隠し味
仕事帰り、ふらっと寄ったスーパー。
なんとなく買い物カゴに入れた「ひじき煮」のパックを手に取って、
ぼんやり裏の品質表示を見ていた。
原材料:ひじき、にんじん、油揚げ、
砂糖、しょうゆ、みりん、愛情(少々)
……ん?
最後のやつ、なんか混ざってない?
思わず二度見してしまった。
疲れた頭に「愛情(少々)」がじわっと効いた。
パックの右下、小さく書いてある。
製造者:坂下高校 家庭科部
なるほど、地域の学生が作ったやつらしい。
品質表示の隅で照れたように主張する「愛情(少々)」に、
仕事帰りのイライラがフッと消えた。
少しいい気分になっていたら、
なんか妙におしゃれなパッケージの「こだわりヨーグルト」。
を見つけた。
さっきのじゃないけど、
裏の品質表示を見てしまう、
「原材料名:牛乳、乳酸菌、そして…企業努力」
……企業努力!?
いや、味に出るタイプの努力なの?
それとも「察して」という哲学なの?
一瞬で吹き出しそうになって、隣にいたおじさんに変な目で見られた。
さらに下を読むと、
「保存方法:冷蔵してください(冷凍するとスタッフが泣きます)」
そんなに?
スタッフのメンタルも守りたい優しい会社なの?
そして極めつけは賞味期限の横。
「おいしい時期:あなたのタイミングで」
そんな自由度いる?
私が決めるの?
なんかヨーグルトと急に対等な関係になった気がした。
結局ひじき煮は普通に美味しかったけど、
一番のスパイスはあの表示だったかもしれない。
ヨーグルトも美味しかった。
けど、スプーン入れるたびに“企業努力”の味を探してしまった。
思わにところにあった隠し味たちに、こころがほっこりした夜になった。
拙文、お読み下さりありがとうございます。




