馬鹿だよね
「綾って馬鹿だよね。」
そんな事をいきなり言われて、黙っていられるほど人間は出来ていない綾菜は、文句を言うために顔を上げた。
「だってさー、この家に生徒会会計がいるのに使わないんだよ。これを馬鹿と言わず何と言うのさ。」
「それは・・・。」
さっきまで文句を言おうとしていたが、図星を指されて何も言えなくなってしまった。
「どうせ、会計の仕事だろ。はい、貸して。」
「ちょっと!!」
「まだ他にも仕事あるんじゃない??」
「何で知ってんの!?」
これ以外の仕事がまだあるなんて、一言も言ってない綾菜は驚いた。
「1人でやってて、学校でも終わらない。話した時に顔も上げずにやっているってことは、それ以外にもまだあって、構ってられるほど暇じゃないんじゃないかって思って。あとは勘。だって、昔からためる癖あるじゃん、綾。」
「だてに17年も姉弟やってないってことね。それ宜しく。」
さっきまでやっていた仕事を祐那に任せ、もう1つの別の仕事を始めた。
それは、書類に目を通して判子を押す事。
一見簡単そうに見えるが、一枚一枚違う内容だから、全部に目を通して、内容を把握しとかないといけない。
駄目な場合は、判子を押さず、その内容の部活や委員会の人に話しを付けなくてはならないのだ。
一番面倒なのはこれだと思う。
ぐだぐだしてても終わるわけがない。
なのでさっさと片付けていくことにした。
「はぁー・・・やっと終わったぁー。」
先に終わったのは祐。
計算得意な彼にとって簡単なことだっただろう。
綺麗にプリントの縦と横の角を揃えてトントンと直していく。
「はい。」
私に出来上がったプリントを渡す。
「ありがとう。」
受け取ったプリントの中を見てみる。
どこも訂正がなかったらしく、渡した時のまんまだった。
「まだ終わんないの?」
「うん。・・・やっと半分いったぐらいかな。」
苦笑の私に対して少し呆れ顔の祐那は
「手伝おうか??」
と聞いてきたが
「私がやらないと駄目だから。」
と言って断った。
祐那も『一度始めた事は最後までやり通す。』と言う私の性格を分かっているのもあり、深くは追及してこなかった。
ただ
「無理だったら言えよ。」
とだけ言って自分の部屋に戻って行った。
私は
「うん、分かった。」
の一言を言って、自分の仕事を再開した。