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『魔物が支配する世界に転生したら、小指サイズの妖精でした ~HP5の最弱スタートから、進化と「魅了」で生き延びます~』  作者: ゆっきー
第3章:深緑の支配者編

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第20話(最終話):約束の場所、始まりの朝

「ただいま……みんな」 たった一粒の種、たった一枚の若葉を守るために、ルナはボロボロになりながら戦い抜きました。 魔力は尽き、意識は遠のき、それでも彼女は微笑みます。 最弱だった妖精が辿り着いた、強さのその先。 絶望の灰に覆われた大地に、今、最大にして最高の奇跡が降り注ぎます。


ルナの物語、堂々の完結です。

 限界なんて、とうに超えていた。  

視界は霞み、四枚の羽はボロボロに裂け、ドレスは自身の血で赤黒く変色している。  

それでも私は、若芽の前から一歩も動かなかった。


「はぁ……はぁ……ッ!」


 目の前には、血の匂いを嗅ぎつけて集まってきた魔物の大群。  


オーク、ゴブリン、巨大蜘蛛。  


かつての私なら絶望していただろう光景も、今の私にはただの「作業」にしか見えなかった。


「……近寄らないで」


 枯渇したMPの代わりに、私は自分の生命力(HP)を燃やして魔力に変える。  

指先から放たれる『カオス・フレア』が、先頭のオークを焼き払う。  

けれど、多勢に無勢。  次の一撃を放つ前に、私の膝がガクンと折れた。


 ドサッ。


 地面に倒れ込む。冷たい灰の感触。  

体が鉛のように重い。指一本動かせない。


(ああ……ここまで、なのかな)


 薄れゆく意識の中で、私は背後の若芽を感じた。  

まだ小さい。でも、確かに脈打つ温かい命。  

ごめんね。もっと大きくしてあげたかった。  

ごめんね、ティタお姉ちゃん。約束、守れなかった。


 魔物たちの涎を垂らす音が近づいてくる。  

私は最期の力を振り絞り、若芽に覆いかぶさった。  

せめて、この身が食い破られる間だけでも、この子を守れれば――。


 その時だった。


 ドクンッ。


 私の胸の下で、若芽が大きく跳ねた。  

いや、若芽だけじゃない。大地が、空気が、世界そのものが震えたような感覚。


『――よく頑張ったね、ルナ』


 懐かしくて、温かくて、涙が出るほど優しい声が脳裏に響いた。


「え……?」


 次の瞬間。  


私の体の下から、視界を全て白く染め上げるほどの閃光が奔流となって噴き出した。


「グオォォォッ!?」


 迫っていた魔物たちが、その光に触れた瞬間に塵となって消滅していく。  

攻撃魔法じゃない。これは、圧倒的な純度の「生命の光」だ。  

光は天を突き抜け、雲を払い、夜空を眩い朝焼けの色へと塗り替えていく。


 私は光の中で、信じられない光景を見た。  

背中の若芽が、見る見るうちに成長していくのだ。  

幹が太くなり、枝が広がり、無数の葉が茂り、蕾が花開く。  

数秒前まで私の背丈ほどだった苗木は、瞬く間に天を覆うほどの巨木――**『世界樹』**へと再生を遂げたのだ。


「すごい……綺麗……」


 降り注ぐ光の粒子が、私の傷を、汚れを、疲れを優しく洗い流していく。  

裂けた羽は再生し、金と銀の輝きを取り戻す。  

灰色の荒野だった大地に、次々と緑の草花が芽吹き、花畑が広がっていく。  

死の世界が、楽園へと書き換えられていく奇跡。


 そして、その光に導かれるように、彼らはやってきた。


「ああっ、やっぱり……!」


 息を切らした人間の女性が、花畑を駆け抜けてくる。  


エレナだ。  


あの日、私が森で助けた冒険者。


「あの時の妖精さん! 

