第15話・妄想バレエレッスン
以下は本気にしないでくださいませ、それと怒らないこと。
今回はジョークバレエエッセイなのです。
あー、遅刻遅刻!
遅刻しそう! うん、間にあったかー、
レッスン開始まであと3分、大急ぎでストレッチをする。
定刻きっちり先生が入室された。
今日の先生はあのルジマートフ大先生!
間髪いれずにバレエピアニストが最初のプリエの音楽を弾く。
私はドゥミから入りバーをつかんでグランプリエをする。
ゆっくり、ゆっくり、ていねいに…手先にも神経をつかってていねーいに。
あ、ルジマートフ先生がこっちにくる。
ステキな先生♡
もちろん元プロで元ソリスト、今は期間限定で日本に来てくれて私のいつもいる教室にレッスンをつけにきてくれるのだ。
男性のバレエダンサーはやっぱり教え方がダイナミックでそして女性にソフトでやさしい。やっぱり王子様、なのだ。
私のアンオーにあげた手を少しそえて、もう片方の手はグランプリにかけた私の肩にかかった。
「肩、ヤワラカーク」
「は、はい」
私は年甲斐もなく赤くなった。
おおっ、しょっぱなから声かけられちゃいました、今日もレッスンがんばるぞーい。
先生から声掛けがあるのとないのとではやる気もまるで違ってくる、今日はやる気満々になってきたぞーい。
リンバリングではアラセゴンドにした足の角度を変えられ、ついでにという感じで上体をバーにかけた足に倒す時に腰に手をそえてぐっと押してくれた。
おおっ、先生が私の腰に手をそえてくれた。私の腰もまたいつもよりやわらかーく、とけるようになって私のバーにかけた足先と頭がぴったりついた。
多少痛くてつらい姿勢でも先生が「ハーイ、いいですよー、じっとコノママー」とおっしゃったので私は心の中で「うぐぐ…」とうめきながらもポーカーフェイスで優雅に上体を倒す。
この間、たったの3秒もないだろうけど、音楽がかかって上体を起こしたときはほんとホッとする。先生もあっちへいってくれたし。やれやれ。
次にアラベスクの姿勢になって足を後ろ方向にバーにかける。この姿勢はとてもつらい。いや私がストレッチをさぼるため身体が堅いのだ。自分が悪いのだ。
なんとかこなして今度はパンシェになる。
またまた先生がこっちへ来られた。私のかかとをシューズごとぐっとつかんで「足、もっとタカクー」と言って動かした。私は前につんのめりそうになりつつももう片方の足で踏ん張る。ど根性出すンだぜ、私 !
今日は何度も先生に注意されてラッキー ♡
体はへろへろになりつつもバーをみんなで片付け今度はセンター。
あれ、みんな帰った、なんで?
「デートだよ、待ち合わせ」
「これからニューヨークに行く」
「エステの予約がある」
「子供のお誕生日なの」
「合コンなの」
みんないろいろ理由を言いながら帰っていった。残ったのはなんと私1人!!
この先生とマンツーマンだ、どーしよう!
「生徒1人になりましたのでパ・ド・ドゥをメドレーでしましょう、足ポワントに変えて」
「うっわーーーーーーーっ」
こーいうのは初めてでうれしい!
はじめて先生とペアをくんで踊ったのにさくさくと踊れる。
不思議なことに背景も何もない、いつもの見あきた? バレエレッスン場ではなく天井高くまるでオペラ座のように豪華なレッスン場になっているではないか !
舞台奥にはエルミタージュ美術館のようにどっしりとした重厚な絵が何枚もかかり上には豪華なシャンデリア、前には全面鏡で私はいつの間にか豪華なチュチュをきて先生は王子様になっている。
おまけに私は絶対に間違えないで踊っているではないか!
間違えずに踊れるってなんて楽しいのだろう、アラベスクは高く、ピルエットは早く正確に。顔の付け方も手も足も角度がまるで精密機械のようにきちんきちんとしているではないか。
夢中で踊っていたらルジマートフが「あなたは今までペアを組んでいたどのバレリーナよりも上手で美しい」とささやいてくれる。
うそー…
「さあ見せ場だよ、フェッテ、ダブルトリプル入れて!! 」
「はいっ」
完璧なフェッテを見せる。先生から熱心な拍手をいただいた。
「ブラーヴァ!! 」
「先生、ありがとうございますっ」
「さあ、今度は海賊のパ・ド・ドゥを」
「もちろんです、やりましょう、やりましょう」
「今晩は一晩踊り明かそう、古典バレエメドレーを心行くまで踊りましょう! 」
なーんて。以上妄想バレエでした…すみませんでした。数少ない読者様の貴重な時間を奪ってしまい深くお詫びいたします。
そして少しでもその妄想に近づくべく精進いたしますです。誰も期待はしていなくとも…。
それでは…。(書き逃げ!! )