第一章 女神?ただのゲームオタクじゃん?
まぶしい! さっきまで何してたっけ? まあ、思い出したくもないし、誰かライト消してくれないかな!
私は寝返りを打って、抱きしめていたものをしっかりと抱えた。でも、なんで反対側もこんなに明るいんだろう? 突然思い出した。この時間、学校に行く途中だったはずだし、もう起きたんじゃなかったっけ? 待てよ、それはどうでもいい…重要なのは、ここは家じゃなくて大通りのはずだってこと!
そう思った瞬間、冷や汗が背中を流れた。慌てて起き上がると、ああ、最悪だ…路上で気を失ってたなんて!
しかし、目の前にある柔らかい太陽のような光を見たとき、ある考えが頭をよぎった。
「まさか…」 私は小さな声でつぶやいた。
その時、背後から女性の声が聞こえた。「ねえ! 後ろにいるんだから、振り向いてよ!」
振り向くと、銀色の長い髪、淡い赤い瞳、どこかのキャラクターのコスプレのような衣装を着た美少女が、椅子に座って足を組み、左手で頬杖をつきながら、嫌そうな顔で私を見下ろしていた。
イラっとくるけど、多分これが所謂「女神」なんだろう。なら話はわかる。
私が口を開く前に、彼女は傍らの小さなテーブルからタブレットのようなものを取り出した。「小鳥遊和也? これ、女の子の名前じゃないの?」 彼女は嘲るように言った。
オタクだし、普段は温和な性格だけど、彼女には本当にムカつく!「はい、そうです」 私は怒りを抑えて答えた。
彼女はタブレットをスワイプし、途中で止めて私を見た。そしてまたタブレットを確認した。どうやら何か特別な能力やとんでもないステータスに驚いて言葉を失ったようだ。そして、これから「勇者」として異世界に転生させ、苦しむ世界を救う任務を与えるんだろう。これは定番の流れだ。最悪、彼女を巻き込むこともできるかも…あ、これって著作権的にまずい? まあいいや、どうせこんなもんだ!
「あなた…」 彼女がまだ言い終わらないうちに、私は立ち上がって遮った。「余計な説明はいいから、異世界に転生するんでしょ? 早くスキルと装備を選ばせてくれ。近戦は苦手だけど、遠距離ならまあまあだ」 こんな中二病全開のセリフを、どこから勇気を出して言えたのか自分でもわからない。
「えっと…違う。さっきはただ『お前はオタクだ』って言おうとしただけ。でも今の様子見ると、履歴に書いてある通りみたいね」
私は凍りついた。目の前にゴミ箱があったら、迷わず飛び込んでいただろう。
「まあ、それでもいいわ。説明が省けるから」 彼女は立ち上がり、続けた。「剣と魔法の世界については、あなたもよく知ってるでしょ? 細かい説明はいらないわ。転生したらすぐわかるから。転生前に、特別な武器とスキルを与えるわ。そう、まさにチート級のものよ! ただし!」 彼女はここで話を止めた。
「そこで止めるなよ! チート能力にペナルティとかあるのか?」
「あ、それはないわ。ただ成長システムがちょっと面倒なだけで、他は問題ないわ」 彼女は淡々と言った。「でも本当の問題は、この世界の魔王よ。まあ、あなたが会えるかどうかも怪しいけど、アニメで見るような魔王とはちょっと違うわ」
「どんな違いだよ? せいぜい魔王が善人ってことか?」 私は腕を組んで言った。
「いいえ、この世界には魔王が二人いるの」
「マジかよ、一人でも厳しいのに、二人も?」
「そう。しかも、そのうちの一人は転生した勇者なの。元々の魔王よりも強く、今まで送り込んだ転生者のほとんどは彼の手にかかってるわ」
「待てよ、勇者だった奴が魔王になったってことは、お前が送り込んだんだろ?」
「そんなことどうでもいいわ! 次のステップに進みましょう!」 彼女は話題をそらした。明らかに動揺してる。女神も慌てるんだ?
