドバイスです。

 先生からソロを踊ってみない? と言われたら迷わず「ハイって言った方がいい」 ですよ。多少の失敗はあってもプロでないから当然です。舞台写真屋さんが来たら何も言わなくても、たくさん取ってくれますからその中から厳選して購入したらいいですよ。うんと気に入ったのがあったら舞台写真でパネルにしたり大きく引き伸ばした写真を買った方がいいですよ。

 現在ピッチピチ(←これも死語) のあなたでもいつか年老いてポワント履けなくなった時にしみじみとその写真を見る機会、DVDを見る時間が増えるでしょう。

 老後の楽しみになりますですよ、多分……。

 発表会は楽しいですよね。後日写真であからさまに判明する出来栄えのひどさに目を覆いつつも、あの時の感動をかみしめるのです。

 しかし全然上達しないんだわ……私は。









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