ここは会社ではありません
桜も散って若葉が青々している5月。
新しい環境に慣れてきた頃である。
この例外な人物を抜いては・・・。
「おい、お茶。」
「・・・はい。」
「・・・まずい。」
(はっ!?・・・今入れたばっかりなのに)
ここは会社ではない。
ちゃんとした普通の学校で、生徒会室である。
お茶を持ってこさせた人物、それはこの学校を取り仕切っている生徒会長。
名前は如月 薫。
この女性みたいな名前の持ち主は、勉強できスポーツでき、しかも顔も良い。
そんな申し分ない彼を見る周りの目は、憧れの的。
ただ、性格は無愛想。余り周りの人と深く関らない。
でも、顔が良いとそんなことは関係ないらしい。
(信じらんない!!)
私、倉元 綾菜は、この人と中学校から同じで、しかもオール同じクラス。
しかも、生徒会でも一緒。
(はぁ・・・ついてない)
「お茶はこういう風に入れるんだよ!!」
薫はお手本で入れ方を教える。
薫は家で喫茶店を開いてる。
お母さんがそこのオーナー。
お父さんはたまに手伝う程度で、普段は会社員。
「ほら、飲んでみろ。」
渋々受け取る。
そして一口。
(・・・おいしい)
私と同じお茶を使ってるのに全然違う。
さすが喫茶店の息子なだけある。
「どうだ、おいしいだろ。」
「・・・うん。」
何もいい返せない自分が悔しい。
「お茶っていうのはこういうものを言うんだ。」
「それなら自分で作った方が早いじゃん。」
ボソッと言った私に
「おい、なんか言ったか?」
普通だったらこの問いに
「いいえ、なんでも。」
とか
「薫君のお茶がおいしいって言ったの。」
とかを返すだろう。
普通の女の子で、薫に少しでも良く見られたい女の子なら。
だが私は違う。
薫のライバルだから。
あいつはどう思っているか分からないが、私から見るとなんでも簡単にやり遂げてしまう嫌味ったらしい腐れ縁。
だからはっきり言ってやろうとした時
「3年7組如月、同じく3年7組倉元、至急大会議室に来るように。生徒会総会の事前の集まりがある。」
と、先生から放送が入った。
これには従うしかない。
2人と言うのは気に入らなかったが、一緒に大会議室へ向かった。