だってしちゃうもん
執筆しようとすると、必ずと言っていいほど邪魔が入る。
いや、正確に言えば、「私が自分で自分を邪魔している」の。
さあ、今日こそは本編に取りかかるぞ――
そう意気込んでパソコンに向かった瞬間、脳内で別のキャラクターたちがパーティーを始めてしまう。
「おい、俺のスピンオフ作るって言ってたよな? そろそろ出番だろ?」
「ねぇねぇ、もしこの世界が全部夢だったらって設定、どう?」
「ここで突然ドラゴンが出てくるとか、ありじゃない?」
「ちょっと聞いて! 恋と友情と裏切りと復讐が同時に起こる学園モノ思いついた!」
「これはハッピーエンド間違いない!!」
……静まれ、私の脳内。
今書こうとしているのは老人ホームを舞台にした恋愛ものだ。
いくつになったって、恋ぐらいしてもいいでしょ?をテーマの作品。
ドラゴンは出ない。
学園も爆発しない。
でも、なぜかそっちのアイデアのほうがキラキラして見えるのが悔しい。
浮気心がバレたときの恋人みたいに、本編の登場人物たちが遠くで冷たい目をしている。
「……で? 君、また別のアイデアに浮気して、戻ってくるんでしょ?」
やめて。
正論はやめて。
結局、私はパソコンに本編の1行も書けぬまま、なぜか“魔法少女と悪徳市長の戦い”のプロットを7ページ分書いていた。
何やってんの私。
それでも私は机に向かう。
今日こそ、本編を進めるために。
……と言いながら、今、新しく思いついた“動物たちが国会で揉める”話をメモしている。
総理大臣・リクガメ。
演説に1時間、演説会場まで3時間。
「一歩ずつ、確実に」が信条。
ただし移動が遅すぎて会議が始まらないので、最近は“身代わりの甲羅”を議場に置いている。
支持率は低空安定。誰も期待してないけど、なぜか叩かれもしない。
官房長官・インコ。
自分の発言はすぐ忘れるが、他人の発言は完璧にオウム返し。
記者会見では「首相のご意向です」が口癖。
最近は“ピーちゃん”としか呼ばれていないが、なぜか国政に詳しい。
与党の誰よりマニフェストを覚えている。
防衛大臣・柴犬。
見回りは完璧、危機察知能力も抜群。
ただし郵便物に過剰反応するのが欠点。
緊急速報のサイレン音に「ワン!」と吠え返す姿が防衛庁で人気。
演説中に「おすわり」と言われると座ってしまうのが、今最大の課題。
文部科学大臣・シマリス。
質疑中に机の上でぐるぐる回る。
しゃべる内容は膨大だが、1時間後には本人が全部忘れている。
どんぐりを教材に含める新カリキュラム案が物議を醸す。
「脳内が体育祭」と呼ばれている。
厚生労働大臣・ブタ。
“命の重み”を語るときの説得力が異常。
誰よりも静かに、誰よりも重たく語る。
ただし「カロリー制限」という言葉が出ると、眉間にシワが寄る。
食育について話すときだけ、なぜか涙ぐむ。
国会議長・ヤギ。
読み上げた法案をそのまま食べるので、記録が一切残らない。
「採決します」と言ったあと、静かに書類をモグモグ。
議事録担当からは「敵」と呼ばれている。
ペーパーレス化反対の急先鋒。
最近「法案を食べることは否決とみなすべきでは?」と問題提起された。
デジタル担当・タコ。
8本の足で同時に8端末操作できる。
「マルチタスクの鬼」と呼ばれるが、たまに自分の足にコードが絡まってフリーズ。
「クラウドは信用できない」が口癖。
「海底国家構想」を抱いている。
野党のボス・マンドリル。
声ばかりデカくて、叫ぶのが得意、理論はゼロ。
語尾に「知らんけど」がつく。
政界のフィクサー・白うさぎ。
誰より耳がいい。誰より喋らない。気づいたら、全部あいつのシナリオ通り。
音響技術主任・かえる。通称:ゲロさん。
毎朝マイクテストに「ゲロゲーロ」と言って本当にテストしてる。
会議中、マイクがノイズると“反射的に鳴く”ため、
起立・採決のタイミングがいつもズレる。
総理から「君、黙ってると仕事できるよね」と言われたことがある。
名札には“主任”とあるが、呼ばれる時はだいたい「ゲロさん」で統一されている。
どこにでも擦り寄って、ゴマスリし続けるペンギン議員。
気持ち良さそうに居眠りしている、ベテラン議員のカピバラ。
起立を求めていないのに、どんな法案にも立ち上がるミーアキャット。
妙にリアルで腹が立つ。
……これはこれで、おもしろそう。
私の脳内よ、妄想よ、お願いだから、そろそろ黙って。
拙文お読み下さりありがとうございます。