すごい光が見えたから、もしかしてと思って……!」


 彼女はためらうことなく、泥だらけだった私を抱きしめた。  

人間の温もり。かつては恐怖の対象だったそれが、今はこんなにも心地いい。  

彼女は私の名前を知らない。それでも、助けに来てくれたのだ。


「……ったく。世話の焼ける相棒だぜ」


 頭上から、呆れたような、でも嬉しそうな声が降ってきた。  

見上げれば、世界樹の枝の上に、見覚えのある銀色の影が座っていた。


「あなたは……あの時の猫?」


「よう。泥棒猫の『ジル』様だ。名前くらい覚えておきな、女王様」


 ジルと名乗ったケット・シーが、ニヤリと笑ってウインクを飛ばす。  

あの闇夜で私を瓶から救い出し、名乗らずに去っていった彼が、再び私の前に現れたのだ。


「ジル……また、助けてくれたの?」


「勘違いすんなよ。俺はこの世界樹の宝が目当てだ。……ま、宝を守る番犬代わりくらいにはなってやるさ」


 彼の言葉に呼応するように、世界樹の葉の陰から、光の粒が集まり始めた。  


一つ、また一つ。  


それは、隠れ潜んでいた、あるいは新しく生まれた小さな妖精たちだった。


『女王様!』


『私たちの家だ!』


『ありがとう、守ってくれてありがとう!』


 数十、数百の妖精たちが、私の周りを飛び回る。  

キラキラと輝く光の渦。  

誰もいなくなったはずのこの場所に、再び「家族」が戻ってきたのだ。


「あ……ぅ……」


 私の目から、大粒の涙が溢れ出した。  

名前も知らない人間が私を抱きしめてくれている。  

一度しか会っていない猫が私を守ろうとしてくれている。  

復讐のために戦ったんじゃない。  

自分のために力を求めたんじゃない。  

全ては、この景色のために。


「ただいま……みんな……!」


 私はエレナの腕の中で、ジルに見守られながら、仲間たちの歓声に包まれて泣き笑いをした。  

オッドアイの右目から流れるのは、過去への鎮魂の涙。  

左目から流れるのは、未来への希望の涙。


 朝日が昇る。  


世界樹の頂が黄金色に輝き、その光は森全体を、いや、世界中を照らすように広がっていく。


 かつて無力だった一匹の妖精は、多くの出会いと別れ、絶望と希望を経て、今ここに真の居場所を見つけた。


 私の名前はルナ。  


黄昏トワイライトを纏い、光と闇を統べる、世界樹の女王。  

私たちの新しい物語は、まだ始まったばかりだ――。


【最終ステータス】


 名前: ルナ

 種族: トワイライト・クイーン(黄昏の妖精女王)

 称号: 『世界樹の守護者』『再誕の聖女』

 Lv: 1(転生)


 HP: 1000 MP: 1500 魔力: 800


【固有スキル】


楽園創造エデン・クリエイト』: 周囲の環境を聖域化する。


『黄昏の支配権』: 光と闇、全ての精霊を使役する。


【パーティ】


 エレナ: 専属護衛騎士(恩人の冒険者)


 ジル: 影の密偵(怪盗ケット・シー)


 妖精たち: 108匹の眷属


 Fin.

第20話、そして物語の完結、読者の皆々様

最後まで読んでいただき、本当にありがとうございます!


【あとがき】


ボロボロになりながらも、たった一つの希望を守るために盾となったルナ。 その姿は、第1話で「逃げることしかできなかった弱い妖精」だった頃とは比べ物にならないほど強く、そして気高いものでした。


一度は人間に絶望し、復讐の鬼となり、闇に堕ちかけた彼女。 しかし、ジルという「気まぐれな善意」に救われ、エレナという「信じる心」に出会い、最後は自分自身が誰かのための光となりました。


「トワイライト(黄昏)」という種族名の通り、悲しみ(闇)を知っているからこそ、優しさ(光)の温かさを誰よりも深く理解できる、最高の女王様が誕生した瞬間だったと思います。


世界樹の輝きと、集まってきた仲間たちの笑顔。 このハッピーエンドは、ルナが自身の選択で勝ち取った、何よりの宝物ですね。


長きにわたり、ルナの成長と冒険の物語を一緒に紡がせていただき、本当にありがとうございました。 読者あなたの導きがあったからこそ、彼女はここまで辿り着くことができました。


ルナたちの楽園が、いつまでも平和でありますように。 Thank you for reading!

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