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第54話 アダムの話 1

「私はソフィアさんの為にあの屋敷をプレゼントする為に購入しました。ゆくゆくは貴女とご両親があの屋敷に家族3人で一緒に暮らせるように。ソフィアさんがいずれ結婚してあの家を出るまでの間はね」


アダムは静かに語りだし、ソフィアは驚きで目を見開いた。


「え? ちょ、ちょっと待って下さい。あの屋敷は、私とアダムさんの新居にするために購入した屋敷では無いのですか? それがプレゼントなんて……でも、一体どういうことなのですか? 私がいずれ結婚するまではって……私たち、結婚したのでは無かったのですか?」


「確かに式は挙げましたけど、籍は入れていません。そのポスターを見たと言うことは、苗字が変わっていないことに気付いていますよね?」


「はい。でも何故なのですか? もしかして、あの時のセリフと籍を入れていなかったことと何か関係があるのですか?」


「あの時のセリフ?」


首を傾げるアダム。


「はい。私におっしゃいましたよね? 『君への気持ちは冷めたので、今後一切こういう真似はしないでいただきたいって』だ、だから……私、ショックで……」


ソフィアの目に涙が溜まる。あの時の言葉を思い出すと、今も悲しみで胸が潰れそうになってしまう。


「違う! あれはそういう意味で言ったんじゃない! わざと、あんなことを言ったんだ! そうでもなければ……自分を押さえることが出来なかったからなんだ!」


アダムは感情を露わにした。それは今迄一度も観たことが無い姿だったので、ソフィアは驚きで涙が止まってしまった。


「あ、あの……アダムさん……?」


するとアダムは深いため息をついた。


「クソッ! ……ついにやってしまったか……でも、今更取り繕ってもどうしようもないな……」


アダムは前髪をクシャリとかきあげる。


「驚いたか? でもこれが俺の本当の姿だ。今迄君に自分を良く見せる為に猫を被っていたんだよ。何しろ君は子爵家の令嬢だが、俺はただの成り上がりの平民。学問だって大したことない。いつ、メッキが剥がれてもおかしくない人間なんだ。これが一緒に暮らさなかった理由の一つでもあるけどな」


アダムはここで一度大きく息を吐くと、続けた。


「俺は初めて会った時から君に惹かれていた。だが、身分に違いがあり過ぎる。いくら仕事で成功して金持ちになっても、所詮は平民。こればかりはどうしようもない。だから……近くで見ているだけで十分だった。お金に困っていることを知って、援助を考えたこともあるけど、どうしてあげれば良いか方法は分からなかった」


「……」


ソフィアは黙ってアダムの話を聞いている。


「そんな時、君に縁談の話が来ていることを知った。然も相手はあの評判の悪いゲイル・マッキンリー伯爵だ。あの男の素行の悪さは有名だからな。恐らく金の為に親に命じられたのだと思ったよ。その話を聞いた時……何て気の毒だと思った。君には好きな相手もいたと言うのに……」


「え? 好きな相手って……」


ソフィアは確かに縁談話をした時、好きな相手のことをドナに話した。勿論その人物はアダムのことだが。


「俺はゲイル・マッキンリーの弱みを知っている。そこでまず彼の元を訪れて、弱みをネタに揺すって、縁談話を取り消させた。その後、君の父親の元を訪ねたんだよ。ソフィアを妻にしたいってね」


アダムはソフィアをじっと見つめた――



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