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エッセイ・短編たちのおもちゃ箱  作者: ぽんこつ


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風の中の記憶

「ちゃんと説明してほしかった」 とか、

「せめて理由くらい言ってよ」 とか。


私もずっと、そう思ってきた。

何も言わずにいなくなる人のことを、

勝手だなって、思ってきた。

嫌う気持ちさえあった。


でも、ある日ふと気づいた。

“黙っていなくなる”って、

もしかしたら、それ自体がすごく勇気のいることなんじゃないかって。


言い訳もしない。

正当化もしない。

憎まれてもいい。

嫌われたっていい。


相手にすがることなく。


ただ、そっと背中を向けて、 その人の人生から、自分を削ること。


それって、 好きな人の未来に「自分がいないほうがいい」って 自分で決めるってことなんだよね。


たとえば、私が誰かのことを本当に好きで、 でも、その人の幸せを願うほどに、 「私の存在が、あの人を曇らせてしまう」って気づいてしまったとしたら。


きっと、何も言わずに、身を引いてしまうかもしれない。


独りよがりかもしれないけど。


それは自己犠牲だ、

とか、

勝手な美学だ、って言われるかもしれない。


でも、そこにしか行き場がない気持ちって、本当にあるんだと思う。


もし、いつか。

理由も告げずに去った誰かのことを、ふと思い出すことがあったら。


「もしかしたら、あの人なりのやさしさだったのかも」って、

ほんの少しだけ思えるようになれたらいい。


本当に大事にしていたからこそ、

何も残さず、

風みたいに消えていったのかもしれない。


その人が消えても、

やさしさだけが、

じんわりと、

そこに残っていたなら。


それはきっと、ちゃんとした「さよなら」だったのかもしれない。

拙文、読んで下さりありがとうございます。

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