第12話・足の運びの大切さ ☆
クラシック・バレエにはどんなアクロバット的なマイムではあっても、絶対にくずせないルールと言うのが存在しています。
最初の最初に足の型から入るが、まずは足の一番、そして二番、四番そして五番。(三番も一応あるけどあまり重要視されてない)
足の運びだけをスローモーションでバレエを観ていると床に両足がついている場合は絶対に先にあげた型番の足になっている。これは厳としたルールなのだ。
「足五番きっちり入れて、きっちり、ちゃんと」
「足一番とおしてから前へ」
「四番にしてからルルベ、それからドゥミプリエして一気にダブルして」
もうこんな感じ。バレエを少しでもかじった人ならこの足の型がわかってないとレッスンが成り立たないのがわかると思う。第一バレエにならない。
だからまったくの初心者とどれだけ熟練したプロの人でもバーレッスンはみんな一緒なのだ。やること一緒。基礎は一緒。
かくしてクラシックバレエレッスンは全くズブの素人とプロバリバリの人との一緒のレッスンが成立する。
センターレッスンになるとさすがに技術に差がでてきすぎるので、別に分けて踊らされるけどそれは当然だと思う。
上級者は床と空間の使い方にまで気をつかって大きく広く踊るけど、初心者はとにかく振り付けについていくだけで精いっぱい。だからある程度のクラス分けがあるのだ。
足の運び一つでバレエじゃなくなることもあるし、気を抜けて型からはずれるとおかしくみえるのがクラシックバレエ、だから古典は怖いのだ。
番外編的な扱いをうけているのが六番。いわゆる揃え足ね。ポワント履いた時に最初にするのがコレ、個人的にはゼロ番でいいのじゃないかと思うけど六番。わりとコンテンポラリーではみかけるけどクラシックではあまりない。
つまりバレエは着地の足の置き場所はたった五種類しかないことになる。いや三番もないのと一緒なので四種類かな、なんて厳しいルールなのだろう。
だけどそれが基礎の基礎で手足の動きはそれこそたくさんあるので、そこからのルールも踏まえたうえで個性というのが出現する。バレリーナ、ソリスト、プリマの個性です。
ああ、なんてバレエってステキなんだろう、うっとり…。
それから何度でも書くけど「軸」。それもそろわないとどんなに正確に足を五番にしても軸がないとバレエにならない。
おなかしめて背筋伸ばして肩に力入れずに柔らかく落として、首筋まっすぐ。重力に逆らって……書くとどれだけ時間があっても書き足らないほどそういうルールが存在している。それがバレエ。
先日うちのチビコのバーレッスンであんまり軸がぐらぐらで、先生からダメだしされた。自信がまるでなさそうなチビコ、それが身体全体ににじみでている。
「違うの、チビコちゃん、さあもう一度足五番にしてルルベ。そうそう……肩あげないで」
やおら先生はチビコの足元にしゃがみこんでお腹と背中をぐっと両手で押さえこまれた。それで上へ上へとぐいぐいあげられる。先生の期待にこたえようと顔を真っ赤にして両手をアンオーにしてルルベし続けるチビコ。
あれ、先生の力の方がまさっていて、なんとチビコの身体ごと持ちあがってしまった。
「わかった? チビコちゃん、わかった? こーいうふうに上へ上へとイシキしてね!」
無言でこくこくとうなづくチビコ。先生~我が娘のチビコ、身体ごと空中にいますけど。
別の子が今度はアラベスクで同じことをやられた。先生は見かけと違って力持ちなので小さいコならぐっと持ちあがってしまうのだ。
アラベスクでこれをやられると息をするのも苦しいらしく、せっかく持ち上げてもらったのに、軸足がするめみたいに丸まってしまった。
「ダメじゃないのっ、足はいつでもまっすぐよっ! おひざ、まっすぐっ!」
先生はその子の身体を持ち上げながら、すっと片足をあげて(元プロバレリーナだからそういう技が可能なのだ) アイロンをあてるみたいに縮こまった軸足をのばしてあげていた。
「足っ、アシッ! 外側に向けて、アラベスクなのに六番にしてどーすんのよっ。片足だけでも軸足はいつでも一番の足よっ、違うってば」
とまた片足で小さい生徒の足をぐいっと矯正。
先生も大変だ……ホント。