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『幸福の天秤』  作者: 天秤座
1章:幸福の基準を問う
3/19

3. 妥協と満足の関係性

 幸福を成立させる要素として、リスクとリターンの釣り合いを指摘した。しかし、この釣り合いを個人がどの位置で受け入れるかは、自動的に決まるものではない。ここで不可欠となるのが「妥協」という行為である。


 妥協とはしばしば「諦め」や「後退」といった否定的な意味で語られる。しかし論理的に見れば、妥協とはむしろ 現実に即した調整行為 である。人間が持つ欲望や理想は際限なく拡大し得るが、それを無制限に追い求めればリスクは急増し、リターンを享受するどころか破綻に至る危険が高い。したがって、「ここまでで十分」と判断し納得する能力こそが妥協の本質である。


 妥協は単なる我慢ではない。妥協が適切であれば、それは「満足」に転化する。例えば、理想的な収入に届かなくとも、日常生活が安定し、家族との関係が保たれているとき、多くの人は十分な幸福を感じられる。このとき妥協は「不足の受容」ではなく、「充足の再定義」として機能しているのである。


 逆に、妥協が成立しない場合、幸福は不安定化する。常に「もっと上がある」という比較の視点が働き、どれほどのリターンを得ても不満が残る。現代社会において幸福が得にくい理由の一つは、情報過多により妥協が困難になっている点にある。他者との無限の比較の中で、自分の位置を受け入れることが難しくなっているのだ。


 結論として、妥協は幸福の安定化装置であり、満足はその結果として生じる副産物である。幸福をリスクとリターンの天秤で測るならば、妥協はその天秤を静止させる「錘」の役割を果たす。リターンがいくら大きくても妥協がなければ釣り合いは失われ、満足は訪れない。逆に、適切な妥協があれば、限られたリターンでも十分に幸福を感じられる。


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