表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『魔物が支配する世界に転生したら、小指サイズの妖精でした ~HP5の最弱スタートから、進化と「魅了」で生き延びます~』  作者: ゆっきー
第2章:孤高のサバイバル編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

13/22

第12話:闇夜の来訪者と銀の猫

魔力も、誇りも、自由も。 すべてを奪われ、薄暗い地下室で「モノ」として朽ちていくのを待つだけだったルナ。 絶望が彼女の心を塗りつぶそうとしたその時、静寂を切り裂く軽やかな声が響きます。


梁の上に佇む、月明かりを浴びた銀色の影。 皮肉屋で生意気な「泥棒猫」との出会いが、ルナの運命を再び変えようとしていました。

 深夜の古道具屋に現れた男は、迷うことなく私のいる棚の前へと歩み寄った。


「爺さん。約束のブツはこれだな?」


「ああ、そうだ。『ハイ・フェアリー』の変異種。しかも未契約の処女おとめだ。滅多にお目にかかれん逸品だよ」


 老人はカウンターから出てきて、私の入った瓶をうやうやしく捧げ持った。  

男――闇ブローカーは、フードの下から冷徹な視線を向けた。感情の読めない、商売人の目だ。


「ふむ、悪くない。顧客のリストに載っている変態貴族どもが喜びそうなツラだ」


「だろう? 値段だが、金貨2000枚でどうだね?」


「1500だ。最近は王国の監視が厳しくてな、輸送のリスク代を引かせてもらおう」


 私の目の前で、私の値段が交渉されていく。金貨1500枚。盗賊が売った値段の10倍だ。私は高価な商品になったらしい。でも、嬉しくなんてない。  

取引は成立した。男は懐から重そうな金貨が入った革袋をカウンターに置く。

老人はニヤリと厭らしく笑い、舌をチョロっとだした。


「へへ……まいど…!」


「…こいつは貰っていく。」


私が入った瓶を乱暴に掴み取った。


「さあ、新しい飼い主様のところへ行くぞ、お嬢ちゃん」


 私は再び闇の中へ、馬車の揺れの中へと放り込まれた。


 ◇


 到着したのは、森の奥深くにある、石造りの堅牢な屋敷だった。  

表向きは富豪の別荘だろうが、その地下には広大な「保管庫」が広がっていた。


「ここがお前の新しい部屋だ」


 ブローカーの男は、私を埃っぽい棚の上に置いた。  

ここは古道具屋よりもさらに異様だった。  

私の隣には、禍々しい赤光を放つ『魔剣』が台座に刺さっている。反対側には、持ち主の血を吸って黒ずんだ『呪いの鎧』が、亡霊のように立ち尽くしている。  

盗品、呪物、禁制品。ここは、表の世界に出せない闇の宝物庫なのだ。


「次のオークションまで、そこで大人しくしてな。傷物になったら価値が下がる」


 男はそれだけ言い捨てて、重い鉄の扉を閉めて出て行った。  

ガチャン、と鍵がかかる音が地下室に響く。


 再び訪れた静寂。魔剣の唸るような低い振動音だけが聞こえる。  

私は瓶の底に座り込んだ。


「……もう、ダメなのかな」


 ここから逃げるなんて不可能だ。魔法も使えず、この頑丈な瓶を割ることもできない。  

やがて誰かに買われ、どんなひどいことをされるのか。想像するだけで体が震える。  

森で自由に飛び回っていた頃が、遥か昔のことのように思えた。ティタお姉ちゃん…みんな…ごめんね。私は、ここまでみたい……。


絶望が心を塗りつぶそうとした、その時。


「――おや?」


 微かに、軽い声が聞こえた。  


幻聴? それとも、隣の呪いの鎧が喋ったの?  

私は顔を上げ、目を凝らした。  

薄暗い地下室の天井近く。太いはりの上に、小さな影があった。


 月明かりが差し込む高窓から、その姿が一瞬だけ照らし出された。  

二本足で立ち、背中に風呂敷を背負った、銀色の毛並みを持つ猫の妖精――『ケット・シー』だ。  

彼は頬杖をついて、ニヤニヤと私を見下ろしていた。


「君、ハイ・フェアリーだよね? 

こんなところに捕まって、ドジな妖精だね!」


「え……あなたは?」


 声が出せない瓶の中から、私は口パクで問いかけた。  

ケット・シーは音もなく梁から飛び降り、スタッと私の目の前に着地した。  

そして、腰から小さなガラス切りのような道具を取り出し、ウインクしてみせた。


「通りすがりの、ただの泥棒猫さ。……ちょっと待ってな、今出してやる」


 彼は腰から小さな道具――ガラス切りのようなものを取り出し、私の入っている瓶に近づいてきた。  その瞳は、商売人のような冷たい目でも、盗賊のようなギラついた目でもない。  

闇夜に光る、自由で、いたずらっぽい、冒険者の目をしていた。


【現在のルナのステータス】

【HP】 50 / 80 【MP】 100 / 150 【魔力】 0(封印)

状態: 監禁、絶望からの希望

状態異常: 魔力封印、衰弱(小)、魔力吸収(小)

環境: 闇ブローカーの地下保管庫

遭遇: 銀色の義賊ケット・シー

お読みいただき、ありがとうございました! ついに、ついにルナに救いの手が……!


現れたのは、二足歩行の銀色の猫、ケット・シー。 「ドジな妖精だね」なんて、弱っている今のルナには最高にカチンとくる台詞ですが、これほど頼もしく聞こえる言葉もありません。 ガラスカッターを手にした彼の正体は、一体何者なのか。


いよいよ次話、ルナが再び「外の世界」へと飛び出します。 お楽しみに!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