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失敗の沼に沈んで

日本という国は、古き伝統と現代文化が違和感なく共存している場所だ。

そして「演劇」もまた、何世紀にも渡って日本文化の一部であり続けてきた。

最初の舞台は、奈良時代や平安時代における宗教儀式の一環として演じられたものであり、

14世紀には、足利義満の庇護のもと「能」という伝統的な演劇様式が確立されていった。

だが、それ以前にも演劇的な表現は存在していた。

たとえば「神楽」。

これは少なくとも千年以上の歴史を持つ神道の舞踊劇であり、

神社の祭礼などで舞われる、宗教的かつ物語性のある芸能だ。

——ヨシヒロは、そんな歴史を頭の中で反芻しながら、電車の窓越しに東京のスカイラインを眺めていた。

電車はすし詰め状態。座席はすべて埋まっており、立っている人も多い。

彼も最初は座っていたが、腰を押さえていたおばあさんに席を譲った。

大きな夢を抱いて上京した。

だが、その夢の行方は——

考えただけで気分が落ち込んできた。

「ダメだダメだダメだ! ここで諦めたら終わりだぞ、ヨシ!」

自分の頬を両手でペチンと叩く。

その声に驚いたのか、隣に立っていた若い女性が「えっ?」と目を丸くしてヨシヒロを見た。

まあ、いきなり独り言を叫ぶ大男がいたら、誰だって驚く。

気まずい笑みを浮かべながら、小さな声で「すみません」と謝る。

そして、もう一度内側に気持ちを閉じ込めた。

——失敗したぐらいで、何だってんだ。

失敗するのはいつものこと。

失敗なんて、俺の人生にとって通過点にすぎない。

たった一度の成功でいいんだ。

一度でも扉をこじ開けることができれば、あとは道が広がっていくはずなんだ!

……でも。

——でも、これで九十九回目の不合格か。

99回の失敗。

文字にすると、なかなかに重い。

もしかして、本当に向いてないんじゃないか……?

タカシさんの言ってたこと、全部正しいのかも……。

やっぱり俺の演技は“最悪”で、全然感情がこもってなくて……。

もう、諦めた方が——

その時、ポケットの中でスマホがブルッと震えた。

考えがさらに暗くなる前に、ヨシヒロは慌ててスマホを取り出す。

LINEに未読メッセージがひとつ。

送信者のIDは――

「Fire_Breathing_リュウミ」

Fire_Breathing_リュウミ:オーディション、どうだった?

……返事に迷う。

また落ちたなんて言いたくない。

でも、彼女はすでにキャストの一員だから、どうせすぐにバレる。

Yoshi_0110:ダメだったよ。


リュウミって誰?第2話を覚えていますか?彼女の第一印象はどうでしたか?

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