循環するもの
ガタン、ガタン。
低いエンジン音が立ち込めて、心地良い揺れを伴う山手線の車内。
車窓が流れ、その前の座席に陣取る、一見やんちゃそうな男女四人組。
高校生くらいかな。
二人の男の子は金髪。
女の子は一人は茶髪、もう一人は銀髪。
ヘヴィメタバンドのような若者たち。
何がそんなに面白いのか、それとも面白く思いたいがためなのか。
人目を憚らず大きな声で笑っている。
訝しい顔のスーツ姿のおじさん。
ちらちら、四人組を見て、ひそひそ話をするおばさん。
イヤホンで音楽を聴きながら、我、関せずの青年。
殺伐とした都会の空気。
電車が駅に着き、車内が混み始める。
そこへ妊婦さんが乗り込んできた。
私が立ち上がろうとするより先に、金髪の男の子の一人が妊婦さんに歩み寄る。
「そこどうぞ」
妊婦さんは目を見開いて。
「ありがとう」
茶髪の女の子の隣に腰掛けた。
席を譲った男の子は妊婦さんの前にしゃがむ。
見ようによっては絡まれていると見えなくもない。
「ねえ、もう生まれるの?」
茶髪の子。
「あと二ヵ月くらいしたら」
「うわー、おめでとう」
妊婦さんは苦笑い。
「男の子? 女の子?」
「えーと調べたら分かるんだけど、私は聞かないようにしたんです」
「そうなん?」
「楽しみが多い方がいいかなって」
「ふーん、動いたりするの?」
「うん、しますよ」
妊婦さんは茶髪の子の手を取ってお腹に添えた。
「あ、動いた!!」
「え?」
「まじか」
金髪二人が反応する。
妊婦さんは他の三人にもお腹を触らせた。
その度に一人一人。
お腹に触れた手を包んだり。
首を傾げたり。
胸にその手を添えたり。
ぎゅっとこぶしを握ったり。
「どんな子に育って欲しいとかあるの?」
銀髪の子。
「んー。健康ならそれが一番。それからみんなみたいに元気で優しい子になってくれたらいいかな」
「私たちみたいに?」
「うん、だってみんな元気で優しい。お腹の手の触れ方で分かるんだ」
四人の若者は呆気にとられたように一瞬、それぞれの顔を見合わせた。
ゆっくりほころぶ顔。
瞳が柔らかく光る。
それから四人の若者は妊婦さんに、あれやこれや質問していた。
そして妊婦さんが降りるとき、
「すいません、降ります!」
しゃがんでいた金髪の子が声を出した。
四人は妊婦さんを囲うように並んで、ホームに降りるまで付き添っていた。
「ばいばい」
「気を付けてね~」
二人の女の子の陽気な声。
電車が走り出しても四人は手を振っていた。
顔がどことなくほころんでいた私。
おじさんが小さく頷き。
おばさんたちは顔を見合わせて微笑んでいる。
青年もまた、イヤホンを外さないまでも、その口元には柔らかな曲線が浮かんでいた。
車内には、ふわりと和やかな空気が漂う。
ガタン、ガタン……
拙文、お読み下さりありがとうございます。




