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第42話 ソフィアの作戦、アダムの思惑

—―18時


ソフィアが家に帰宅し、メイドのベスが出迎えに現れた。


「お帰りなさいませ、奥様。本日もお仕事ご苦労様でした」


「ただいまベスさん。アダムさんはもう、いらしてますか?」


「いいえ、旦那様は本日まだこちらにはいらしておりません。実は先程旦那様から連絡がありました。今夜は用事があるので、こちらにいらっしゃるのが遅くなるそうなのです。ですから夕食は先に召し上がって下さいと仰っておられました」


「そうですか……遅くなるのですね」


そこでソフィアは少し考え、ベスに手を合わせた。


「ベスさん! あ、あの……お願いがあるのですが……」


「お願いですか? どのようなことでしょうか?」


ベスは首を傾げる。


「ええ、実は……」


ソフィアは辺りを見渡し……チョイチョイとベスを手招きすると耳元でコソコソと話をした。


「……まぁ……!」


ベスは驚いて目を見張り……ソフィアを見つめて自分の胸をドンと叩いた。


「ええ! このベスにお任せ下さい、奥様! 旦那様をぎゃふんと……いえ、旦那様の度肝を抜いて差し上げましょう!」


「本当!? ありがとうございます!」


ソフィアは満面の笑みを浮かべた——



****


—―19時半過ぎ


アダムがソフィアの住む屋敷を訪ねてきた。


「ようこそ、お待ちしておりました。旦那様」


恭しくベスはアダムを迎え入れた。


「あぁ。今夜は用事があって少し来るのが遅くなってしまったが、ソフィアさんはもう夕食を食べ終えたのか?」


「いいえ、それがまだでございます」


「何だって? まだなのか? 今夜は先に食事を済ませておくように伝えて欲しいと頼んだはずだが?」


「はい、確かに伝えましたが旦那様がお帰りになるのを待つと仰っておられました」


「そうなのか? ではダイニングルームで待っているのか?」


ネクタイを緩めるアダム。


「いえ、本日奥様は御自身のお部屋にまだいらっしゃいます」


「……分かった、部屋にいるのだな。ならそちらへ向かおう」


「お待ちください、旦那様」


立ち去ろうとしたアダムにベスは声をかけた。


「何だ?」


「部屋で奥様にお会いになられても……驚かないで下さいね?」


「? 一体何の話だ。でも……こちらもそう願いたいね」


アダムは呟くと、大股で去って行った。


(は? ……一体、旦那様の今の台詞はどういう意味だったのかしら? まぁ、使用人の私が考えても仕方ないことよね……)


玄関ホールに1人残されたベスは首を傾げる。


「こちらは奥様の作戦が成功することを祈るしか無いわ。奥様、頑張ってくださいね! 私達使用人一同……応援しておりますから」


アダムが尋ねてきたことを知らせるために、ベスは踵を返し厨房へ向かった……。



****


—―その頃。


ソフィアは緊張しながら、部屋でアダムが来るのを今か今かと待ちわびていた。


「アダムさん……やっぱり遅いわね……緊張をほぐすためにワインでも飲もうかしら……」


部屋に置かれたワインに手を伸ばしかけ……ソフィアは自分自身の手をピシャリと叩いた。


「駄目じゃない! 私ったら何やっているの? 以前ワインで痛い目に遭ったでしょう? まだ凝りていないの? 今夜は絶対失敗してはいけないのだから……」


その時。


—―コンコン


『ソフィアさん、いらっしゃいますか? アダムです』


ノック音と共に、扉の外でアダムの声が聞こえてきた。


(アダムさんだわ!)


緊張しながら、ソフィアは大きな声で返事をした。


「どうぞお入り下さい!」


すると……。


カチャリと扉が開かれ、アダムが部屋に入ってきた——


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