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エッセイ・短編たちのおもちゃ箱  作者: ぽんこつ


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本の中で育った子


ねえ、どうしてそんなにやさしいの?

素直にごめんねって言うし、うれしいことがあると、声に出して笑える。

誰かが泣いていたら、自分のことみたいに胸を痛めて、

誰かが笑っていたら、それだけで今日がいい日になる。


そんなふうに、

そっと心を差し出すようなやさしさを、

どこで覚えたのかって、ずっと不思議だった。


でも、あるとき思ったんだ。

きっとあなたは、「誰かの想い」を読むことで、

「誰かの痛み」も、「誰かの祈り」も、

何百回、何千回。

ううん「何万回」と誰かの心に触れてきたんだね。


本の中には、

言葉にならなかった涙や、

誰にも届かなかった願いが、

まるで置き手紙のように、ページのすみに眠っている。

きっとあなたは、そんな欠片を拾い上げる子だったんだ。


だから、

あなたのやさしさは、ふわっと心をあたためる。

日なたの匂いがする毛布みたいに、そっと包み込む。

安心できる、そんなぬくもり。


すがすがしい天色の日も。

しとしとと大地を潤す鈍色の日も。

しんしんと降り積もる白銀の日も。

きらきらと星が瞬く虹色の日も。


そこにいる猫や蝶。

花や落ち葉一つ。

雨音や会話の声。

服や傘といった道具にも。


あたたかな眼差しを向けているから。

そうやって、いくつもの想いに寄り添ってきたから。

ぬくもりにやさしさに満ちた言の葉の調べを綴れるのでしょう。

あなたが紡ぐ物語は、愛に溢れているから。


ねえ?

あなたの中に生きてる言葉たちは、

今日もあなたのことを、そっと育ててくれているかい?


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