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第50話 意外な場所

—―翌朝


6時の始発列車に、ソフィアの姿があった。

目指すは『ロゼッタ』駅。ここにソフィアが……そして、アダムが暮らしている町がある。


「アダムさん……一体、貴方は何を考えているのですか……?」


ポツリと呟くソフィアの手には、小さく折りたたまれたポスターが握りしめられている。このポスターも今朝、駅前の交番にある掲示板に貼られていた。

いけないこととは思いつつ、ソフィアは周囲に人がいないことを確認すると、急いで引き剝がしてきたのだ。


「この分だと、全ての駅に私の懸賞金付き捜索願ポスターが貼られているかもしれないわ。……本当に一体何を考えているの……?」


一刻も早くアダムに会って、真相を問い詰めるのだ。

ソフィアは固く心に決めるのだった——


****


—―14時


およそ8時間の汽車の旅を終え、ソフィアは自分の故郷がある『ロゼッタ』の駅に到着した。


「1カ月ぶりの町ね……」


しかし、感慨にふけっている暇など無い。

ソフィアは駅前で客待ちをしている辻馬車を見つけると、御者にアドレスを告げて馬車に乗り込み……ゆっくり馬が走り出した――


****


 馬車に揺られ、窓の外を眺めながらソフィアは首を捻っていた。

アダムの住んでいるアドレスを見せたところ、御者が困惑の表情を浮かべて「本当にこちらで間違いないのですか?」と尋ねてきたからだ。


「おかしいわね……。何故、あんな顔をしていたのかしら? もしかしてそこへ行くには不釣り合いのドレスだったかしら?」


今、ソフィアが着ているドレスはアダムがプレゼントしてくれたグレーの上品なバッスルドレスだった。


「このドレスなら、アダムさんのお屋敷を訪ねる場に相応しいと思っていたのに……? おかしかったかしら? それとも、もっと高級ドレスを着てくるべきだったのかしら……」


ソフィアは早くも、不安が込み上げてくるのだった——



****


 ソフィアを乗せた馬車は大通りを通り抜け、閑静な住宅街に入って来た。

周囲の住宅はどれも小さな一軒家ばかりだ。


「え……? 何だか変ね……?」


窓から外の様子を見つめていたソフィアは、首を傾げる。建ち並ぶ家々は、どう見てもお金持ちが住むような家には見えない。いや、むしろ逆に貧しくも見える。


「一体どういうことなの……? それとも一軒だけ大きなお屋敷を建てて、アダムさんは暮らしているのかしら?」


ソフィアは窓から視線をそらせ、ポケットから小さく折りたたまれたポスターに書かれた住所に目を落とした時。


—―ガタン


音を立てて馬車が止まり、扉が開かれた。


「お客様。言われた住所に到着しましたよ」


「え? は、はい。どうもありがとうございます」


礼を述べて馬車を降りたソフィアは周囲を見渡した。しかし、あるのは小さな1軒家ばかりでアダムの屋敷が見当たらない。


「あの……アダム・ジョンソンのお宅はどこにあるのですか? お屋敷が見当たらないのですけど。失礼ですが、本当にこちらで合っているのでしょうか?」


ソフィアの問いに、御者は頷く。


「はい、間違いありません。目の前にある家がそうですよ」


御者が家を指さし、ソフィアは目を見開いた。何故なら目の前の家は小さな平屋建ての家で、ソフィアの実家よりも小さかったからだ。


「え……ええっ!? こ、この家がですか!? 嘘ですよね!?」


思わず大きな声を上げるソフィア。


「嘘なものですか。私はこの道20年の御者ですよ? この町の全ての住所は頭に入っております。その証拠にほら、郵便受けにも名前が書いてあるじゃありませんか」


御者はすぐ傍に立てられた郵便受けを指さした。


そこには、はっきりとアダムのフルネームと、ポスターに記載された住所が記されていたのだった——








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