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第7話:お人形遊び

ルナの前に現れたのは、森の暴君とも言える巨大なカエル。 しかし、今のルナにとって、それは恐れる対象ではありません。 ただの、大きくて不細工な「お人形」に過ぎないのです。


無邪気な笑顔の裏側で、冷酷な支配欲が目を覚ます。 残酷な「遊び」の時間は、まもなく『進化』という名の終焉フィナーレを迎えます。

 森の奥にある湿地帯。  

私は鼻歌を歌いながら、腐った木の周りをくるくると飛んでいた。


「ふふふ~ん♪ 次はだぁれかな~?」


 お腹が空いた。成長期だからかな、食べても食べてもすぐにお腹が空いちゃう。  

今の私は、傍から見ればきっと可愛らしい妖精さんに見えると思う。  

でも、私の手には毒蜘蛛の牙で作ったナイフが握られていて、それは乾いた赤黒い血で汚れていた。


 ゲコォッ……!


 濁った水面が爆ぜて、巨大な影が飛び出した。  

長い舌が鞭のようにしなり、私を捕らえようと空を切る。  


『ジャイアント・トード Lv.5』。  


牛くらいの大きさがある、イボだらけの醜いカエルさんだ。


「きゃっ! あぶないなぁ」


 私はひらりと舞うように舌を避けた。  

『飛行Lv.2』と『敏捷23』の私にとって、この程度の攻撃はスローモーションに見える。


「いきなり舐めようとするなんて、エッチなカエルさんだね。めっ、だよ?」


 私は空中で静止し、カエルさんの黄色い瞳を覗き込むようにニッコリと微笑んだ。  

首を少し傾げて、可愛く、愛らしく。  

魔力を瞳に集中させる。


「――『チャーム』♪」


 ピンク色の光が放たれる。  

カエルさんの動きがピタリと止まった。  

私を「エサ」として見ていた瞳が、とろんと濁り、熱っぽい視線に変わる。  

レベルが上がった今の『チャーム』は凄い。私よりレベルが高い相手でも、一瞬で「恋の虜」にできちゃうんだから。


「ゲコッ……ゲコォ……♥」


 カエルさんが甘えるように鳴いた。  

私はふわふわと降下して、カエルさんの鼻先――ヌルヌルしたイボの上にちょこんと着地する。


「うわぁ、近くで見るとブサイクだねぇ。でも、私のこと好きなんでしょ?」


 私が問いかけると、カエルさんは嬉しそうに瞼を閉じた。  

ああ、なんて都合のいい生き物なんだろう。  

殺される直前まで、私に愛されていると勘違いして死ねるなんて、ある意味幸せだよね。


「ねえ、カエルさん。私、お腹ペコペコなの」


 私はナイフの切っ先で、カエルさんの瞼をツンツンと突いた。


「だから……私のご飯になってくれるよね?」


「ゲコッ!」


 了承するようにカエルさんが鳴いた(気がした)。  

私は満面の笑みを浮かべた。


「ありがとう! 大好きだよ!」


 そして、両手で握った毒蜘蛛の牙を、勢いよく振り上げた。


「――えいっ☆」


 ブチュッ!!


 嫌な手応えと共に、ナイフがカエルさんの巨大な目玉を貫通し、その奥にある脳漿へと達した。


「ゲッ、ギョォォォォォォォ――ッ!?」


 カエルさんが絶叫を上げ、激しくのたうち回る。  

私は振り落とされないように、深々と刺さったナイフの柄にしがみついた。  

まるでロデオだ。暴れる巨大な怪物の上で、小さな私はケラケラと笑う。


「あはははっ! すごいすごい! もっと踊って!」


 傷口からゼリー状の硝子体と血が噴き出し、私の顔とドレスを赤く染める。  

温かい。鉄の匂いがする。  

それが私には、最高級の香水のように感じられた。


「痛い? 苦しい? 

でも大丈夫。私が食べてあげるから、ぜーんぶ私の栄養になるんだよ。嬉しいでしょ?」


 私はナイフをグリグリと回し、傷口を広げた。  

カエルさんの動きが鈍くなっていく。  

愛する私に脳を掻き回されながら、カエルさんは最期まで抵抗することなく、痙攣して息絶えた。


 ドサァッ……。


 巨体が泥の中に沈む。  

静寂が戻った森に、私の無邪気な声だけが響いた。


「お人形遊び、おーわり。……さてと、いただきまーす」


 私は泥と血にまみれたカエルさんの死骸の上で、スプラッタな食事会を始めた。  

可愛くて、弱くて、残酷な妖精。  

それが今の私。


 そして、カエルさんの魔石を取り出した瞬間、今までとは違う、大きなファンファーレが頭の中に鳴り響いた。


 《レベルが上限に達しました》

《レベル5 ⇒ レベルMAX》

《進化条件を満たしました》

《進化先を選択してください》


「え……?」


 口の周りを血だらけにしたまま、私は空中に浮かぶ文字を見つめた。  

そこには、私の運命を分ける二つの選択肢が輝いていた。


【進化先選択】


 1.ハイ・フェアリー


 説明: 純粋な妖精の上位種。魔力と敏捷が大きく伸びる。精霊魔法の適性が開花し、自然と共に生きる道。


 特徴: 姿はあまり変わらず、美しく成長する。


 2.インプ・フェアリー


 説明: 魔に堕ちた妖精の亜種。攻撃力と『魅了』の力が強化される。他者から奪い、支配することに特化した道。


 特徴: 羽が黒く染まり、小悪魔のような姿になる。


【現在のルナのステータス】 Lv: 5(MAX) HP: 40 / 40 MP: 60 / 60 状態: 進化待機中 称号: 『無慈悲な愛』『森の掃除屋』『世界樹の加護』

お読みいただきありがとうございました! お人形遊び(物理)からの、無慈悲な止め。 ルナの歪んだ可愛さが全開の回でしたね。


そして、ついに訪れた初の進化! ルナは光の正統種**『ハイ・フェアリー』**へと至りました。 初期のHP5、カブトムシに怯えていた頃が懐かしいほどの成長ぶりです。


美しく、けれどどこか「壊れた」魅力を持つ彼女の冒険。 ここからさらに加速していきます。引き続き応援よろしくお願いします!


次は第8話ですね。 進化して美しさに磨きがかかったルナが、初めて「人間(村)」に興味を持ち始める回、あるいは強さの確認回でしょうか。準備ができたら教えてくださいね!

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