「まず俺の質問に答えろ!」
「あ、あの…!」 彼女は冷や汗をかき始めた。女神も冷や汗かくの? 最初の威張った態度はどこへやら、完全に弱気になっていた。
「もしかして、お前の仕事のミスでこうなったんじゃないのか? それで、運任せで転生者を送り込んで、問題を解決しようとしてるんだろ?」 私は推測を口にした。
ドサッ! あ、女神が跪いた。女神が一介の凡人オタクに土下座した。
「ごめんなさい!」 彼女は涙をこらえ、悔しそうに俯いた。
「じゃあ、俺を捨て駒にするつもりか?」 私は呆れて言った。
「それは…」 彼女は言い訳もできなくなっていた。
「まあ、いいよ。一度死んだ身だし、チート能力もらって転生すれば、そこそこいい人生送れるだろう」
「ダメ!」 彼女は突然立ち上がり、私の襟首をつかんだ。「転生できる枠も残り少ないんだよ! これ以上問題が解決できなかったら、クビになっちゃう! こんな楽な仕事、他にどこにあるんだよ!」 どうやらこの女神、引きこもりだったらしい。もう女神の威厳なんてどこにもない。凡人オタクに泣きついてる。
私は彼女を押しのけた。「お前のミスなのに、なんで俺が第二の人生を捧げなきゃいけないんだよ!」
「お願い! せっかく転生させてあげるんだから、助けてよ! オタクって異世界行きたがるんでしょ? それに、これってあなた自身の願いでもあるんだから!」 彼女は興奮しながら私の髪を引っ張った。
私は彼女の頬をつねり返した。「痛い! 痛いよ! まず落ち着け! なんで俺の願いだって言うんだよ!」
「溺れかけてた時に願ってたじゃん!」
私は手を離し、彼女も私を解放した。「心の中で『異世界行ってみたい』って思っただけで、それが願いとして通るのかよ! それに、オタク呼ばわりするな! この引きこもり女神!」
「引きこもりじゃないわ! 私はあなたの世界の月の女神よ! 月の女神!」 彼女は怒って叫んだ。
「だから何だよ! どうせ死ぬんだったら、こんな危ないことやりたくない!」
「えーん!」 (鼻をすする音)
「泣いてもダメだ!」 私はその場に座り込んだ。
「わーん!」 彼女は本当に泣き出した。
うるさい…これが女神か? ただの引きこもりオタクじゃん。見た目と中身が違いすぎる。私は彼女から顔を背けたが、彼女はさらに大声で泣き始めた…
でも、この転生のチャンスを捨ててやり直すのか? まあ、異世界に行けるなら悪くないし、チート武器と能力もついてくる。ただ難易度が高すぎる。それに、敵側にも転生者がいるし…
あーもう! どうでもいい! 私は立ち上がり、彼女の頬を両手でつかんだ。「うるさい! 転生の枠ってレアなのか?」 もし枠がレアじゃなかったら、やめておくけど…
彼女は鼻をすすりながら言った。「どうかな…半年に一回? たまにもっと長いときもあるけど、あなたの転生枠を待つのに半年かかったの。もし行かないなら、また枠を失うことになるわ」
「もう一つ聞いていいか? 今まで他の転生者にも同じように頼んでたのか?」
彼女は私の手を振り払い、「まさか! 仕事してて、あなたみたいに手強い相手は初めてよ! あれ? ってことは、行ってくれるの?」
「ああ、でも条件がある!」
「はい! 何でも聞きます! 行ってくれるなら!」 どうやらこの女神、頭はあまり良くないらしい。「じゃあ武器を選びましょう! 既存の武器から選ぶ? それともガチャ? 個人的にはガチャがおすすめよ。神器が出やすいし、探す手間も省けるわ」
は? ガチャもありか?「じゃあ…ガチャで。でも、罠とかじゃないよな?」
「まさか! あなたたちが魔王を倒せるかどうかで、私の仕事がかかってるんだから!」
「まあ信じるか…」
彼女はタブレットを私に渡した。「どうぞ! 最悪でもチート級の武器が出るわ! 神格をかけて保証する!」 彼女は自信満々に言った。
しかし、タブレットを見た瞬間、私は固まった。この黄色い箱、下に並ぶレア武器、そして金色の大当たり…
私は彼女を呆れた目で見た。「あの…どうかしましたか、和也さん? 下の『開封』を押せば始まりますよ!」 彼女は楽しそうに言った。
「G胖のスパイかお前は! 神様がCSGOのガチャシステム使うなよ!」
「若者に合わせたのよ! だから抽選方法をアレンジしたんだから」
「お前が好きなだけだろ!」 私は怒ってタブレットを振りかぶった。
「待って! 落ち着いて! 他にも抽選方法あるわ!」 彼女は慌てて私の手を押さえた。
「早く言えよ」 私は手を止めた。
「ごめん! 説明不足だったわ! 仕事が雑で!」 彼女は何度も頭を下げた。
「早く出せ!」
「はい! すぐに!」 彼女は椅子の後ろに走り、ドアを開けて何かを探し始めた。
女神にここまで畏敬の念を抱かせた凡人、私が初めてなんじゃないか? なんだかちょっと嬉しい。
彼女はなかなか戻ってこない。私はイライラして、自分でもドアの方へ歩いた。もちろん、中の様子を見たいからじゃない。単に早く探させたいからだ。ついでに手伝ってやるだけだ!
