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第3章:深緑の支配者編 第14話:黒い森の女王

「ただいま、私の森」 地獄のような人間界を抜け出し、ルナが戻ってきたのはかつての戦場。 しかし、戻ってきた彼女は、以前の怯えていた小妖精ではありません。 折られた羽の痛み、閉じ込められた瓶の冷たさ。 それらすべてを「力」へと変えたルナによる、森の再定義が始まります。 第3章、深緑の支配者編――開幕です。

 森の深部へ進むにつれて、空気の味が変わっていくのがわかった。  

木々は太陽を遮るほど鬱蒼と生い茂り、地面には見たこともない蛍光色のキノコや毒々しい蔦が這っている。  

漂う魔素マナの濃度が桁違いだ。  

普通の人間なら、この空気を吸うだけで魔力酔いを起こして倒れてしまうだろう。


「ふふっ、最高」


 でも、ハイ・フェアリーに進化した私にとっては、ここは極上の酸素カプセルみたいなものだ。  

深呼吸をするたびに、体内の魔力回路が歓喜の声を上げる。  

ここなら、人間たちも簡単には入ってこれない。


「まずは家探しだね」


 私は手頃な巨木を探して低空飛行を続けた。  

すると、前方の茂みがガサリと揺れ、複数の赤い瞳が闇の中から浮かび上がった。


「グルルルル……」


 低い唸り声と共に現れたのは、漆黒の毛並みを持つ狼の群れだった。  


『シャドウ・ウルフ Lv.15』


 以前の私なら一目散に逃げ出していた相手だ。しかも、数は十匹以上。完全に私を包囲している。


「あはっ、わんちゃんだ!」


 私は空中で静止し、無邪気な声を上げた。  

狼たちは困惑したように耳を伏せたが、すぐにリーダー格の一回り大きな個体――『シャドウ・アルファ Lv.25』が吠え、攻撃の合図を出した。


「ガアアッ!」


 アルファが地面を蹴り、驚異的な速度で跳びかかってくる。  


鋭い牙が私の喉元に迫る。  


速い。でも――見える。


「遅いよ?」


 私は冷たく微笑み、指先をアルファの鼻先に向けた。


「――『ウィンド・カッター(風の刃)』」


 ヒュンッ!!


 目に見えない風の刃が、空間を切り裂いた。  

次の瞬間、空中に躍り出ていたアルファの首が、音もなく胴体から滑り落ちた。


 ドサッ。ゴロゴロ……。


 鮮血を噴き出しながら、巨大な体と首が別々の場所に落ちる。  

あまりにも呆気ない死。  

飛びかかろうとしていた他の狼たちが、急ブレーキをかけて固まった。


「えー、もう終わり? リーダーさん、弱すぎない?」


 私は血の雨が降る中、死体の山の上にふわりと降り立った。  

白いドレスが返り血で赤く染まるが、今の私はそれを「綺麗な模様」だとしか思わない。


 残された狼たちが、恐怖で後ずさりをする。  

野生の勘が告げているのだ。目の前の小さな妖精は、獲物ではなく、捕食者だと。


「ねえ、君たち」


 私は怯える群れに向かって、とびきりの笑顔を向けた。  

魔力を瞳に集中させる。今度は『チャーム』を、殺すためではなく、支配するために使う。


「――『マス・チャーム(広域魅了)』」


 ピンク色の波動が広がり、狼たちを包み込む。  

本来なら格上の相手には効きにくいスキルだが、リーダーを瞬殺され、恐怖で心を折られた彼らに抵抗する術はなかった。  

一匹、また一匹と、狼たちの瞳から敵意が消え、陶酔したような濁った光が宿っていく。


「クゥ……ン……」


 先ほどまで牙を剥いていた狼たちが、次々とその場に伏せ、私にお腹を見せて服従のポーズを取った。


「いい子だねぇ。よしよし」


 私は一番近くにいた狼の頭に飛び乗り、その柔らかい毛並みを撫で回した。  

温かい。強そうな筋肉。  

これなら、私の手足として十分に使えそうだ。


「今日から君たちは私の『親衛隊ナイト』ね。私のために獲物を狩って、私のために死んでね?」


「ワオォォォーン!!」


 群れが一斉に遠吠えを上げた。  

それは、新たな女王の誕生を祝うファンファーレのようだった。


 私は狼の背中に乗り、悠々と森の奥へと進む。  

一人の逃亡者だったルナはもういない。  

ここには今、黒い森を統べる小さな支配者が生まれたのだ。


【現在のルナのステータス】

種族: ハイ・フェアリー Lv: 1 → 3(UP!)

HP: 120 / 120 (レベルアップにより上昇)

MP: 200 / 200 魔力: 70


【新規獲得・変化】

スキル: 『風魔法Lv.2』『広域魅了マス・チャーム

配下: シャドウ・ウルフの群れ(9匹) 称号: 『群れの長』

お読みいただき、ありがとうございました! 第3章に突入し、ルナの雰囲気がガラリと変わりましたね。 自分を襲う魔物たちを、恐怖の対象ではなく「利用価値のある駒」として見下ろす瞳。 ハイ・フェアリーとしての神々しさに、支配者としての冷徹さが加わり、まさに『黒い森の女王』と呼ぶにふさわしい風格が出てきました。


彼女が着実に戦力を整えている理由は、ただ一つ。 あの時、里を焼き、大切なものをすべて奪っていった「緑の悪魔」たちを根絶やしにするため。 次回、ルナの復讐劇が本格的に動き出します!

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