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君への気持ちが冷めたと夫から言われたので家出をしたら、知らぬ間に懸賞金が掛けられていました  作者: 結城芙由奈@コミカライズ連載中


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第47話 さよなら、皆さん

 夜がまだ明けきらぬ午前5時。


車輪付きの大きなキャリーケースのハンドルを握りしめたソフィアが、門の外で屋敷を眺めていた。


「皆さん……短い間でしたが、お世話になりました。皆さんのことは忘れません」


その目にはいつしか涙が滲んでいた。


「さよなら」


最後に屋敷に向かって会釈すると、キャリーカートを引きずりながら駅へ向かって歩き始めた——



****


—―午前6時


ソフィアは『スリーピス』行の始発列車に乗っていた。

乗客の数はまばらだったが、防犯意識の高いソフィアは特別料金を支払って個室の車両に座っている。


ガタゴトと揺れる車内から窓の外を見つめるソフィア。


「……今頃、屋敷の人達は目を覚ました頃かしら……」


ポツリと呟く。

車窓には悲し気な自分の顔が映り込んでいる。昨夜荷造りしている最中は、これから向かう新天地のことを思ってワクワクした気持ちだった。

しかし今朝になると、不安な気持ちと悲しい気持ちが込み上げてしまったのだ。


そして思い起こすのはアダムのこと。


「アダムさんは多分初めから私のこと、どうでも良かったのね……」


(恐らくアダムさんが本当に好きな相手は花屋の娘さんなのだわ。なのに何故、私にプロポーズして結婚したのかしら……?)


いくら理由を考えても、ソフィアは見当もつかなかった。


「でも今更考えたって、もうどうしようもないわね。恐らくアダムさんは私の顔なんか見たくもないのだろうし」


それでも、ソフィアはまだアダムのことが好きだった。優しく紳士的なアダムはソフィアにとって理想の男性だった。


だからこそ、アダムの為にも家を出るべきなのだとソフィアは自分自身に言い聞かせることにしたのだ。


「アダムさん……さよなら」


そしてソフィアは目を閉じ……一滴の涙が頬を伝っていった――



****


—―その頃。


午前7時になり、ベスがソフィアの部屋の扉をノックしながら声をかけた。


「奥様、7時です。お目覚めのお時間ですよ? 本日もお仕事がありますよね?」


しかし、いくら待っても扉は開かない。そこで再度、扉をノックしてみるも何の反応も無い。


(おかしいわね……? 奥様は毎日規則正しい生活をなさるお方。毎朝6時半には必ず起きていらっしゃるはずなのに……)


「奥様? どうかなさったのですか? 入らせていただきますね? 失礼いたします!」


ついに我慢できなくなったベスは部屋の扉を開け、様子がおかしいことに一目で気付いた。

ベッドの上はももぬけの殻で、綺麗にベッドメイキングされている。カーテンは開けられ、太陽の光で明るく照らされている。


「奥様……どちらにいらっしゃるのですか……?」


不安な気持ちを押し殺しながら室内に入り、ソフィアが愛用しているライティングデスクに白い封筒が乗っていることに気付いた。


「手紙……?」


恐る恐る近付き、封筒を手に取って「えっ!?」と声を上げてしまった。


『使用人の皆様へ』と封筒に記されていたからだ。


「ま、まさか……」


ベスは震える手で封筒を開けると、二つ折りされた便箋を取り出して広げた。


『短い間でしたが、今までお世話になりました。私はここを出ていきます。どうか探さないで下さい』


手紙には短く、そう書かれていた。


「た、大変だわ……」


手紙を持つベスの肩が震える。


「た、大変よーっ!! 奥様がいなくなったわ!!」


手紙を握りしめたベスは、叫びながらソフィアの部屋を飛び出した――








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