第5話・ポワントのひもが切れました。
ポワント = トウシューズ です。お教室によって言い方が違いますが同じです。
バーで足ならしをしたあとは、◎曜日だと、楽しい? ポワントレッスンになります。
まずバーの下にあぐらをどっかりかいて座ります。そしてタオルを取り出して汗を拭く。それからおもむろにバーの足元に置いておいた、トウシューズ入れからポワントとトウクッションをひきずり出します。
ポワントレッスンがある日のタイツは穴あきです。足の指をだしてトウクッションをあてて、またタイツを元に戻します。それからゴムをくぐらせてポワントをはきます。
その日、その時から足に違和感がありました。なんだろな?? と思いつつ普通にいつも通りにひもをバッテンにして足首に巻きます。
くっくっ、とひもを調節してからあちゃー、と私は思いました。ひもが切れかけていたのです。でも完全には切れていません。かかとのゴム紐だけではちょっと危ないかもと思いつつそのままポワントにしてバーで足ならしをします。
プリエ、ルルベ、足1番から2番、そして4番…。すると完全にひもが切れてひらひらとしてきました。
やっぱりポワントはひもは飾りではないのです。実用品なのです。足首を酷使するということはひももちゃんと働いてくれるのです。弱っていたヒモはとうとうポワントからさようなら…、私の太い足首からさようなら…してしまいました。
もう1つのひもは健気にがんばっていましたが私はとうとうリタイア、しました。そう片ひもだけでは怖くてトウで立てないのです。気になって踊りどころじゃない。だからポワントを脱いでバレーシューズに戻りました。そう、ポワント降板です。以前は足のマメが痛くてポワントをやめましたが、今回はヒモが切れたのでやめました。どっちもプロならあってはならないことです。私がアホなんです。
日本製のポワントではヒモは購入時からちゃんとついていることもあるけど、グリシコなどは自分でオリジナルでつけないといけません。足は1人1人違うし、ひもの位置の好みも人によって違います。そう、みんな履きやすいポワントにするにもそれぞれオリジナルで改良するのです。
だけど私は針仕事は本当は苦痛です。ポワントのゴム付け、ヒモ付けですら、誰かにつけてほしいくらいです。子供のころはチャコット製しか知らなかったのでヒモなんかつけたことなかった。発表会前のお衣装のホックつけとかは全部親がしてくれたし。
だけどこんな年になってしまっては誰もしてくれません。ひもの位置には私はこだわりがないので、ま、こんなもんだろうと適当につけています。今回ひもの付け方が浅かったんだよね?
幸い誰も気づかない段階でバレエシューズに履き換えたので(先生はすごい目が利くのでわかっておられたと思います) 足には事なきをえましたが、私はこうだからダメなんだろうなってちょっと落ち込みました。
帰宅してからきっちり 根元からちくちくと仕上げ最後にバッテンをかけて絶対にはずれないようにしました。ポワントの外側からひもを縫いつけてる人もいらっしゃいますが、何となく気がむかなくて私は絶対に外からひもの付け根が見えないようにしてしまいます。自他ともに認める針仕事の嫌いな女はポワントの針後も整然としてなくてぐちゃぐちゃです。
だけど実利主義者の(大雑把ともいう)私はこれでよし、としてポワントのひもをぐるぐると巻いてバッグに入れてしまいます。
そう、私は「ローストビーフ式でポワントはぐるぐる巻きで仕舞う派」 なのでそうやってしまいます。きちーんとしている人はひもすら丁寧に折りたたんでポワントの底に丁寧にかっちりおさめます。だからしまうのにも時間がかかります。
こうすべきだというのはないのですが、こうして何事にも丁寧にモノを扱う人を女性らしいな、繊細だなあってつくづく思います。




