汝、我を魅惑的と想うか?
ティアマトは微笑んだ。
「見よ、この姿に魅せられしそなたの瞳を。これは幸運なことぞ。いまだかつて、いかなる人間もこの姿を見た者はおらぬ。神々すら同じ。我が夫アプスーも、寵愛せしキングウも、この姿を目にしたことはない。」
数秒遅れて、ヨシヒロはようやくこの女性の正体に気づいた。その口調、そして言葉遣い……以前にも、こんな風に話す存在がいたはず。だが、あれは夢ではなかったか?
「……ティアマト?」彼はおそるおそる尋ねた。
「然り。我はティアマトなり。この人の姿にて、そなたは我を見分けられぬか?」
ティアマトはそう言いながら、胸の膨らみを指でなぞり、髪の隙間から覗く淡い桃色をちらつかせた。
「無理もなし。神々でさえ知らぬ、我が変化の術。だが――長き時を絶食しており、今は飢えを覚える。我に糧を与えよ。」
……食事?今?
いや、聞きたいことが山ほどあるんだが!?
「ま、まあ…別に食べ物を用意するのは構わないよ」
ヨシヒロは深く息を吸って、昂る感情を抑えようとした。自分は科学の人間だ。例え……その、下半身に反応があったとしても、それだけで動揺するような男ではない。そう――何度も心の中で自分に言い聞かせた。
だが心臓はまるで戦鼓のように、胸を激しく打ち鳴らし続けていた。
「ただ、その前にやることがあるんだ。」
「ふむ、食前に成すべきこととな?……まさか、そなた、我と交わりたいと申すか?」
ティアマトは平然とした顔でそう言い放った。
「そなたの助力には感謝するが、我は誰彼かまわず床を共にする者にあらず。我の寝所に入るには、それ相応の価値を示すべし。」
……理解するまでに数秒かかった。
たぶん脳がまだ機能していなかったのだろう。血が全部、別の場所に行っていたから。
「そ、そんなつもりじゃない!一緒に寝ようなんて、思ってない……たぶん」
「では、何を望むのか、申してみよ」
「まず……冷たいシャワーを浴びたい」
ヨシヒロは視線をそらしつつ、もう一度彼女の胸元をちらりと見てから、顔を背けた。
「それと……服を着てくれないか?どこ見ていいかわからないんだ……」
今回はいつもより少し短めだったかもしれませんが、楽しんでいただけていたら嬉しいです。




