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ダンジョンの最奥で手に入れた二刀の剣は、暗黒女帝と大聖女だった  作者: 酒とゾンビ/蒸留ロメロ


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9/14

 蟹の半分を譲るかわりに、3人に蟹の頭を調理してもらった。

 パーティーのリーダーでもあるクラインが魔法で土台を作り、アメリアとコーディーが魔法で火をつける。


「あのくらいならわたくしにもできました」


 耳元でアンゼそう言った。


「いいんだよ。どうせ全部は食べられないし」


“冒険者のマナー”をやるにも、この量だと包装が大変だ。〈氷結袋〉が足りない。

 しばらくして調理を終え、俺たち6人は成り行きで共に蟹を食った。


「なるほど。偶然通りかかったお姉さん二人に、蟹を恵んでもらったってわけか」


 クラインが、蟹の味噌汁をすすりながら言った。


「まあ、そんなところかな」

「デイモンらしいわ」アメリアが言った。 「一瞬、デイモンがこれを仕留めたのかと思ったけど、そんなことあるわけないわよね」


 クラインたちは、3人して笑い声を上げた。

 大量の蟹にありつけて気分がいいらしい。


「それより聞いたぞデイモン、《陽気な少年たち(ジョリージョニーズ)》を抜けたんだってな」


 と、コーディーが話題を変える。

 アメリアが初耳だと驚く。


「え、そうなの? もったいない……デイモンレベルの冒険者がパーティーを組むって難しいのよ? あのパーティーは9階層経験者の超エリート少数パーティーだったんだから」

「らしいな。1週間前に知ったよ」

「あなたが抜けたならと、私たちあのパーティーに入ろうかと思ったんだけど、なんでも治安維持隊の監視下にあるっていうじゃない。おまけに遠征隊と9階層に向かっちゃって、もう旧市街にはいないっていうし……」

「色んな冒険者があのパーティーに入りたがってる」とクライン。 「俺たちと同じことをみんな考えてる。それで急いで遠征隊のあとを追っていった奴らもいるしな。お前、ほんと勿体ないことしたな」

「……俺がいても、迷惑をかけるだけだったし」

「ま、そうだろうな。そもそも学校での成績もぱっとしねえ、当然実績もねえ見習いのお前が、なんであのパーティーに入れたのか未だにわからん。《陽気な少年たち(ジョリージョニーズ)》の面接には何千人という冒険者が応募した。もちろん俺たちも応募したし、面接があると聞きつけて、上階層から下りてきた奴もいるくらいだ」


 コーディーが代わりに続けた。


「そんな中、見習いのよーわからん冒険者がパーティーに参加した。他、約千人の冒険者は落選だ……お前には同情したよ」

「同情?」


 意味がわからなかった。


「わからねえか?」とクライン。 「《陽気な少年たち(ジョリージョニーズ)》は元々9階層の冒険者だ、いずれは戻るつもりだったんだろう。面接は、冒険者を募ってたわけじゃねえ。丁度いい囮か、荷物持つでも探してたんだろうよ」

「囮……」


 考えたこともなかった。

 一週間前のレイさんたちの言葉は今もわからない。だけど箱庭(フィールド)での出来事を思い出せば、あの人たちが悪い人じゃじゃないってことはわかる。

 俺には、そうとしか思えない。


「流石にこの量は食い切れねえ。包装も難しいな、そろそろ行くか」


 三人は立ち上がった。

 飲みさしの味噌汁をぶっかけ、火を消した。

 もったいない。少しだけ、俺は表情を曇らせる。


「そうだ」


 と、在り際にクラインが言った。


「《陽気な少年たち(ジョリージョニーズ)》だけどな、なんでも大変らしいぞ」

「大変?」

「10階層の階層門番(レイドボス)に挑んでんだろ、確か? そんで、なんでもパーティーからけが人が出たとか……」

「けが人! 一体誰が……レイさんか? それともエマさん?」


 思わず、俺は口調を強めてそう言った。

 クラインが「なんだよ」と半笑いで一歩下がる。


「詳しくは知らねえ、風の噂だ。ま、でも良かったじゃねえか」

「良かった?」

「人を囮に雇うようなパーティーだろ。やっぱ9階層経験者は凄いわ、やることがえげつねえ。お前にとって、良かったんじゃねえかって言ってんだ。これでせいせいしたろ、腹もまた空いてきたんじゃねえか?」

「蟹を分けてくれてありがとう」とアメリア。


 3人は、その場を離れていった。


「気分の悪い方々でしたね」とアンゼが言った。

「腹が立つのに、なんで何も言い返さないのだ?」

「腹が立つ?」

「顔が曇っておるぞ。違うのか?」

「……どうだろう」


 よくわからない。

 言われっぱなしの期間が長すぎて、腹が立っているのかなんなのか……。


 帰り道に、開けた大地を通った。

 遠くに薄く見える山脈に向かってここを真っすぐに進むと、二階層の大扉(ニューゲート)がある。


 目の前に大岩があった。


「デイモン、岩があったぞ、試し切りにピッタリなのだ!」


 張り合いのある魔物(モンスター)がいい。

 そう言って敵を探していたディアだったが、目の前の岩でいいと言った。

 黒い剣に変身したディアを手に持つ。構えた。


「刃が折れちゃわないか?」


 大きいし、堅そうな岩だ。

 そもそも刃物で岩を斬るなんて非常識だ。


「全然平気なのだ!」


 剣が震えた。俺の腕は、勝手に剣を振った。

 ばちばちっと黒い稲妻が光り、黒い斬撃が地を掘り返しながら走った。

 両断された大岩が、周囲へ弾け飛んだ。ぱらぱらと空から破片が降ってくる中、俺は唖然と立ち尽くす。


「うわ……」


 その光景を前に唖然とした。

 人型に戻ったディアは、一回転しながら飛び跳ね、誇らしげに腰に手を当てる。


「ぎゃはは! どうだデイモン、凄い一撃であろう! 我の稲妻はアンゼをもしのぐのだ!」


 家が一つ吹き飛んだような衝撃だ。

 思わず、一枚パシャリと撮った。投稿しようとして指が止まる。


「……大丈夫だよな。ただの岩だし。記念記念と」


 大扉(ニューゲート)を見つけたわけでもないんだ。

集会場(ミート)〉にアップした。



 ▽



 翌朝。

 朝刊を手に取り、寝起きの目を見開いて呆然とする。


「〈名無しの冒険者、国道開発で妨げになっていた大岩を破壊!〉……」


 そこに掲載されていたのは、まさかのあの岩だった。

 かつて計画が進んでいた国道開発だが、進路上に巨大な大岩があったため、計画は一時中止された。と記事にはあった。

 当時、岩の除去を9階層の冒険者に依頼したが、破壊ならず。

 市長は、今日にも調査隊を派遣し、国道開発を再検討したいとの意向を表明……。


「最近噂されている名無しの冒険者によるものであるなら、是非一度直接会い、感謝の言葉を述べたいと市長は答えた。嘘だろ……」

「アンゼ、見るのだ、我が昨日破壊した岩がのっているぞ!」

「あら、本当ですね。良かったではありませんか」

「なになに、国道開発? なんなのだそれは?」

「なんでもないよ。また変に名前が広がっただけさ……」


 適当な岩を破壊しただけなのに。

 一面の下部には、〈蟹の王様、浜に姿現す〉と昨日の巨大蟹のことも掲載されていた。

 ざっくり読むと、大岩のあった場所から近い浜であるため、これも名無しの冒険者の仕業ではないか、と記事には書かれていた。


 アカウント名でも変えるか。

 朝っぱらから溜息が出た。

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