おしゃべり
私は一人っ子。
雨の日が好き。
学校からの帰り道。
お母さんが買ってくれた黄色い傘と長靴を履いて歩く。
大きな水溜まりを見つけたら。
ジャンプして。
バシャーンって。
水しぶきが上がって。
傘をくるくる回したら。
しずくが飛び散って。
パラパラ落ちる雨に歌う傘。
合わせるように歩いて。
いつもは人が多い通学路も。
雨宿りしている。
野良猫さんくらいしかいないから。
小さな水溜まりを見つけたら。
にらめっこしてみるの。
でも、決着はつかないから。
笑ってあげる。
木や花も雨の日は好きみたい。
雨粒とおしゃべりしているのかな。
お風呂の気分なのかな。
玄関の前で。
傘をバサバサってたたんで。
玄関の鍵を開ける。
「ただいま~」
傘立てに傘を置いて。
長靴を脱いで。
ちょんと揃える。
きい。
って。床がお帰りって応えてくれて。
台所で手を洗って。
隣の部屋でランドセルを下ろして。
部屋の隅っこの小さなテーブルに向かう。
その前にぺたんって座って。
白いクマの、のんちゃんの鼻をつつく。
「ただいま」
のんちゃんはまあるい黒い瞳で見返してくれる。
「今日もお留守番ありがとう」
もこもこの毛並みを。
ぎゅーっと抱き締める。
「苦しいよ、千織」
「あ、ごめんね」
そっと目線の高さを合わせる。
「謝らないでいいよ。お帰りなさい」
「……今日もみんなに無視されちゃった」
「そうか、頑張ったね、千織」
「でも、いいんだ、のんちゃんがいるから」
「僕も、千織がいるからお留守番もへっちゃらさ」
「のんちゃんも頑張ったね。よしよし」
「ははは、くすぐったいよ千織」
「……今日も、お母さん遅いのかな……」
「でも、お仕事頑張ってくれてるんだよ」
「そうだね。帰ったら肩揉んであげようかな」
「それはいい。お母さんきっと喜ぶよ」
「それから、お母さんの絵を描こうかなって」
「すごくいいと思う」
「もうすぐ母の日だから」
「偉いな千織は、本当に」
「……ありがとう。のんちゃん」
拙文、お読み下さりありがとうございます。




