俺と全裸のドラゴン
ヨシヒロは、もともと宗教なんて信じていなかった。
彼は科学の男——少なくとも、父親はそう望んでいた。
けれど父の思惑に逆らって、自分の心に従って生きてきた。
それでも、彼の思考や哲学は、常に「証拠のある科学的な事象」に根ざしていた。
論理と理屈で説明できることしか信じなかった。
超常現象なんて、信じたこともなければ、信じるつもりもなかった。
……そう、自分ではずっと思っていた。
では、なぜ?
なぜ、こんな状況になっているのだろう?
「ヨシよ、シャンプーが切れておるようじゃ。取ってきてはくれぬか?」
目の前に立っているのは、芸術品のような美しい女だった。
彼女の肌は、降りたての雪のように白く、紅い唇と、海を思わせる瑠璃色の髪と完璧に調和していた。
その体つきも実に見事。世の女性たちが夢見る完璧な砂時計型のスタイルを、彼女は生まれつき備えている。
まるで創られた存在のような美しさ……でも、それもそのはず。
この女は、人間ではない。
——ドラゴンなのだ。
しかも、今は全裸だった。
ヨシヒロは、しばらく言葉が出なかった。
彼の目は自らの意思に反して、彼女の足元から全身を舐め回すように見てしまった。
小さく整ったつま先、しなやかで力強い脚、左右対称の完璧なライン。
引き締まったふくらはぎ、魅惑的な太もも。黄金比なんて関係ない。これこそが真の「黄金」だ。
下の毛は綺麗に処理されていたが、彼は既に“上とお揃い”であることを知っている。
そして、その腰回り——広く、いかにも「出産に適した」形をしていた。
彼は一度、「子どもを産むための理想的な骨盤」と呼ばれているのを聞いたことがある。
科学を信じる者として、その理屈も理解していた。
骨盤が広ければ産道も広く、出産しやすくなる。
逆に、小柄で骨盤が狭い女性は難産になる可能性があり、中には帝王切開が必要になる人もいる。
そのどうでもいいような考えが、彼女の腰からお腹へと視線を移す間にも脳内を駆け巡っていた。
その腹筋の滑らかさと引き締まり具合……まさにショットグラスを乗せられそうなほど完璧だった。
そして、その上にある胸へと——。
大きすぎず、小さすぎず。
左右対称の涙型で、ほんの少し持ち上がったフォルムは、まるで頂に積もった雪のように誇らしげにピンク色の頂点を晒している。
胸なんて今までに何度も見てきた。
この女の胸も、実のところ何度も目にしている。
だが、それでも飽きることはなかった。
日本に来てから、ある言葉を耳にしたことがある。
「女の胸には、男の夢と希望が詰まっている」——と。
今なら、その言葉を生み出した誰かの気持ちがよく分かる。
この“夢みたいなバスト”こそ、その証拠だった。
科学と論理、そして理性の男であるはずのヨシヒロですら、彼女の胸を前にしては、すべての理性が霧散してしまうのだった。
いや、むしろ最近では、あの胸には「独自の重力」が存在するのではないかと本気で考え始めていた。
そうでもなければ、なぜ目が引き寄せられるのか説明がつかない。
「ヨシよ、そなた、我が言葉を聞いておらぬのか? シャンプーが切れておると申したであろう?」
「……聞こえてるよ。」
努力して口を開く。これが初めてではない。
彼女が全裸でうろつくのは、もはや日常の一部と化していた。
「聞こえてたけど、そっちこそ俺の言うこと聞いてないだろ? 何度言ったらわかるんだ。家の中を裸で歩き回るなって!」
「ここは屋内ぞ。窓も締め切っておるゆえ、問題はなかろう?」
「いや、問題しかないから!! その尻尾でまた何か壊されたらどうすんだよ?!」
第1話を読んでいただきありがとうございます!あの全裸のドラゴン娘は誰!?なぜヨシヒロの家にいるの!?そして、なぜ第1話から裸の女性が出てくるのか!?…すべての答えは、いつかどこかで明かされる予定です。どうぞお楽しみに!