ドアを跨いだ瞬間、目の前の光景に私は驚愕した。部屋の乱雑さではなく、大きな窓の外には地上の景色ではなく、宇宙空間が広がっていたのだ! これは間違いなく地球ではない。見慣れた大陸はどこにも見当たらない。
「これ…宇宙空間か?」 私は小声で聞いた。
「違うわよ、ここはまだ神霊空間よ。窓の外が宇宙なの!」 彼女はガサゴソと探し物をしながら答えた。
「いや…女神から『宇宙空間』って単語を聞くとなんか違和感が…」
「細かいこと気にしないで!」 彼女はゴミの中から段ボール箱を引っ張り出した。「やっと見つけた!」
私は近寄り、何が出てくるか想像していたが、彼女が箱を開けると、中には手動式のビンゴ抽選器が入っていた。商店街でスタンプ集めて引く、あのタイプの。
「やっぱり最初のガチャでいいわ…」
「え? せっかく探したのに、元のに戻すの? 私の努力を尊重してよ!」 彼女はまたべらべら文句を言い始めた。私はタブレットに目を戻した。どうせ私の運なんてこんなものだ。ガチャは当たったことないし、雨の日は必ず傘忘れるし、寿命だって短かった…
はあ…私は『開封』を押し、窓の外を見た。転生後の準備を考え始めよう。また早死にしないように…
バカ女神は私がガチャを引いたのを見て、タブレットに顔を近づけた。しかし、彼女の表情は次第に歪み、信じられないような顔で私を見た。
まさか…レアか…「あ! あ! あ! あ!」 金色、全カスタム可能なファンタジー級武器!
「こ、これが出たの…前回はあの魔王だけよ」 女神は震える声で言った。
「じゃあ、これで奴を倒せるんじゃないか!」 私は喜んで叫び、どんな武器にするか考え始めた。突然、ある考えが頭をよぎった。
宇宙戦艦って独立武器として認められる? 『宇宙戦艦ヤマト』って独立した武器だよな? もし可能なら、それをお願いしたい…まさか無理だろうけど!
そう思った瞬間、引きこもり女神は独り言のように何かをつぶやいていた。聞いてはいなかったが、たまたま耳に入った。「最初に思い浮かべた武器がそのまま確定され、元の設定に加えてランダムな属性も付与される…」
「待て! 今何て言った?」 私は恐怖に満ちた目で彼女を見た。
「最初に思い浮かべた武器が転生時に持っていける武器になるの」
「どんな制限があるんだ?」 私は聞いた。
「ファンタジー級武器なんだから、アニメやゲームに出てくるようなものなら何でも実現できるわ。心配しないで!」 彼女は涼しい顔で言った。「アドバイスしてあげようか?」
私はタブレットを見た。既に生成中と表示されていた。「選んだ? 何を選んだの? 刀? 杖? なんでこんなに時間かかってるの?」 この女神、まだ事の重大さに気づいていない。
彼女はまたタブレットに近寄った。「どんなアニメやゲームの神器を選んだの? 生成に時間かかってるけど、変なもの選んだんじゃないでしょうね?」
「ヤマト…」 私は小さな声で言った。
「え?」 彼女は聞き取れなかったようで、さらに近づいた。
「ヤマト…」 私はさらに小さな声で繰り返した。
「どのヤマト? 待って…あのヤマト? 海の?」 彼女は聞き返した。
「いや、空飛ぶ方の…」 私はかすかに言った。
彼女の表情は再び凝固し、驚き、そしてまたも信じられないという顔になった。「ありえない、ありえない、こんなのありえない、絶対ダメだよ、今まで見たことない…なのに生成されてる…」
「あの…生成中みたいだけど、問題ないよな?」 私は慎重に聞いた。
「私に聞かれてもわからないわよ!」 彼女は頭を抱えて崩れ落ちそうになった。「今までカスタム武器を手にした転生者なんて数人しかいないのに、あなたとあの魔王は本当に…いや、あなたの方がもっと酷いわ!」 彼女はまた私の襟首をつかみ、泣きわめいた。
その時、生成の進捗が完了し、窓の外に青い光の線が船体の輪郭と内部構造を描き始めた。そして、船首から徐々に実体化していく。
「おい! 本当に生成されたぞ!」 私は叫んだ。
彼女は泣き止み、窓の外を見た。そこには、一つの宇宙戦艦が浮かんでいた。