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ダンジョンの最奥で手に入れた二刀の剣は、暗黒女帝と大聖女だった  作者: 酒とゾンビ/蒸留ロメロ


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 賑やかな酒場の一郭(いっかく)

 丸テーブルを挟み、俺は3人と向かい合っていた。


「パーティーを抜けたいんです……」

「いきなりだな」


 レイさんは、苦笑した。

 彼の左隣には細身の若い女性が、右隣には筋肉の隆起した(たくま)しい男性が座っている。

 左が女剣士のエマさん、右が大楯使いのジェイムスさんだ。

 リーダーのレイさんを筆頭に、この冒険者パーティー《陽気な少年たち(ジョリー・ジョニーズ)》は成り立っている。


「どういうことか説明してくれないか。デイモン」

「説明しなくても、わかってるんじゃないですか?」


 パーティーにとって、俺はお荷物だ。

 役に立っていないことは言うまでもない。


「いきなりどうしたの、何かあった?」

「悩み事なら聞くぞ、遠慮しないで言ってみろ」


 エマさんも、ジェイムスさんも、いい人だ。

 加入してから日は浅い。今に至るまで親身にサポートしてくれた。色んなことを教えてくれた。だからこそ、これ以上居座るわけにはいかない。


「俺は役立たずです」


 レイさんがすぐに否定する。


「そんなことはないだろう」

「俺の役割って、周囲に敵がいないことを確認したりとか……それくらい、ですよね」


 改めて考えてみると浮かばないもんだ。

 どうやら思っていた以上に、俺は役に立っていなかったらしい。


「鑑定もだろ」とジェイムスさんが気遣う。 「知らん色の木の実とか、草とか、色々調べてくれてるじゃないか、採取する前に」

「そうでしたね。じゃあ、その二つくらいですか……」

「それで、抜ける理由は? 言い出しづらいなら、それまで待つわ」


 エマさんはそう言った。

 口ぶりからして、わかっていて言っているんだろう。


 前衛から中衛までを担当するレイさんに、前衛のみを担当する二人。

 対して、俺は中衛から後衛までを担当する。

 俺は、前衛にいけない。

 それが不満ってわけじゃない。俺の実力に合わせて、3人は後衛での加入を認めてくれた。なのに……。

 敵との接的な接触がほとんどない、優しい役割であるというのに、俺は役を果たしきれていない。


 3人の優しさによって、俺はこのパーティーに所属していられる。

 みんなは演技をしているわけだ。俺に核心を言わせないために。

 気にする必要はない、お前はパーティーにいてもいんだ……と。

 そういうわけには、いかない。


「みなさんには、《針の塔(オベリスク)》の頂上に行くという夢があるはずです」


 俺が、3人の夢を妨げている。


「これ以上、みなさんの足を引っ張りたくないんです」

「だから、どういうことよ。あなたがいつ、私たちに迷惑をかけたのよ」

「今一つ理由がわからないな。デイモン、君は十分、僕らの助けになっているじゃないか」


 レイさんがそう言うと、ジェイムスさんも肯定した。


「レイの言うとおりだ。お前の索敵能力は……」

「俺では力不足です。流石に俺自身もわかってますよ」


 ジェイムスさんの慰めを遮り、俺はそう言い放った。

 これ以上、3人に気を遣わせたくなかった。

 名が通っているパーティーだし、後釜はいくらでも見つかるだろう。


「何もしてないのに報酬だけ貰うって、結構、罪悪感あるんですよ……」


 俺は席を立ち、


「今まで、ありがとうございました」


 その場から走り去った。

 3人の呼び止める声が聞こえた。振り返らず、俺は酒場をあとにした。



       ▽



 旧市街のど真ん中に位置する広大な中央広場は、沢山の冒険者たちで賑わっていた。

 沢山のパーティーの姿があった。

 どれだけ少数であろうと、誰もが必ずパーティー組む。


 この広場の中心に、空高く(そび)え立っているのが《針の塔(オベリスク)》だ。

 外観は細長く、天辺は雲に隠れていてよく見えない。

 快晴の日は、尖った先っぽが見えることもある。


 塔の中は階層によって分かれている。

 現在到達が確認されているのは、9階層までだ。

 俺は一人で、《針の塔(オベリスク)》に入った。


 薄暗い回廊が続いている。

 明かりは、天井に等間隔に設置された橙色の豆電球だけだ。

 回廊を抜けると古城の内部――大食堂に出た。第一階層の出発(スタート)地点だ。

 テーブルを囲む冒険者の姿がちらほらあった。城内には魔物(モンスター)が出ないから、ここはよく集会場としても使われている。

 大手冒険者ギルド 《英雄会(メシア)》が、ここ一階層が開かれたときに魔物(モンスター)除けを張り巡らせたのだ。


 空いている席に腰かけた。ポケットからあれ(、、)を取り出し片手に持った。長方形の画面を覗き込む。

 これは携帯型魔導書スマート・グリモワールだ――略して〈スマウグ〉。

 アプリ〈集会場(ミーター)〉を開き、アカウントの作成画面に移動した。

 これまではパーティーに所属していたから、レイさんが代表して、《陽気な少年たち(ジョリー・ジョニーズ)》のアカウントを管理していた。

 これからはソロだし、自分だけのものが必要になるだろう。



 ――――――――――――――

 名前:デイモン

 年齢:17歳

 職種:支援系

 経歴:中衛から後衛での支援経験あり

 階層:3

 特技:下記のスキルが使えます。

索敵(サーチ)〉〈鑑定(スキャン)〉〈隠密(スパイ)〉〈無音(サイレンス)

 自己紹介欄:ソロで冒険者やってます。

 ――――――――――――――



「これで、いいかな……」


 アカウント作成ボタンを押そうとして、指が止まった。


 〈階層:3〉とは、到達階層のことだ。

 三階層までなら行ったことがあるが、それはレイさんたちがいたからだ。

 一人となれば違う。


「階層は、〈1〉が妥当だな」


 情けないのはスキルだ。たったの4つしかない。

 レイさたちは色んなスキルを持っているらしいが、俺はこれしか知らない。


「正直に記載しておくか。嘘じゃないしな。あとは……年齢から経歴までを非公開にしておこう」


 俺とパーティーを組んでください、とアピールしているようで嫌になった。

 今さっき自分からパーティーを抜けてきた分際で、そんなことはできない。


「こんなところでいいか」


 見栄はない。誇張(こちょう)した部分もない。

 仮にレイさんたちに見られたとしても、嘘じゃないから俺も罪悪感がない。

 もっとも、あの人たちは何も思わないだろうが。

 念のため、名前は〈名無しの冒険者〉としておこう。これでパーティーを組みたがる冒険者はいないだろう。

 アカウントページが作成された。



 ――――――――――――――

 名無しの冒険者

 階層:1

 ホスト:0 クライアント:0


 下記のスキルが使えます。

索敵(サーチ)〉〈鑑定(スキャン)〉〈隠密(スパイ)〉〈無音(サイレンス)〉。

 ソロで冒険者やってます。

 ――――――――――――――

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