第三章 新手村についたか?ここはまた何なんだ?
ぼんやりと目を開ける。さっきまで気を失っていたようだ。訓練も受けていないんだから、無事に着地できただけでも上等だろう。
「アドレナリン注射、準備!」
──キャビン内から電子音声の女声が響き、疑問に思っていると手首に鋭い痛みが走った。これで完全に目が覚めた。
「生命体徴安定。ハッチオープン中」
バンッ!という音と共にハッチが吹き飛んだ。青い空を見上げて、深くため息をつく。
体を起こして周囲を見渡す。森の中の開けた場所に降りたようだ。右前方20メートルほど離れた場所には、あの女神が降下ポッドの横で膝を抱えて呆然と座っている。
慰めてやろうと近づいたが、こいつは頭も上げずに「もう終わった…」と繰り返している。急に連れて行く気が失せてきた…
「まあ来たからには、問題解決するまで帰れないんだろう?だったら俺と協力してさっさと魔王を倒した方がいいだろ。それに『大和』があるんだから、魔王もそのアジトも一瞬で吹き飛ばせるんじゃないか?……って、どこに降りたんだ?おい、聞いてるか?」
「はっ…甘いわね」スナは生きる希望を失ったような顔で言った。「この世界の難易度は元々高めな上、魔王が二人いるのよ…オタクのあなたの能力じゃ、武器なしでこの森さえ抜けられないだろうに。魔王を倒すだって?今夜を乗り切れるかどうかから考えなさいよ…」
言われてみれば確かにそうだ。高校生の俺と引きこもり女神が何も持たずに野ざらし。冒険が始まる前に終わってしまうのか?まさか!
「何だよ、『大和ホテル』があるじゃないか!異世界感は台無しになるけど、今夜をしのぐくらいなら問題ないだろ!」
「大和ホテル…何言ってんの!」彼女は泣きながら叫び、俺の襟首をつかんで激しく揺さぶった。「『大和』を起動するのに必要なスキルポイントを知ってる?あなたが今どれだけ弱いか分かってる?直接使える武器を選ばなかったからこうなるのよ!もう終わりなの!終わりって分かる!?」
「待て!今の俺じゃ『大和』に連絡もできないってこと?」
「当たり前でしょ!」揺さぶりがさらに激しくなる。
やばい、完全に素手スタートでお荷物付き、しかも謎の森のど真ん中か。ちくしょう、普通のRPGみたいなスタートじゃダメだったのかよ!
「落ち着け!街さえ見つければいいんだろ?あとはお決まりのパターンだ。お前だって知ってるはずだ!」
彼女は鼻をすすりながら「分かってるよ…でもやっぱり悔しい!うぅ…」
「は?」じゃあさっきのセリフは何だったんだ?ただ俺と一緒にいたくないだけか?
俺は彼女の肩に手を置き、重々しく言った。「すまん!俺が弱すぎて女神様のご期待に沿えませんでした。どうぞ真の強者を見つけて早く魔王を倒し、天界にお帰りください!ここでお別れです!」
そう、捨てるつもりだ。どう見ても足手まといにしかならないんだから。