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エッセイ・短編たちのおもちゃ箱  作者: ぽんこつ


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寄り添う


悲しみは癒えない。


本当に悲しいとき、心はそこにない。

「悲」という字は、心が“非ず”と書く。

心が、その場から離れてしまう。

現実に足がつかなくなる。

笑顔も、言葉も、すべて“外側の演技”になる。


「悲しみ」は癒えるものではなく、寄り添うものなのだと思う。

乗り越える必要はない。忘れる必要もない。

忘れることが「美徳」とされているのは、

あたかも人が“強くなった”ように見せかけるためだ。


でも、本当の強さとは何だろう。

それはきっと、

その人の傷を受け入れ、

涙を流す姿をそのまま肯定し、

黙って隣にいられること。

――そう、寄り添うということ。


悲しみは、乗り越えたわけじゃない。

時間が癒したわけでも、忘れたわけでもない。


寄り添った人がかけてくれた、なにげない言葉。

美しく大らかな自然の息吹。

それらが、私に小さな光を見せてくれた。


ほんのちょっとしたきっかけが、

悲しみから、そっと救い上げてくれることがある。

そのことを、どうか覚えていてほしい。


悲しみは消えないし、癒えない。

だけど、その光があったから――

私は「それでも、生きていいんだ」と思えた。


そこではじめて、人はほんのすこしだけ、

“救われる”のかもしれない。

拙文読んで下さりありがとうございます。

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