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向こう側
カンカンカン――
踏切の音ってこんなに切なかったかっけ。
ガタンガタン――
たくさんの想いを乗せた電車が、光を放って通り過ぎていく。
残していった、冷たい風が髪をなびかせ、口に毛先が張り付く。
フッと小さく笑う。
彼は、よくこの髪を優しい手つきで払って笑っていた。
遮断機があがる。
線路の向こう側。
手を振って駆け寄ってくる彼の笑顔。
一瞬、振りかけた手が止まる。
だって、もう傍にいないから。
あの日から、ずっと。
車のテールランプと街灯の灯りが滲んでいる。
頬にヒヤリとした感触。
雪……
ひらひらと白い花びらが舞い落ちてきた。
そっと手を出すと、
手のひらにそっと乗って溶ける。
彼と初めて会った日も。
告白された日も。
初めてキスした日も。
そうだった。
それに……。
カンカンカン――
胸の前で手を添えて、マフラーに顔をうずめる。
伝えられなかった、想いが溢れてきて。
会いたいなって、また思ってしまった。
トホホだよ。
拙文、お読み下さりありがとうございます。




