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第54話・あるレッスン後の私的なつぶやき

 やっと最近、自分の身体と対話しながら踊るということを覚えました。昔のように勢いにまかせて踊りまくるということもなく、自重しつつ細々とレッスンを続けています。レッスン前にゆっくりストレッチするのですが、心の中で、ここ、大丈夫だよね、うんうん、大丈夫といいつつレッスンに臨みます。

 ……どうして私がこんなになってしまったのか。

 

 先日ほぼ徹夜明けの日、せっかく来たのだからと頑張って踊っていたら急に目の前が暗くなりもう少しで倒れそうになるという経験をしました。そこはオープンクラスで私のことは誰も知らないし、ここで倒れると先生やほかの生徒たちにどんなに迷惑をかけるか、連絡先も知らせてないところなのにと踏ん張りました。例の意地悪な人もいるところですし、後から何を言われるかも明白です。絶対に倒れるものかと根性で踊り切りました。

 私は若い時は体力が有り余っていて激務の当直もこなし一睡もしていない状態でも踊っても平気だったのですが、そうはいかなくなったということです。こればかりはじたばたしても始まりません。老化現象は顔のしみ、しわから音もなくそして容赦なく知らしめてきますが、この経験で身体の奥底からトシ考えて踊れと言われたようでした。


 どれだけへたでも踊りたいという思いだけでは踊れなくなったということです。マイペースで踊るという意味ではなく、突発的な病気で踊るということすらできなくなる事態になったらどうするの、ということです。この事実に直面して能天気な私は愕然としました。

 とりあえず睡眠時間は必ず確保すること、ちょっとでも体調が悪いと感じたら無理せずレッスンを見送るということに決めましたがちょっとさみしいものがあります。ああ、こうして私は年を取るのね……やだと思っても仕方がありません。だからトシの割に元気ですね、が老人への一般的なほめ言葉になるのだろうなあ……私は決してどのような人にもそういうセリフは言いませんし言ったことはありませんけど。

 

 六十や七十ぐらいの人でもバレエを続けている人を見ていれば彼女たちは決して無理はしない。海外のオープンクラスではそれが特に顕著でバーなしのセンターレッスンになると連れ立ってサンキューと手を振って帰っていったり。

 要は、自分はここまでしか踊りません、と決めておられるのだ。後に残っているのは最後までするのが当然という若い人や、まだ下手だけど上手になりたいからやりますという人、もちろんそれが当たり前です。そしてせっかく来たのだから最後まで受講しよう根性で居残る私です。だが倒れてしまうとその根性も美徳ではないですしね……高齢や若くても持病有でもバレエを楽しむ人たちを見習って細々と続けていきたいと思っています。それも自己鍛錬の一つだと、そう思えるようにもなってきました。


 逆に余命年齢が豊富にある幼い子供はそうはいきません。バレエはつきつめれば奥が深く、ちゃんと踊りたければ基礎を柔軟をとなります。最初が肝心なので趣味としてではなくどうせやるなら上手に、と望む親はバレエ教室選びも慎重です。

 バレエは子供からしないといけないというのはそういう意味です。他人からも舞踊として鑑賞に値する踊りを踊るならば、ということ。

 対して大人バレエは逆です。まず他人から見られることを想定せず踊る楽しさを味わいたい、ちょっとうまくなれば欲が出てきて難しいクラスを、発表会をとなります。できる人はパ・ド・ドゥを目指すとか。いいですね、そういうのも。

 でも私の場合こういうことがあったので、今後もっと後ろに一歩引いてより隅っこで踊るようにしました。どれだけバカにされてもいいので、踊りたいということです。やっぱり私はバカですね。いいのよ、バカはバカのままで……とまたまた開き直る私です。






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