星に向かって
中3の2月の始め。
この時期はクラスや学年のみんながライバルだ。必死に勉強して、誰か必ず落とされるテストを受ける。その誰かにならないようにみんな日々勉強に励んでいる。僕もその中の一人だ。毎日毎日、夜遅くまで勉強をしていた。
しかし、勉強をしているなかで僕はあることに気がついた。それは何のために勉強をしているのかということ。
もちろん、高校に行くためかもしれない。だけど、周りのみんな一人一人には夢がある。
美容師になりたい!
スポーツ選手になりたい!
教師になりたい!
とか自分の目指すべきものがある。それに比べて僕には夢どころかやってみたいことさえない。なのに何で僕は勉強をしているのか。
この疑問が出てきてから僕の勉強ははかどらなくなってしまった。
さすがに勉強しないと厳しい。でも、いざペンを持って勉強をしようとすると心に穴が開いたような感じになる。そんな日々が僕を襲っていた。
受験まで2週間もない。そんなある日の夜に電話がかかってきた。
「もしもし?」
と僕。
「あっ、もしもし?元気か?」
と電話の相手が言ってくる。この声は
「兄ちゃん。」
兄ちゃんは今、大学生で他の県で自分の夢に向かって頑張っている。
「おう。久しぶりだな。最近、勉強はどうだい?」
僕は黙ってしまった。
「やっぱり進んでないようだな。」
兄ちゃんは僕のことを見透かしたように言った。そして
「お前、俺が中3の時行った夏のキャンプ覚えているか?」
突然の話に僕はビックリしてしまった。
「え?キャンプ?」
「あぁ、そうだよ。あの時、俺はお前みたいに夢がなくてこれからどうやって進めばいいかわかんなかった。」
黙って兄ちゃんの話を聞く。
「その時、お前は星を眺めながら『兄ちゃん、僕はそんな焦らなくていいと思うよ。だって、夢ってこの星たちくらいにたくさんあるじゃん。そんなに1つの星を早く掴もうとすると後から後悔しちゃうよ?だから、もっとゆっくり考えて自分の本当にしたいものを見つけなよ。』ってな。」
「僕、そんなこと言ったっけ?」
「あぁ。それからお前の言葉がずっと心に残っていて夢について考えることができた。そして見つけることができた。」
だからと兄ちゃんは続けた。
「まだ、自分が本当にやりたいことが見つかるまで自分の手で探すんだ。」
この言葉は僕の心に響いた。そして僕のスイッチを押してくれた。
「兄ちゃん!」
「ん?」
「ありがとう!僕、頑張ってみる。後から大きな夢を見つけた時、みんなより近道できるようにちゃんと勉強するよ!」
「おう!夢は最後まで諦めるなよ!」
「うん!」
じゃあねと電話を置くと僕は外へ出た。
外はものすごく寒かったが星がよく見えた。
僕は星空に高く手を伸ばした。
きっとこの中に僕の夢があるんだ!
4月の入学式。
僕は新しい制服を着て校門の前に立っていた。桜は満開で綺麗だった。
僕はあの言葉を聞いたときから諦めずに勉強した。その結果、僕は志望校に合格できた。
僕はこれから自分の夢を見つけるんだ。
そして、この学校で新しい仲間と先生たちとともに自分のやりたいことに向かって頑張るんだ。
よし!いこう!
僕は新しい一歩を踏み出した。