1人でも大丈夫
『はい。』
「綾菜ですけれど・・・。」
『あぁ。』
薫は、着信画面で分かっていたのだろう。
驚きもせずに返事だけをした。
「あのメールは何?」
『見ての通りだが・・・分からないのか??』
微妙に馬鹿にされた言い方が癪に障ったが、平常心を保った。
「意味は分かるよ。なぜ休むのかを聞いているの!!」
『・・・用事があって。』
「何、その間。それって今日じゃなくちゃいけなかったの??」
『たぶん。』
「何でそんなに曖昧なの!?・・・もういいです!!それじゃ。」
『明日は行く。』
「もう二度と来なくていいです!!(怒)」
『おいっ!!』
薫はまだ何かを言っていたが、構わず無視して電話を切った。
(むかつく!!きっと友達と遊んでいるんだ。・・・あいつのことなんか忘れよう。)
腹立たしい気持ちを抑えて、職員室に戻ることにした。
「先生。生徒会長、休みだそうです。」
「そうか。2人だけれど時間大丈夫か?30分ぐらい余計にかかると思うが。」
「大丈夫です。私は用事が無いんで。」
『どっかの誰かさんと違って』と言いおうと思ったが、心の中でとどめておいた。
「やることは簡単。明後日の生徒会総会で使う冊子作りだ。ただ、決算報告書がまだだから、ホチキスで留めるのは明日になるんだが。」
「はい、分かりました。場所は「橘先生!!」
言いかけている途中で、別の先生に話を遮られた。
「お話中すみません。先生、お電話です。」
「悪い。ちょっと待っててな。」
橘先生は、席をはずした。
待っている中、また違う先生から声をかけられた。
「倉元姉、ちょっと頼まれてくれないか?」
私を倉元姉と呼ぶのはただ1人、祐那の担任の古武先生だ。
「いいですよ。なんですか??」
「これなんだが・・・。」
渡されたのは、会計の仕事の決算報告書。
「今忙しくて、明日の朝までに間に合いそうにないんだ。」
「分かりました。明日の朝持ってきます。」
「ありがとう。」
そう言い終わると、紙だけ私に渡して行ってしまった。
その後も、また違う先生に頼まれ事をして引き受けてしまった。
(・・・大丈夫かな(汗))
少し心配になりながらも橘先生を待っていると来た。
でも、さっきと様子が違う。
「遅くなって悪いな。」
「先生何かありました?」
「いや別に。」
「だって、そわそわしてますよ??」
疑問に思った事を口にした。
「いゃー・・・奥さん、子供が生まれるみたいで。」
「へぇー、子供が。・・・子供!?病院行かなくていいんですか??」
「だって、これあるし。」
見せたのは、生徒会総会の冊子。
「こんなの私1人で出来ます。先生は、病院に行ってあげてください。」
「でも「奥さん、1人じゃ心細いはずです。行ってあげてください。」
1度は渋い顔をしたが、決心したらしく
「行かせてもらうよ。・・・あっそうだ!!何かあったり、終わりそうになかったら電話頂戴。」
そういうと、メモ用紙に自分の携帯の番号をスラスラ書いていった。
「分かりました。それでは、失礼します。」
メモ用紙を受け取って職員室を出て行った。