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ダンジョンの最奥で手に入れた二刀の剣は、暗黒女帝と大聖女だった  作者: 酒とゾンビ/蒸留ロメロ


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4/14

 翌朝。

 ベッドの上で目を覚ますと、両脇に知らない女が寝ていた。


 右に寝返りをうつとブロンドの長い髪をした女が、左に寝返りをうつと長い黒髪をした女がいる。

 どうも俺は、二人に挟まれて寝ていたらしい。

 なにか嫌な予感がし、恐る恐る毛布をめくると、二人とも全裸だった。


「なにこれ……」


 状況がわからん。

 酔った勢いで連れ込んだのか。だが酒を飲んだ記憶はないし、昨日のことははっきりと覚えている。


 昨日のことを思い返す……。

浮遊の衣レヴィテーション・ドレス〉で宝をすべて包み込み、宙に浮かせた状態で、ここ、旧市街にあるアパートまで戻ってきた。あれはなかなか名案だった。

 その時点で日が暮れそうな感じだったから、幽鬼の王(レイス・キング)河川蜥蜴(リザードマン)の首だけ持って、換金所に出かけた。


「そのあとか……」


 なにかあったとすれば、そのあとだろう。

 だが真っすぐにアパートに戻ってきた記憶しかない。

 ベッドの足元からそっと出た。玄関扉のポストに入っていた朝刊を回収する。何の気なしに開き、ページをめくろうとしてた指が止まった。


「10階層の大扉(ニューゲート)……」


 とんだ大ニュースだ。

 まさか大扉(ニューゲート)が見つかるなんて。

 これは上階層に挑む冒険者が増えるぞ。


 背伸びをするような声が聞こえ、思わずびくっとした。

 振り返ると、ベッドの上で二人が目を覚ましていた。毛布が、いい感じに二人の大事な部分を隠している。

 1LDKの狭い部屋だから、彼女たちとの距離はそう離れていない。

 どうすればいいのかわからず、扉の前から足が動かなかった。

 一言、声をかけてみる。


「おはよう……」


 ブロンドの女が振り向いた。

 俺よりも若干年上に見える。

 彼女は、にっこりと微笑む。


「おはようございます、デイモン」


 おしとやかな声だった。豊満な胸元に目がいくも、俺はすぐに逸らす。

 それより、なんで俺の名を知ってるんだ。

 その奥の黒髪の彼女が、


「お腹が空いたぞ、デイモン。ディアは朝食を所望する!」


 黒髪の彼女は、ブロンドヘアーの女よりも身長が低い。

 声に幼さを感じるが、俺と歳が離れているようにも思えなかった。


「あの……どちらさま? 俺、君たちの名前すら知らないんだけど。それより、まず服を着て……」

「まだ名乗ってはいません」

「我が名はディアボリカなのだ!」

「わたくしはアンゼリカと申します、アンゼとお呼びください」


 部屋の隅に立てかけられた、黒と白の鞘の姿が見えた。

 剣が、見当たらない……。



       ▽



 鞘が衣服に変化すると、二人はそれぞれ、黒と白のドレスに身を包んだ。


 昨日回収した河川蜥蜴(リザードマン)の腕をオリーブオイルと黒胡椒で焼いた。塩で味付けして、流れで二人に振る舞った。


「デイモンは、料理がお上手なのですね」

「冒険者なら誰でも知ってる調理法さ、臭い消しだよ。魔物(モンスター)の肉は臭みが強い時があるから」


 そんなことより……。


「つまり、二人は俺が昨日みつけた剣ってこと?」


〈聖なる純白アンゼリカ〉と〈暗黒女帝ディアボリカ〉。

 二人は、あの白と黒の剣だった。

 人型になっている理由はわからないが、俺が信じられない素振りを見せると、すぐに剣に変身したから信じるしかない。

 人が剣に、剣が人に化けるなんて聞いたこともないが、二人が食している肉は着々と減っている。幻覚ではないらしい。


「タンスから変な気配を感じるが、なんなのだ?」


 現在、部屋に一つしかないタンスの中は、極寒と化していた。

 幽鬼の王(レイス・キング)の身に着けていた〈金の王冠(クラウン)〉のせいだ。丁度いいから河川蜥蜴(リザードマン)の腕と一緒に、タンスに入れて置いた。

 さっき開けたら霜が降りていて、天井には氷柱(つつら)まではえていた。


「これのせいだよ」と〈金の王冠(クラウン)〉を見せる。

「それは、幽鬼種(レイス)の三種の神器ですか……」

「道理で肉の鮮度がいいのだ。冷蔵庫替わりに使うとは、デイモンはちょっとアレなところがあるのだな」

「アレなところ?」

「ディア、失礼ですよ」

「うるさいのだ、アバズレめ」


 アンゼが静かな怒りを浮かべた。

 食器がひとりでに、カタカタと音を立て始める。


「ディア、なにか言いましたか?」

「アバズレだからアバズレと言ったのだ!」


 ディアが無邪気な笑みを見せつけると、次はテーブルが揺れ始めた。

 二人は睨み合った。


「い、痛い、痛いのだ! やめるのだ!」


 アンゼにこめかみをぐりぐりされ、ディアが降参した。揺れも収まった。

 手掴みで肉を食べようとしてアンゼに叱られ、ディアは不器用そうにフォークとナイフを使った。

 仲はいいらしいが、二人の関係がわからない。

 白と黒という対比……。宝箱の中に一緒に入っていたのだから、何かしらの関係性があるのだろうか。

 肉をフォークで摘まみながら、俺は癖でスマウグを取り出し〈集会場(ミーター)〉を開いた。



 ―――――――――――――――――――

 名無しの冒険者

 階層:1

 ホスト:1 クライアント:2.001.745


 下記のスキルが使えます。

索敵(サーチ)〉〈鑑定(スキャン)〉〈隠密(スパイ)〉〈無音(サイレンス)〉。

 ソロで冒険者やってます。

 ―――――――――――――――――――



「ん、一十百千万……200万?」


 一瞬、目を疑った。

 が、昨日、鍾乳洞でスマウグを落としたことを思い出した。石か何かの鉱物が中に入り込んでいるらしく、今も取れないでいる。

 何故か、200万人くらいにお気に入り登録されていることになっているが、完全に故障しているようだ。


 ランキング確認は、朝の日課であり冒険者の(たしな)みだ。


「……は?」


 とんでもないものが目に入った。

 ランキング2位に、11階層の大扉(ニューゲート)が見つかったとある。

 朝刊には、〈10階層〉とあったはずだが……。


「ん? これって、俺が撮った写真じゃ……」

「何を間抜けな顔をしているのだ」

「どうかなさいましたか」


 裸の女が二人現れたと思ったら、10階層が開き、今度は11階層……。


「名無しの冒険者……」


 なんで俺が、大扉(ニューゲート)を開いたことになってるんだ。

 頭の整理がつかない。眩暈がした。

 ランキングの上位すべてが、俺が昨日アップした写真の話題で溢れていた。

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