9. 思い込みによる幸福の幻想
人はしばしば「幸福だ」と感じながら、実際には安定した幸福を得ていない場合がある。これは、思い込みによって作られた幸福の幻想である。幻想の幸福は一時的に心を満たすが、持続性に欠け、現実との乖離が露呈したときに強い不満や虚無感をもたらす。
1. 過大評価による幻想
思い込みの一つは、自分の能力や状況を過大評価することから生じる。「自分は成功を収めつつある」「他者より優れている」と信じることで一時的に満足感が得られる。しかしその評価が事実と乖離していれば、現実との落差が明らかになった瞬間、幸福感は崩壊する。
これは「勝手に高いリターンを得ていると思い込む」ことで生じる擬似的な幸福であり、安定性を欠いた脆弱な構造である。
2. 過小評価による幻想
もう一つの思い込みは、逆に自分を過小評価することから生じる。「自分はこれ以上望めない」「この程度で十分だ」と思い込むことで安心を得る。しかしそれが事実ではなく、実際にはより良い環境や成果を得られる可能性がある場合、その幸福は「現実から逃避した偽りの満足」にすぎない。これもまた幻想であり、長期的には「本当はもっとできたのに」という後悔を生む。
3. 幻想の幸福と安定した幸福の違い
幻想による幸福と、現実に基づく安定した幸福の違いは、時間の経過に耐えられるかどうかである。幻想は短期的には幸福感をもたらすが、外部環境や比較対象によって簡単に揺らぐ。対して、現実に即した幸福は、多少の変動があっても揺るぎにくく、長期的に維持される。
4. 幻想を排除するために
思い込みを排除し、幻想の幸福から脱却するためには、やはりメタ認知が不可欠である。自分の能力や状況を事実に基づいて評価し、過大・過小の両極を避ける。さらに、他者の価値観に依存せず、自分にとって本当に意味のあるリターンを見極めることが求められる。
結論として、思い込みによる幸福の幻想は、安定した幸福の最大の敵である。幻想は幸福を「錯覚」として与えるが、必ず破綻のリスクを孕む。幸福を持続させるには、幻想に逃げ込むのではなく、現実を受け入れた上で妥協と満足を選び取ることが不可欠である。
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